ミス・ペレグリンと奇妙なこどもたち

ティム・バートン監督が人気の小説を映画化
特異な能力をもつ少年少女の冒険にラブ・ロマンス
奇妙でかわいい世界を描く、ダーク・ファンタジー

  • 2017/01/31
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ミス・ペレグリンと奇妙なこどもたち© 2016 Twentieth Century Fox

『チャーリーとチョコレート工場』『アリス・イン・ワンダーランド』のティム・バートン監督が、アメリカの作家ランサム・リグズのベストセラー『Miss Peregrine's Home for Peculiar Children(邦題:ハヤブサが守る家)』を映画化。出演はヒューゴの不思議な発明』『エンダーのゲーム』のエイサ・バターフィールド、『マレフィセント』のエラ・パーネル、『ダーク・シャドウ』のエヴァ・グリーン、『ヘイトフル・エイト』のサミュエル・L.ジャクソンほか。周囲になじめない孤独な少年ジェイクは、祖父の死をきっかけに小さな島へ向かい、奇妙な子どもたちと出会う。特異な能力をもつキャラクターたち、少年少女の冒険、謎のクリーチャーとのバトル、そしてピュアなラブ・ロマンス。幸福で哀愁があり、奇妙でかわいらしいバートン風味の世界を描く、ダーク・ファンタジーである。

フロリダで生まれ育ち、周囲になじめずにいる孤独な少年ジェイク。唯一の理解者である祖父が急逝したことを機に、祖父にゆかりのある小さな島を訪れたジェイクは、森の奥で古びた屋敷を発見。そこで暮らす厳格で美しい女性ミス・ペレグリンと、不思議な能力をもつ子どもたちと出会う。驚くことに、彼らは1940年の9月3日を毎日ずっと繰り返し続けているのだった。幸福で哀愁を含む彼らの永遠に終わらない1日に、外部からある目的を遂げようと脅威が迫り、ジェイクはこの世界に自分がやってきた役割に気づくが……。

エイサ・バターフィールド,エラ・パーネル

ファンタジーでSFの要素も少々、少年の冒険ものでありラブ・ロマンスであり、不思議な能力をもつ子どもたちの活躍が楽しめる本作。屋敷の調度品や彼らのファッションなど1940年代のゴシックでクラシックなデザイン、子どもたちの特異な能力を表現する映像が魅力的だ。現代版にして少年版、バートン風味の『不思議の国のアリス』といった感覚で、ファミリーにもデートにもおすすめだ。

孤独な少年ジェイク役はエイサ・バターフィールドが好演。ほんの数年前までかわいい少年だった彼も今では身長180cmの19歳で、バートンもその成長ぶりに驚いたという。時空に“ループ”を作る能力があり鳥(ハヤブサ)に変身するミス・ペレグリン役はエヴァ・グリーンが凛としたクールな美女として、邪悪な異能者たちのリーダー、バロン役はサミュエル・L.ジャクソンが執拗な追手として。屋敷の住人である永遠の子どもたちは、空中浮遊能力のあるエマ役はエラ・パーネルが風船のようにふわふわと浮いてかわいらしくありつつもある特殊能力では格好良く、後頭部に鋭い歯の大きな口をもつクレア役はラフィエラ・チャップマンが、植物を急激に生長させる能力をもつフィオナ役はジョージア・ペンバードンが、最年少のかわいらしい女の子ながら怪力のブロンウィン役はピクシー・デイヴィスが、指先から火を放つ能力をもち、常に防火用手袋を着けているオリーヴ役はローレン・マクロスティが、透明人間であるミラード役の声はキャメロン・キングが、体内に無数の蜂を飼うヒュー役はマイロ・パーカーが、人形などの無生物に一時的に命を吹き込むことのできるイーノック役はフィンレー・マクミランが、予知夢をスクリーンに投影できるホレース役はヘイデン・キーラー=ストーンが、仮面をつけたままで無口な双子役は実際に一卵性双生児であるジョセフ&トーマス・オッドウェルがそれぞれに演じている。さらにジェイクの祖父役としてテレンス・スタンプ、ミス・ペレグリンと同じく時空にループを作ることのできるミス・アヴォセット役としてジュディ・デンチ、鳥類学者役としてルパート・エヴェレットなどベテラン勢の出演も。

エヴァ・グリーン,エイサ・バターフィールド,ほか

撮影はフロリダとベルギー、イギリスのリゾート地ブラックプールで行われた。ジェイクが冒険を始めるウェールズの村の撮影は、イギリスのコーンウォール沿岸にあるポートランドの村落にて。ミス・ペレグリンの屋敷の外観や食堂、台所や客間のシーンは、ベルギーのアントワープ近郊にあるトレンホフという城で、後半のアクション満載のシーンは、ブラックプールの桟橋とブラックプール・タワーのヴィクトリア風のサーカスのなかで撮影した。
 クラシックなおとぎ話ふうの味わいのある前半から、ポップなアクションで盛り上がる後半へと、サービス精神に富んだ飽きさせない展開も面白い。音楽のテイストもニューエイジふうの神秘的なサウンドから大きく変わり、クライマックスのアクションでは疾走感あるエレクトロ・ポップふうの曲「Handy Candy」がハマっていて楽しい。また敵の追手と総力戦になるシーンでは、一般的にはコキコキした動きで表現されるあの存在が、躍動感あふれるマッチョな動きをするのも可笑しい。

原作はランサム・リグズが2011年に出版し、本国アメリカで300万部を突破、世界35カ国で翻訳されている『Miss Peregrine's Home for Peculiar Children(邦題:ハヤブサが守る家)』。自身もフィルムメーカーであり、バートンのファンという原作者のリグズは語る。「ティム・バートンが手術を担当する外科医だったら、自分の本を手放すのも難しくはない。原作と映画は同じではないから、その点を受け入れることには多少時間がかかりました。でも映画のロケ地を訪れてティムに会い、セットを見てキャストに会ったら、シーンがまざまざと浮かんできて理解できるようになった。それに実際、ジェーン・ゴールドマンの執筆した脚本でティムが演出したシーンの撮影風景を見ながら、こう思ったんだ。『ああいうことを自分で思いつけたら良かったのに!』とね」
 原作についてバートンは語る。「実際にある古い写真から、物語を作ったのが気に入ったよ。ランサムが奇怪な写真から紡ぎだした物語は説得力があり、とても力強く夢のように謎めいている」

エイサ・バターフィールド,エラ・パーネル

バートンにとってこの物語は「共感できる題材」という本作。「僕は昔、“変わっている”というレッテルを貼られた。なぜなら子どもなのに、モンスター映画が大好きだったせいだ。子どもの頃に感じた、“自分は人とは違う”という気持ちは決してなくならないものだ。それは一生ついて回る」。そして2017年1月31日に東京で行われた来日記者会見にて、バートンは本作についてこのように語った。「周りからよく“変わってるね”と言われる人たちは、芸術性に富んでいたり寡黙な人であったり、内面はほかの人たちと同じようにいい人であることが多いんです。だからちょっと奇妙でおかしなところがあっても、ほかの人とは違うと思われたとしても、そのままでいい。この映画ではこの思いを大切にしています」
 2016年9月8日(現地時間)、バートンが米国ロサンゼルスのハリウッド・ウォーク・オブ・フェームに手型と足型を収めたことも記憶に新しく。また1941年のディズニーアニメーション『ダンボ』を、バートンが実写映画化するという公式発表も。今後のバートン作品も、世界中のファンとともに楽しみにしている。

作品データ

ミス・ペレグリンと奇妙なこどもたち
公開 公開
制作年/制作国 2016年 アメリカ
上映時間 2:07
配給 20世紀フォックス映画
原題 MISS PEREGRINE'S HOME FOR PECULIAR CHILDREN
監督 ティム・バートン
脚本 ジェーン・ゴールドマン
原作 ランサム・リグズ
出演 エヴァ・グリーン
エイサ・バターフィールド
サミュエル・L.ジャクソン
エラ・パーネル
ジュディ・デンチ
テレンス・スタンプ
:あつた美希
ライター:あつた美希/Miki Atsuta フリーライター、アロマコーディネーター、クレイセラピスト インストラクター/インタビュー記事、映画コメント、カルチャー全般のレビューなどを執筆。1996年から女性誌を中心に活動し、これまでに取材した人数は600人以上。近年は2015〜2018年に『25ans』にてカルチャーページを、2015〜2019年にフレグランスジャーナル社『アロマトピア』にて“シネマ・アロマ”を、2016〜2018年にプレジデント社『プレジデントウーマン』にてカルチャーページ「大人のスキマ時間」を連載。2018年よりハースト婦人画報社の季刊誌『リシェス』の“LIFESTYLE - NEWS”にてカルチャーを連載中。
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