ジュラシック・ワールド/炎の王国

火山噴火の脅威から、恐竜たちを救うか否か
科学と道徳、生物と人間の干渉といったテーマも含め
迫力の恐竜世界を体感する、夏休み向けのエンタメ大作

  • 2018/06/26
  • イベント
  • シネマ
ジュラシック・ワールド/炎の王国© Universal Pictures

1993年の『ジュラシック・パーク』から映画シリーズ誕生25周年を迎え、5作目(新シリーズ3部作の2作目)が完成。出演は2015年の前作から引き続き『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』のクリス・プラット、映画監督ロン・ハワードの娘であり俳優・製作者としても活躍する『ゴールド/金塊の行方』のブライス・ダラス・ハワードほか。監督は2016年の映画『怪物はささやく』でゴヤ賞9部門を受賞したスペイン出身のJ・A・バヨナ監督、製作総指揮・脚本は前作の監督を務めたコリン・トレボロウ、そして製作総指揮はスティーヴン・スピルバーグが手がける。崩壊し閉鎖されたもとジュラシック・ワールドがある、恐竜が生息しているイスラ・ヌブラル島にて、火山の噴火の予兆を確認。人々は恐竜たちの生死を自然に委ねるか、非常に困難ながらも救い出すかの選択を迫られる。アニマロトニクス(ロボットを用いて撮影する技術)やVFXを駆使した迫力の恐竜世界を体感する、夏休み向けのエンターテインメント大作である。

ジュラシック・ワールド/炎の王国

テーマパークで豪華リゾート地だった「ジュラシック・ワールド」が、解き放たれた恐竜たちによって破壊された事件から3年。イスラ・ヌブラル島に残った恐竜たちは、ジャングルを自力で生き伸びている。島の火山に大規模な噴火活動が始まるなか、人々の間では恐竜たちの生死を自然に委ねるか救い出すかの論争が起きる。そんな折、元海軍の軍人で「ジュラシック・ワールド」にてヴェロキラプトルの行動を研究し訓練を担当していたもと恐竜監視員のオーウェンは、テーマパークのもと運営責任者で今は恐竜保護グループ(DPG)を主宰するクレアと共に、恐竜を救い出すことを決意。クレアたちのチームは溶岩が流れ出る島に到着し、現地のスタッフと行動を開始しさまざまなトラブルに遭うなか、ある陰謀に気づく。

前作の世界的なヒットから3年、オーウェン、クレア、そしてヴェロキラプトルのブルーといった人気キャラクターに新たなメンバーが加わり、劇中でも3年後の世界を描く。J・A・バヨナ監督を抜擢したことについて、スピルバーグはバヨナ監督を称えてこのように語っている。「『ジュラシック』シリーズに共通しているのは、映画を作ることをものすごく愛している映画製作者たちによって作られていることだ。J・Aは、彼の美術的なセンスで『ジュラシック・ワールド/炎の王国』を私が監督した最初の作品やコリンが監督した作品に少し近い形で仕上げてくれた……と言っても、それは100%彼の作品になっている。とてもいい仕事をしてくれたと思うよ。なぜならJ・Aは、真実の声を持つ本物の映画製作者だから、『ジュラシック・パーク』のスタイルやムード、トーンを変化させて作品を乗っ取るのではなく、自分自身の『ジュラシック・ワールド』を完成させるやり方を見つけたんだ。彼が自分の声を我々のシリーズに持ち込んでくれたこと、これがすばらしいと感じた。まさに場外ホームランをぶちかましてくれたっていう感じさ」

ジュラシック・ワールド/炎の王国

元海軍の軍人でパークのもと恐竜監視員オーウェン役はクリスが熱演。ダイビングに水中でのスタント、激しい戦闘シーンなどなど前作よりもさらにハードなスタントを自身でこなしている。ジュラシック・ワールドのもと運営責任者で今は恐竜保護グループ(DPG)を主宰するクレア役はブライスが、恐竜の生死は自然に任せるか人が救うかどちらが良いのかと迷いながらも、信じる道をゆく女性を自然体で表現している。優等生的で気の強いクレアと、ワイルドでやや粗雑でも本質的にとても優しいオーウェンが反発しながらも惹かれ合う様子は、2人の俳優の相性の良さもあり、魅力的な見どころのひとつとなっている。
 クレアたちとともに恐竜を助けに島へ向かうメンバーとしてDPGの恐竜獣医ジア役はダニエラ・ピネダが、DPGのシステム・スペシャリストのフランクリン役はジャスティス・スミスが、そして島でクレアたちを迎えるベテランのレンジャー、ウィートリー役はテッド・レヴィンが、新しい恐竜を生み出すことに執着する遺伝子学者ウー博士役はB・D・ウォンが、第一作で恐竜を蘇らせたジョン・ハモンドを支援していた旧友、億万長者のサー・ベンジャミン・ロックウッド役としてジェームズ・クロムウェルが、恐竜の保護のために創設されたロックウッド財団を管理するイーライ・ミルズ役はレイフ・スポールが、ミルズとビジネスで手を組むエヴァーソル役はトビー・ジョーンズが、ロックウッドの孫娘メイジーの乳母アイリス役はチャーリー・チャップリンの娘でありバヨナ監督の映画作品すべてに出演しているジェラルディン・チャップリンが、そしてカオス理論を提唱するエキセントリックな数学者マルコム博士役は第一作からこの役を演じているジェフ・ゴールドブラムが、それぞれに演じている。またロックウッドの孫娘メイジー役を演じたイザベラ・サーモンは、約2,500人の女の子たちから選出された新人子役。溌溂として愛らしく、今後の活躍も楽しみだ。クレア、メイジー、そしてヴェロキラプトルのブルーと、オーウェンはつくづく気の強いひとクセある女子にモテモテ、というのも面白い。

T-レックスやヴェロキラプトルのブルーといったすでにシリーズの主要キャラクターとなっている恐竜をはじめ、最大の見どころはやはり恐竜たちのいる世界を疑似体験できることだ。質感や色や大きさなどのヴィジュアル、声や足音などの音響や振動などから、3Dや4Dといったアトラクション的な演出にもよく合っていて、ファミリーはもちろん、大人が童心にかえって観るのも楽しいだろう。恐竜についての研究が25年前よりも進んでいることから、細かいディテールがよりリアルになっているとのこと。今回の撮影ではかのT-レックスやヴェロキラプトルのブルー、ウー博士が作り出したインドラプトルなどアニマトロニクスの恐竜が5体あり、その大きさや手触りなどの風合い、1体を何人ものプロたちが部位ごとに操作する恐竜たちのリアルな動きと圧倒的な存在感に、俳優たちも現場で大いに感動したという。なかでも横たわるブルーの世話を獣医ジアがするシーン、クレアとオーウェンが麻酔で眠らされているT-レックスのもとに忍び込むシーンの生々しさは注目だ。またVFXとのコラボによりたくさんの恐竜たちが走り回る定番のシーンについて、アカデミー賞視覚効果賞を受賞した経験をもち、本作でアニマトロニクスと特殊効果スーパーバイザーを担当するニール・スカンランはこのように語っている。「スタッフは特撮とデジタルをミックスするのがとても上手になった。4体のヴェロキラプトルがいるシーンでは、2体が特撮で2体がデジタルでも見わけるのは難しい。位置を入れ替えているからだ。すばらしい出来だよ……2つの技術をミックスし、いつ、どこで観客をハラハラさせるかをうまくやっているんだ」

クリス・プラット

また本作のスタッフも俳優もみんな原作者の故マイケル・クライトンに敬意を表している。マイケル・クライトンは『ジュラシック・パーク』シリーズの原作やTVシリーズ「ER 緊急救命室」の制作で知られる人物。ハーバード大学のハーバード・カレッジを主席で卒業し、ハーバード・メディカル・スクールで医学博士号を取得。ソーク生物学研究所で博士研究員となり、ケンブリッジ大学で人類学を、マサチューセッツ工科大学ではライティングを教えた経歴をもつ。ハーバード在学中にジェフリー・ハドソンとジョン・ラングという2つのペンネームで小説を執筆。書籍を7冊出版し、『Case of Need(邦題:緊急の場合は)』が1969年にアメリカ探偵作家クラブ賞(エドガー賞)最優秀長編賞を受賞、「The Andromeda Strain(邦題:アンドロメダ病原体)」は本名のマイケル・クライトン名義で出版し初のベストセラーに。自身で監督・脚本を手がけた1973年の映画『ウエストワールド』は、コンピューター処理による特殊効果を採用した初の映画作品となり、映画製作におけるコンピューター・プログラムの先駆者として1995年にアカデミー賞科学技術賞を授与。世界的に高い人気を誇る作家の1人であり、これまでに累計2億部以上を売り上げ、作品は40ヵ国語に翻訳、15作品が映画化されている。
 今回の映画では、ジェフ・ゴールドブラムが演じるマルコム博士が上院聴聞会で語るセリフのほとんどは、マイケル・クライトンの小説からそのまま引用している、とバヨナ監督は語る。そしてクライトンの思想に惹かれていることについて、このように語っている。「マイケル・クライトンの本が好きな理由はまず、すばらしい冒険を楽しませてくれること。それに加え、科学の進化がもたらす道徳的な影響について考えさせられること。そこにあるのはもはやサイエンス・フィクションではなく、そういった進化がもたらす現実であり、それが観客に直接的な共感を呼び起こすんだ。25年前、科学の道徳的な限界についての論争は始まったばかりだった。それが今日では毎日のニュースのようになっている。(本作の脚本を担当している)コリンとデレクは、このことについて物語を語る必要があると知っていたし、そのことがこの映画を極めて今日的なものにしているんだ」

シリーズ25周年にふさわしい作品、とスタッフとキャストが自負する本作。2018年6月12日(現地時間)に米国ハリウッドで行われたLAワールドプレミアにて、シリーズの生みの親であるスピルバーグと、本作を手がけたJ・A・バヨナ監督はジュラシック・シリーズや今回の映画についてこのように語った。
 スピルバーグ「僕がこの映画で好きなのは涙がこぼれてしまうようなエモーショナルなシーンがあるところなんだ。J・Aは1作目で私ができなかったことをやってのけたと思うよ! (シリーズ製作について)自分の子どもがどこかの養子になって、それが素晴らしい形で成長していたら嬉しくないかい? そんな気持ちだよ」
 バヨナ監督「この映画はジュラシック・シリーズのなかでも、エモーショナルな面がしっかりと描かれている作品だと思う。製作の初期段階からサスペンスを増やそうとコリンと話していたので怖いシーンも沢山あるけれど、楽しさもあふれている。楽しいサスペンスなんだ」

作品データ

劇場公開 2018年7月13日よりTOHOシネマズ日比谷ほかにて全国ロードショー
制作年/制作国 2018年 アメリカ・スペイン
上映時間 2:08
配給 東宝東和
原題 JURASSIC WORLD: FALLEN KINGDOM
監督 J・A・バヨナ
脚本 デレク・コノリー
脚本・製作総指揮 コリン・トレボロウ
キャラクター原案 マイケル・クライトン
製作総指揮 スティーヴン・スピルバーグ
出演 クリス・プラット
ブライス・ダラス・ハワード
B・D・ウォン
ジェームズ・クロムウェル
テッド・レヴィン
ジャスティス・スミス
ジェラルディン・チャップリン
ダニエラ・ピネダ
トビー・ジョーンズ
レイフ・スポール
ジェラルディン・チャップリン
イザベラ・サーモン
ジェフ・ゴールドブラム
:あつた美希
ライター:あつた美希/Miki Atsuta フリーライター、アロマコーディネーター、クレイセラピスト インストラクター/インタビュー記事、映画コメント、カルチャー全般のレビューなどを執筆。1996年から女性誌を中心に活動し、これまでに取材した人数は600人以上。近年は2015〜2018年に『25ans』にてカルチャーページを、2015〜2019年にフレグランスジャーナル社『アロマトピア』にて“シネマ・アロマ”を、2016〜2018年にプレジデント社『プレジデントウーマン』にてカルチャーページ「大人のスキマ時間」を連載。2018年よりハースト婦人画報社の季刊誌『リシェス』の“LIFESTYLE - NEWS”にてカルチャーを連載中。
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