インドで5歳の時に迷子になり、オーストラリアで養子として
育った青年が、生まれ故郷を25年後に見つけた実話を映画化
稀有な道のりを経て得た、家族の幸せが胸を打つ感動作
インドで5歳の時に迷子になり、オーストラリアで養子として育った男性が、生まれ故郷をGoogle Earthで見つけ出した、という2012年の実話をもとに映画化。出演は映画『スラムドッグ$ミリオネア』のデヴ・パテル、『ベストセラー 編集者パーキンズに捧ぐ』などのオスカー女優ニコール・キッドマン、『キャロル』のルーニー・マーラ、そして映画初出演で何千人もの子どもたちの中から選ばれた当時5歳のサニー・パワールほか。監督は、ジェーン・カンピオン製作総指揮のTVシリーズ『トップ・オブ・ザ・レイク 〜消えた少女〜』の数エピソードを担当し、本作が初の長編映画となるガース・デイヴィス、脚本は作家であり詩人でもあるルーク・デイヴィスが手がける。肉親と生き別れたひとりの少年が健気に生き抜くさま、家族や恋人たちが互いを大切に思い合う気持ちを、過剰な演出や説明はせず、人と自然をゆったりと捉える映像で見せてゆく。稀有な道のりを経て見出された、家族の幸せが胸を打つ人間ドラマである。
1986年、インドの小さな町。5歳のサルーは、シングルマザーの母と4人の子どもたちで貧しくとも仲良く暮らしている。ある日、学校にも行かずに働く兄グドゥの役に立ちたいと思ったサルーは、兄の夜間の仕事について行ったものの眠くなり、駅に停車していた電車に潜り込み眠ってしまう。その電車は夜のうちに回送電車として動き出し、サルーが目覚めた時には見たこともない場所をひたすら走っていた。泣いても叫んでも誰にも届かず、電車は数日間走り続け、大都市カルカッタ(現在の名はコルカタ)のハウラー駅に到着。言葉も通じない未知の場所に降り立ったサルーは街をさ迷い、浮浪児となってゆく。その後、施設に保護されたサルーは養子縁組が決まり、オーストラリアのタスマニアで暮らす養父母ジョンとスーに引き取られる。そして2008年、25歳になったサルーはメルボルンにある学校でホテル経営を学んでいた。ホームパーティで自分が迷子だったことを友人たちに打ち明けると、もしかするとGoogle Earthで故郷を見つけられるかもしれない、と教えられ……。
5歳の子どもの実体験にもとづく困難を生き抜いた逸話、生き別れた家族と養父母の間で惑う青年を支える人たちの思いが胸を打つ人間ドラマだ。原作はサルー・ブライアリーが執筆した回顧録『A Long Way Home (邦題:25年目の「ただいま」)』で、サルー本人は映画化をとても喜んでいるとのこと。本作に参加しているプロデューサーのアンジー・フィールダーは、この物語の魅力についてこのように語っている。「サルーの物語は特別すぎて、フィクションでは決して思いつかない内容です。冒険と危険、大陸をまたぎ、時を越えて旅をする……とても深く感動的で、良い映画の要素が詰まっているの。さらに映画としてすばらしいのは、この物語が満足感をもたらす点。生物的な家族と長年離れ、彼らを長い間探し続け、干し草の山のなかの針を見つけるがごとく、実際に生家にたどり着くのです」
5歳のサルー役はサニー・パワールが自然体で表現。大変な状況を勘と知恵と機転でたくましく乗り切る姿を好演している。25歳のサルー役はデヴ・パテルが養父母と肉親の両方を思う繊細な青年として、サルーの養父母であるスー役のニコール・キッドマンとジョン役のデヴィッド・ウェンハムは愛情深く、サルーの恋人ルーシー役はルーニー・マーラが心優しい女性として、それぞれに演じている。またサルーの産みの母親カムラ役にプリヤンカー・ボーズをはじめ、インドの映画スター、ナワーズッディーン・シッディーキーや、タニシュタ・チャテルジー、ディープティ・ナバル、今回が俳優デビューとなるサルーの兄グドゥ役のアビシェーク・バラーティほかインド人俳優たちが多数出演している。
デイヴィス監督は本作の撮影にあたり、インドのカンドワ、ブルハンプール、コルカタといった5歳のサルーが歩んだ道のりをなるべく実際にたどったという。また監督はサルーの産みの親カムラと育ての親スーが初めて会った瞬間にも立ち会った。デイヴィス監督は当時のサルーと映画製作への思いを語る。「(映画製作では)サルーの現実に極力触れることが大事でした。僕にも子どもがいるので、5歳児が1人で言葉もわからないまま都市にいる姿を想像したら……その時、この映画がとても力強いものになると確信したんだ」
劇中にもある通り、サルーはGoogle Earthを駆使して5年かけて生まれ故郷を探した。この実話を聞いたGoogle社は、サルーにある国際会議での講演を依頼し、本作の製作も支援。劇中でサルーがGoogle Earthを使うシーンがリアルになるようサポートしたそうだ。
養子縁組が、どのような人たちにどのような幸せをもたらすのかを伝える物語としても、響くものがある本作。インドでは、毎年8万人を超える子どもたちが姿を消しているという。製作のエミール・シャーマンは、この映画の養子縁組に関わるメッセージについて語る。「この映画は養子に出された子どもの人生について深い洞察を与えていると思います。この映画が西洋諸国に養子の有益さと必要性を気づかせるきっかけになってほしいと思うわ。愛情に満ちた家庭に巡り会えないで人生を終える子どもたちはたくさんいるの。そして子どもを欲しがっている愛情に満ちた家庭もまた、たくさん存在しているのです」
現在サルー本人は、養父母スーとジョンとともにタスマニア州のホバートに住み、家業を手伝っているとのこと。また彼はインド東部のコルカタで孤児院を営み、オーストラリアへの養子縁組をアレンジしているミセス・スードを熱心にサポート。しばしばインドで暮らす実母や親族を訪ねているとも。さらにサルーはこの経験を伝える講演者として、オーストラリアのみならず海外でも活躍しているそうだ。
ラストにはサルー本人たちが映るシーンもあり、あたたかな感動が広がる本作。肉親と生き別れるという辛い経験を経た子どもが成長し、こんなふうに幸せなつながりを広げていくこともできる、という稀有なエピソードを体感してみてはいかがだろう。
公開 | 2017年4月7日よりTOHOシネマズみゆき座ほかにて全国ロードショー |
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制作年/制作国 | 2016年 オーストラリア |
上映時間 | 1:59 |
配給 | ギャガ |
原題 | LION |
監督 | ガース・デイヴィス |
製作 | イアン・カニング エミール・シャーマン アンジー・フィールダー |
脚本 | ルーク・デイヴィス |
撮影監督 | グリーグ・フレイザー |
出演 | デヴ・パテル ルーニー・マーラ ニコール・キッドマン デヴィッド・ウェンハム サニー・パワール アビシェーク・バラト プリヤンカ・ボセ タニシュタ・チャテルジー ナワーズッディーン・シッディーキー ディープティ・ナバル ディヴィアン・ラドワ サチン・ヨアブ パッラヴィ・ シャルダー アルカ・ダス |
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