フェルメールの絵画に触発され執筆した人気小説を映画化
17世紀オランダのチューリップ投機による経済バブル、
富豪の妻と若い画家の背徳のロマンスと顛末を描く
「真珠の耳飾りの少女」などで知られる17世紀オランダの画家ヨハネス・フェルメール。彼の絵画に触発され創作されたベストセラー小説を映画化。出演は『リリーのすべて』のアリシア・ヴィキャンデル、『イングロリアス・バスターズ』『ジャンゴ 繋がれざる者』のクリストフ・ヴァルツ、『恋におちたシェイクスピア』のジュディ・デンチといった3人のオスカー俳優、『アメイジング・スパイダーマン2』のデイン・デハーンほか。監督は『ブーリン家の姉妹』『マンデラ 自由への長い道』のジャスティン・チャドウィック、脚本はイギリスの劇作家としても知られる『恋におちたシェイクスピア』のトム・ストッパード、原作・脚本は、映画『プライドと偏見』の脚本家であり、『マリーゴールド・ホテルで会いましょう』の原作者としても知られるデボラ・モガーが手がける。親子ほど年の離れた豪商と結婚したソフィアは、子どもを授からないことで悩むなか、無名の画家ヤンと出会い……。経済的に繁栄する17世紀オランダを舞台に、チューリップ投機による経済バブル、歳の差婚の夫婦の生活、メイドと魚売りの生き生きとした恋、そして若い妻と無名の画家の背徳の恋、といったさまざまな事情が絡み合い物語が展開。フェルメールの絵画にもとづくヴィジュアルで引きつける、エンターテインメント作品である。
17世紀オランダ、アムステルダム。人々の間では絵画やチューリップなどの投資や収集が流行し、世界最古の経済バブルとして知られる“チューリップ・バブル”がピークを迎えていた。孤児として修道院で育ったソフィアは、周囲の勧めで親子ほど年の離れた裕福な豪商コルネリスと結婚。ソフィアは、恋愛感情はなくとも優しい夫と安定した暮らしに感謝し、夫が切望する跡継ぎを産もうと決意するが、なかなか授からない。妊娠しないことを悩む妻を元気づけようと、コルネリスは無名の画家であるヤンに夫婦の肖像画を依頼。ソフィアとヤンは絵のモデルと画家として向き合ううちに、禁断の恋に落ちる。2人の不倫関係が続くなか、ソフィアはある大胆な計画を思いつき……。
「フェルメールの絵画の世界を小説にしたい」という原作者の思いから生まれた物語。実話ベースではなく、絵画から得たインスピレーションから創作されたストーリーだ。フェルメールの映画というと、スカーレット・ヨハンソンとコリン・ファースの共演、ピーター・ウェーバー監督による2003年のイギリス・ルクセンブルク合作映画『真珠の耳飾りの少女』を思い出す向きもあると思うが、本作とは時代性やフェルメールの絵画にもとづく衣装や美術といったヴィジュアルが美しいのは共通ながら、物語としての趣はまた異なる。絵画のタイトルをそのまま映画にした『真珠の〜』では、あくまでも芸術で結びつく画家と女性との関係を描いていたが、本作ではヒロインであるソフィアを主体に芸術はエピソードのひとつで、のちにフェルメールとなる画家も登場人物のひとりであり、若い2人が勢い惹かれ合い恋に溺れ、思いがけない顛末へと駆け抜けてゆくドラマティックな内容となっている。プロデューサーのアリソン・オーウェンは語る。「そもそもの始まりはオランダ絵画でしたが、当時の絵画にまつわるすべてを描くつもりはなかったの。ありふれているけど、リアルで土臭いものに仕上げることが、すごく大事だったのよ。それと同時に、レンブラントやフェルメールの作品を織り交ぜながら、当時の人々に思いを馳せ、そして現代の社会とつながりを付けたのよ」
修道院で育った美少女ソフィア役はアリシアが、世間知らずでおとなしい実直な女性から、背徳の恋に身を任せ、新たな自分に戸惑いながらも疾走するヒロインを熱演。富豪で有力者の商人コルネリス役はクリストフが、言いなりの若く美しい妻に満足している年上夫の哀愁を、若手画家のヤン役はデインが、タブーの恋に耽溺しひたすらソフィアを描き続け、極端な行動に打って出る姿を情熱的に。メイドのマリア役はホリデイ・グレインジャーが、マリアの恋人で魚売りのウィレム役はジャック・オコンネルが、ソルフ医師役はトム・ホランダーが、そして修道院の院長役はジュディ・デンチが、それぞれに演じている。
この物語でユニークなのは、世界最古の経済バブルと言われる“チューリップ・バブル”が描かれているところだ。投機に慣れていない人間がビギナーズラックに喜び、深みにハマるといった臨場感がよく伝わってくる。1635年の秋からは土に埋められた状態のチューリップの球根が取引されるようになり、球根の約束手形が買い手に渡され、これが初の先物取引だったというのも興味深い。
またヴィジュアルは、絵画の「真珠の耳飾りの少女」をオマージュとした衣装や、フェルメールの絵で印象的である鮮やかな“フェルメール・ブルー”のドレスといった、絵画的な映像の華やかさも観ていて楽しい。
画家本人についても謎の部分が多く、現存する作品数が少ないながら、近年ますます世界的な人気が高まっているフェルメール。現在は上野の森美術館にて「フェルメール展」が開催中(期間:2018年10月5日〜2019年2月3日)。今回は「真珠の耳飾りの少女」の展示はないものの、現存するフェルメールの約35点前後の作品のうち『牛乳を注ぐ女』をはじめ日本初公開の作品を含む8点のフェルメール作品を展示。さらに1月9日から会期末までの期間限定ながら、日本初公開作品「取り持ち女」の追加出展が決まったというニュースも。もしフェルメールの絵画に惹かれるなら、映画と美術展の両方を観て、画家の生きた17世紀オランダの時代と、絵画的なヴィジュアルの世界を体感してみてはいかがだろう。
劇場公開 | 2018年10月6日より新宿バルト9ほかにて全国ロードショー |
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制作年/制作国 | 2017年 イギリス |
上映時間 | 1:58 |
配給 | ファントム・フィルム |
原題 | Tulip Fever |
監督 | ジャスティン・チャドウィック |
原作・脚本 | デボラ・モガー |
脚本 | トム・ストッパード |
製作 | アリソン・オーウェン |
出演 | アリシア・ヴィキャンデル デイン・デハーン ジュディ・デンチ クリストフ・ヴァルツ マシュー・モリソン ジャック・オコンネル カーラ・デルヴィーニュ ザック・ガリフィナーキス |
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