美女と野獣

エマ・ワトソン主演でディズニー・アニメを実写映画化
一部のキャラクターに現代的な要素をプラスし
かのミュージカル・ナンバー+新曲とともに描く

  • 2017/04/10
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美女と野獣© 2017 Disney Enterprises, Inc. All Rights Reserved.

アニメーション版の公開から25周年目の2017年、『美女と野獣』をディズニーが実写映画化。出演は『ハリー・ポッター』シリーズのエマ・ワトソン、TVドラマ『ダウントン・アビー』のダン・スティーヴンス、『ホビット 竜に奪われた王国』のルーク・エヴァンス、『スター・ウォーズ エピソード3/シスの復讐』のユアン・マクレガー、『ウォルト・ディズニーの約束』のエマ・トンプソン、『ロード・オブ・ザ・リング』三部作のイアン・マッケランほか。監督と脚本は、ミュージカルを映画化した『シカゴ』『ドリームガールズ』のビル・コンドンが手がける。本が大好きで人々から風変わりと言われるベルは、野獣と出会い……。ディズニー・アニメをもとに、キャラクターやサウンド、映像に現代的な要素をプラスしてアレンジ。かのミュージカル・ナンバーとストーリーを、充実のスタッフ&キャストで実写版として新たに打ち出したファンタジー作品である。

その昔、人の外見しか見ようとせず、享楽的で慈悲の心をもたずにいた美しい王子は、魔女によって野獣の姿に変えられてしまう。それからは魔法のバラの花を見つめ、森の奥の城で心を閉ざして暮らしている。呪いを解く鍵は、そのバラの花びらがすべて散る前に誰かを心から愛し、相手からも愛されること。だが、野獣の彼を愛する者などいるはずがなく、絶望に苛まれ希望を失いかけていた。そんななか、聡明で進歩的な考えをもち周囲から“変わり者”と呼ばれる村の娘ベルと出会い……。

エマ・ワトソン

映画やアニメや舞台、小説や絵本などで長い間親しまれている有名なストーリーであり、特にディズニー・アニメの傑作として愛され続ける物語をディズニーが実写映画化した本作。アニメ版をもとに幼い子どもから大人まで幅広い層の人たちがシンプルに楽しめる内容となっている。ここ数年の実写版というと、2014年のフランス・ドイツ製作でクリストフ・ガンズ監督によるレア・セドゥとヴァンサン・カッセルの共演にて、1740年にフランスのガブリエル=シュザンヌ・ド・ヴィルヌーヴが執筆した原作の物語に着想を得て実写映画化した作品があって。こちらは大人向けのダーク・ファンタジーにして大団円のロマンスであり、筆者はこちらも個人的に好みであるものの、今回のディズニーによるシンプルな実写版が世界の大勢の人たちに好まれ興行収入を伸ばすだろうこともよくわかる。

昔ながらのディズニー作品の中では珍しく現代的なキャラクターであるヒロインのベル役は、ミュージカル初参加のエマが強い思い入れをもって好演。イエローのドレスを纏ったベルが野獣とボール・ルームで踊る名シーンも、ロマンティックな仕上がりだ。現地時間の2017年3月2日にハリウッドで行われたUSプレミアにて、エマはベルの魅力をこのように語った。「ベルに一番刺激を受けたのは、ほかのヒロインと比べて安定を求めていないところ。彼女は広い世界を見て、旅をしてみたいの。そんな彼女に何か新しさを感じたし、ほかの人と少し違うところも大好きよ。それに人の表面だけを見るのではなく、どんな状況でも自分の視点をもてる人。思いやりと慈悲があり、疑問を抱くこともできるからこそ、観客のみんなもベルを大好きなんだと思うわ」
 またコンドン監督は2017年3月末に行われた来日記者会見にて、ベルのキャラクターと彼女を演じたエマについてこのように語った。「1991年のアニメーションでは、男性よりも本に興味があるという、それまでとは違った女性像を描いた革新的なヒロインと称されたベルを、エマが21世紀の強い女性として見事に演じてくれている。ベルというキャラクター自体も前進していかなくてはならないので、本が好きで教養があることに加え、それをほかの人とシェアするという新たな一面も追加したよ。ベルには活動的な一面があるんだ。エマ自身にも活動家の一面があるから、そういう部分でも見事に演じてくれているよ」

エマ・ワトソン,ほか

そして全身コスチュームを纏った野獣役は、ダンが絶望の暗い影と愛への希望が交錯する心情を丁寧に、手段を選ばずベルにつきまとうガストン役はルークがマッチョに、ガストンの子分ル・フウ役は『アナと雪の女王』でオラフを演じたジョシュ・ギャッドが含みをもたせて、魔法で燭台に姿を変えられたもと給仕頭のルミエール役はユアンが軽妙に、置き時計に姿を変えられたもと執事のコグスワース役はマッケランが実直に、ティーポットに姿を変えられた料理人ポット夫人役はエマ・トンプソンが陽気に、その息子でティーカップに姿を変えられたチップ役は11歳の子役ネイサン・マックが愛らしく、もとメイドでルミエールの恋人、羽ぼうきに姿を変えられたプリュメット役はググ・バサ=ローがセクシーに、もとオペラ歌手で洋服ダンスに変えられたマダム・ド・ガルドローブ役はブロードウェイで活躍するオードラ・マクドナルドが、本作のオリジナル・キャラクターでピアノに変えられた音楽家カデンツァ役はスタンリー・トゥッチが、ベルの父親モーリス役はケヴィン・クラインが、それぞれに演じている。

『美女と野獣』はキャラクターたちが歌うミュージカル・ナンバーも見どころのひとつ。エマ・ワトソンが歌う「Belle(朝の風景)」、ユアンが歌う「Be Our Guest(ひとりぼっちの晩餐会)」、そしてアニメ版ではセリーヌ・ディオンとピーボ・ブライソンが歌い大ヒットしたエンドソング「Beauty and the Beast(美女と野獣)」は、今回はアリアナ・グランデとジョン・レジェンドが歌い、セリーヌは本作で新曲「How Does a Moment Last Forever(時は永遠に)」にて参加。セリーヌは2回に渡りシンガーとして『美女と野獣』に参加したことについて、前述のUSプレミアにてこのように語った。「オリジナル・バージョンは私にとって本当にエモーショナルな作品でした。26年前だなんて、こんなに早く時が過ぎるなんて信じられないわ。もう一度『美女と野獣』に参加することは決して簡単な決断ではなかったけれど、参加できて本当に良かったです」
 本作ではアラン・メンケン作曲、ハワード・アシュマン作詞によるアニメ版の曲はもちろん、メンケンが新たに作詞家のティム・ライスとともに作り上げた新曲「How Does A Moment Last Forever」「Days In The Sun(デイズ・イン・ザ・サン〜日差しをあびて〜)」「Evermore(ひそかな夢)」の3曲を楽しめることも特徴だ。『美女と野獣』『アラジン』などディズニー作品でアカデミー賞を8回受賞した作曲家アラン・メンケンは、2017年3月末に行われた来日記者会見にて、テーマ曲「Beauty and the Beast」のアレンジについてこのように語った。「アニメーション、舞台版を経て、『美女と野獣』の楽曲を僕たちが手がけるのは3回目。またチームでこの作品に関われることをとても光栄に思うよ。今回の実写版ではワルツのテンポも取り入れながら、広間でベルと野獣がダンスを踊るボール・ルームのシーンにつなげられるように工夫して作り上げたんだ」
 また“プレミアム吹き替え版”と銘打った日本語の吹き替え版には昆夏美、山崎育三郎をはじめ実力派メンバーが参加している。

ルーク・エヴァンス,ほか

ディズニー初のLGBTキャラクター(ジョシュ・ギャッド演じるガストンを慕う子分ル・フウ)が登場することでも話題の本作。コンドン監督が「ゲイ的瞬間(gay moment)がある」と明言したことが、おそらく本人がまったく思っていなかったほど世界的に大きな波紋となったことは周知の通りだ。シンガポールやマレーシア、アメリカ南部のアラバマ州やクウェート、ロシアなどで強い反発が起こり、公開の延期や中止、厳しいレーティングとなった国や地域もあるという。とはいえあるのは、含みをもたせている部分や、メインキャラクターじゃない某1シーンで。21世紀の今、ファミリーでごく普通に楽しめるファンタジー作品のひとつだと個人的に思う。
 最後に、エマが語るディズニー作品への思い入れをご紹介する。「子供はもちろん、大人になってからもみんなディズニー映画が大好きなのは、『何も心配いらない。きっと大丈夫』というハッピーで楽観的な気持ちになり、子どもの頃に感じたある種の安心感に浸れるからだと思うの。そんな風に幸せと安らぎをもたらしてくれるディズニー映画にベル役として参加できて、本当に光栄に思うわ」

作品データ

公開 2017年4月21日よりTOHOシネマズ日劇ほかにて全国ロードショー
制作年/制作国 2017年 アメリカ
上映時間 2:10
配給 ウォルト・ディズニー・ジャパン
原題 Beauty and the Beast
監督 ビル・コンドン
脚本 ステファン・チボスキー
エヴァン・スピリオトプロス
歌曲・作曲・スコア アラン・メンケン
作詞 ハワード・アシュマン
ティム・ライス
出演 エマ・ワトソン
ダン・スティーヴンス
ルーク・エヴァンス
ケヴィン・クライン
ジョシュ・ギャッド
ユアン・マクレガー
スタンリー・トゥッチ
イアン・マッケラン
エマ・トンプソン
オードラ・マクドナルド
ググ・バサ=ロー
ネイサン・マック
吹き替え版の声の出演 昆夏美
山崎育三郎
岩崎宏美
村井國夫
吉原光夫
藤井隆
成河
小倉久寛
濱田めぐみ
島田歌穂
池田優斗
:あつた美希
ライター:あつた美希/Miki Atsuta フリーライター、アロマコーディネーター、クレイセラピスト インストラクター/インタビュー記事、映画コメント、カルチャー全般のレビューなどを執筆。1996年から女性誌を中心に活動し、これまでに取材した人数は600人以上。近年は2015〜2018年に『25ans』にてカルチャーページを、2015〜2019年にフレグランスジャーナル社『アロマトピア』にて“シネマ・アロマ”を、2016〜2018年にプレジデント社『プレジデントウーマン』にてカルチャーページ「大人のスキマ時間」を連載。2018年よりハースト婦人画報社の季刊誌『リシェス』の“LIFESTYLE - NEWS”にてカルチャーを連載中。
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