帝一の國

帝一少年の命がけの野心、行方やいかに!?
超名門高校を舞台に熾烈な生徒会選挙闘争を描く
若手イケメン競演のコメディ・エンターテインメント

  • 2017/04/24
  • イベント
  • シネマ
帝一の國© 2017フジテレビジョン 集英社 東宝
© 古屋兎丸/集英社

『ジャンプSQ.』『ジャンプスクエア』で2010年から 6年間連載された古屋兎丸氏のコミック『帝一の國』を実写映画化。出演は映画『キセキ -あの日のソビト-』の菅田将暉、『サクラダリセット 前篇/後篇』の野村周平、『青空エール』の竹内涼真、『トリガール!』の間宮祥太朗、『サバイバルファミリー』の志尊淳、2017年秋の連続テレビ小説『わろてんか』の千葉雄大ほか。監督は映画『世界から猫が消えたなら』の永井聡、脚本はドラマ『ROOKIES』のいずみ吉紘が手がける。日本一の名門・海帝高校に首席で入学した赤場帝一の夢は、「総理大臣になって、自分の国を作る」こと。その第一歩として、まずは2年後に海帝高校の生徒会長になると決意し、政界さながらの派閥と競争の世界へ打って出る。命がけで野心に燃える帝一と周囲の人々、濃いキャラクターたちの真剣すぎるふるまいがシュールなコメディとなって引きつける。若手イケメン俳優の競演による青春ものであり、何も考えずに笑って元気になるエンターテインメントである。

日本一の超名門・海帝高校に首席で入学した赤場帝一の夢は、「総理大臣になって、自分の国を作る」こと。政財界に強力なコネを持ち、海帝で生徒会長をつとめると将来の内閣入りは確約ともいわれることから、帝一はどんな汚いことをしてでも海帝のトップに立つと決意。ライバルは800人のエリート学生、なかでも精鋭たちの派閥を読み、帝一は親友で参謀でもある榊原光明とともに2年後の生徒会選挙に向けて早々に動き出す。

菅田将暉

人気コミックのストーリーを若手イケメン俳優たちの競演で魅せる本作。といってもビジュアルと雰囲気だけで引きつけるのではなく、繰り返されるシュールでクドい表現、暑苦しいほどアクの強いキャラクターと数人の爽やかで真っ当な人物とのコントラスト、リズム感と緩急を効かせた演出で予想以上に面白い仕上がりとなっている。ストーリー上でいくつかの選択肢がでてくると、2択なら第3の、3択なら第4、第5の道をゆくという成り行きになり、ひねりの効いた展開や意表を突く突破口の描き方が小気味よく痛快だ。風合いとしては、菅田将暉と遠藤憲一の共演でヒットしたドラマ『民王』のノリを思い出す感覚も。

海帝高校に首席入学、野心に燃える赤場帝一役は菅田将暉が、努力家で頭の切れる戦略的な少年として。彼はもともと原作者・古屋兎丸氏の漫画の大ファンで、小さい頃から10年くらいピアノを習っていたことや和太鼓を演奏した経験があり、大きな花柄のスリーピースのフレアという奇抜なスタイルを好んで着こなすなど、帝一とかぶる部分が多いと話し、「個人的に漫画の顔立ちや、あと自分もよく七三分けにするので、『これは僕じゃないかな』と思っていました」とも。通商産業省の官僚である父・赤場譲介を演じる吉田鋼太郎とのかけあいもコミカルで、学校の授業の科目名を父子で叫んでいるだけのシーンがなぜか可笑しくて、間合いや言い方のニュアンスとか、シリアスのみならずコメディにも長けているってすばらしい、と堪能させてくれる。そういえば菅田は『海月姫』『民王』そして本作と、政治家の息子役を何度も演じている。どこか器や度量の大きさを感じさせる存在感で、向いているのかもしれない。
海帝高校1年の、官僚の父を持つ東郷菊馬役は野村周平がわかりやすく卑怯で姑息な敵役として、文武両道で人望も厚く非の打ちどころのない大鷹弾役は竹内涼真がさわやかに、帝一の親友であり優秀な参謀である榊原光明役は志尊淳がキュートに、堂山生徒会長の信頼の篤い2年生の氷室ローランド役は間宮祥太朗がクールに、将棋の天才で頭脳派である2年生の森園億人役は千葉雄大が冷静沈着に、そして3年の生徒会長・堂山圭吾役は2014〜2016年に上演された舞台版で帝一を演じた木村了がそれぞれに演じている。また氷室の相棒・駒光彦役に鈴木勝大、菊馬につき従う根津二四三役に萩原利久、弾をサポートする佐々木洋介役に岡山天音、生徒会副会長・古賀平八郎役に井之脇海の出演も。そして帝一の幼なじみで彼女である白鳥美美子役は永野芽郁が演じ、必要と判断すれば間髪を容れず腕力(脚力?)でケリをつける姿も勇ましく、エンディングで曲にあわせてステップをふむ姿もかわいらしい。どちらかというと親友の光明が内助の功を発揮するラブリーなヒロインで、彼女の美美子が相棒であり帝一が窮地に陥ると参上するヒーローのような構図になっているのもユーモラスだ。

志尊淳,菅田将暉,竹内涼真,千葉雄大

帝一たちが1年生の時の生徒会選挙、海帝高校の文化祭「海帝祭」で行われる和太鼓の演奏、“マイムマイム事変”、そして帝一たちが3年生になった時の生徒会選挙、と原作から選り抜きの見どころが描かれてゆく本作。イケメン俳優たちがふんどし一丁で和太鼓を演奏するシーンでは力強い振付のなか、カメラがさまざまなアングルで彼らの全身をしっかり映し、その後のシリアスなシーンでも一部の主要メンバーがふんどし姿のままハッピを着ただけで歩き回るというナンセンスなところも笑える。劇中で帝一が「海帝でトップになるためならどんな汚いことでも何でもする」と繰り返す台詞さながら、「映画のヒットのためなら何でもするぜ!」といったスタッフとキャストの気合と野心が清々しくマッチしていて面白い。
 ところで今の若い世代にフォークダンスって親しみがあるのだろうか。「マイムマイム」の曲がかかると慣れ親しんだあの振付で体が動く……というのは昭和生まれの筆者はとてもよくわかるものの、ふと。フォークダンスを知らない人たちから見たら、マイムマイムもかなり不思議な、特に中央に人が立つと洋風の「かごめかごめ」みたいな、奇妙な儀式的なものに見えるかしらとも。

コテコテに濃い鮮やかなヴィジュアル、帝一のクラシックな個性派ファッションをはじめ、さまざまな美術セットや空間が作り込まれている本作。原作者の古屋兎丸氏も永井監督もそれぞれに美大出身ということもあるのか、悪趣味スレスレのきわどい格好よさや視覚の快感に訴えることに相通じるものがあるのかもしれない。2016年12月18日に幕張メッセで行われた「ジャンプフェスタ2017」のトークイベントにて、永井監督の現場について菅田はこのように語った。「時間のかかるギミックの撮影がたくさんあるんですが、すごく楽しいです。永井監督はこだわりが強いので、画の隅から隅まで見ています。時間はすごくかかるけれど、誰一人、辛いという感じではないですね。おかげで画がとってもかっこいいです!」
 また同イベントで原作コミック連載時の担当編集者・小菅隼太郎氏は、映像化の申し入れがいくつもあるなかで永井監督のプレゼンの熱意と情熱に古屋氏と一緒に感動したと語り、古屋氏は物語の見どころと映画化への思いについてこのように語った。「(この物語の魅力は)やはり高校生が政界さながらの熱い選挙を戦う点です。僕も描くときに熱を込めて描こうと頑張った作品です。その熱が伝わればと思います。3部作まで演劇になり、その後、映画化のお話をもらいました。率直に嬉しいなと思いました。また違う形の『帝一の國』が見られるのかなと楽しみですね」

菅田将暉,ほか

舞台としては喜安浩平氏の脚本、小林顕作氏の演出、木村了、入江甚儀、三津谷亮ほかの出演により2014年に「學蘭歌劇 『帝一の國』」、2015年に「學蘭歌劇『帝一の國』−決戦のマイムマイム−」、2016年に「學蘭歌劇『帝一の國』−血戦のラストダンス−」と3部作で上演され話題に。また2017年夏にはメンバーは現在未発表ながら、「學蘭歌劇『帝一の國』−大海帝祭−」(和太鼓LIVE??)を開催予定という発表も。
 映画のメンバーでは、2017年4月24日深夜〜28日深夜にスピンオフドラマ『帝一の國〜学生街の喫茶店〜』の放送が決定(地域により放送日が変更。詳細は映画公式HPにて)。海帝高校のそばにある純喫茶「カイテイ」を舞台に、常連客である東郷菊馬、大鷹弾、氷室ローランド、榊原光明、森園億人の5名を主人公にしたオムニバス形式のドラマで、4月28日の第5話(最終回)には赤場帝一が登場するとも。映画にはない原作のエピソードを盛り込み、さらなる帝一ワールドを満喫できるという。映画は全14巻の原作のストーリーを2時間弱にまとめているものの、登場人物たちの重要な心情の動きや見どころはきっちりと描き、もともとナンセンスやシュールな表現が満載であることからスクリーンによく映えて、エンターテインメントとして魅力的な仕上がりとなっていて。江戸川乱歩や寺山修二の濃厚な香りをどこか思わせる昭和レトロなニュアンスに、人気若手俳優たちのエネルギーをかけあわせ、パワフルに突き抜けたコメディに昇華し、子どもから大人まで幅広い層がシンプルに楽しめる映画となっている本作。若い世代向けのエンタメ作品かと思いきや、思いのほか大人も楽しめる内容なので、「Don’t think. Feel」の感覚でまずは観てみてはいかがだろう。

作品データ

帝一の國
公開 2017年4月29日よりTOHOシネマズ六本木ヒルズほかにて全国ロードショー
制作年/制作国 2017年 日本
上映時間 1:58
配給 東宝
原作 古屋兎丸
監督 永井聡
脚本 いずみ吉紘
出演 菅田将暉
野村周平
竹内涼真
間宮祥太朗
志尊淳
千葉雄大
永野芽郁
鈴木勝大
萩原利久
岡山天音
三河悠冴
井之脇海
木村了
榎木孝明
山路和弘
真飛聖
中村育二
吉田鋼太郎
:あつた美希
ライター:あつた美希/Miki Atsuta フリーライター、アロマコーディネーター、クレイセラピスト インストラクター/インタビュー記事、映画コメント、カルチャー全般のレビューなどを執筆。1996年から女性誌を中心に活動し、これまでに取材した人数は600人以上。近年は2015〜2018年に『25ans』にてカルチャーページを、2015〜2019年にフレグランスジャーナル社『アロマトピア』にて“シネマ・アロマ”を、2016〜2018年にプレジデント社『プレジデントウーマン』にてカルチャーページ「大人のスキマ時間」を連載。2018年よりハースト婦人画報社の季刊誌『リシェス』の“LIFESTYLE - NEWS”にてカルチャーを連載中。
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