ファンタスティック・ビーストと黒い魔法使いの誕生

魔法動物学者ニュートは仲間たちとともにパリへ
黒い魔法使いと若き日のダンブルドアの因縁とは?
ダーク・ファンタジーの世界へ一気に展開する最新作

  • 2018/11/21
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ファンタスティック・ビーストと黒い魔法使いの誕生©2018 Warner Bros. Ent. All Rights Reserved.
Harry Potter and Fantastic Beasts Publishing Rights ©J.K.R.

世界的に大ヒットした前作から2年、“J.K. Rowling’s Wizarding World(J.K.ローリングによる魔法ワールド)”のシリーズ最新作が完成。出演は前作に引き続き、『博士と彼女のセオリー』のオスカー俳優エディ・レッドメイン、『エイリアン:コヴェナント』のキャサリン・ウォーターストン、演劇・映画・ドラマと活躍しトニー賞受賞歴をもつダン・フォグラー、シンガーで女優のアリソン・スドル、『パイレーツ・オブ・カリビアン』シリーズのジョニー・デップ、そして本作より出演する『グランド・ブダペスト・ホテル』のジュード・ロウほか。監督は前作と同じく『ハリー・ポッター』シリーズのデイビッド・イェーツ、脚本・製作は『ハリー・ポッター』『ファンタスティック・ビースト』シリーズの原作者J.K.ローリング本人が手がける。強大な力をもつ“黒い魔法使い”グリンデルバルドが移送中に逃亡。魔法動物学者ニュートは思いがけない人から、グリンデルバルドを追うように言われ……。冒頭から激しい魔法バトルで一気にダーク・ファンタジーの世界へ引き込み、恋、友情、アイデンティティーの探求といったドラマが展開してゆくシリーズ最新作である。

キャサリン・ウォーターストン,エディ・レッドメイン

ホグワーツ魔法魔術学校で学んだ魔法動物学者のニュート・スキャマンダーは、今日もトランクを入り口に無限に広がる異空間で、不思議な魔法動物たちの世話をしている。アメリカ合衆国魔法議会(通称:米国魔法省)ことマクーザでは、“黒い魔法使い”グリンデルバルドを移送中に取り逃がして大問題になり、捜索を開始。ニュートは久しぶりに再会したホグワーツ魔法学校時代の恩師アルバス・ダンブルドアから、「グリンデルバルドと戦えるのは君だけだ」と言われて戸惑う。グリンデルバルドが潜伏先のパリで勢力を広げるなか、ニュートは仲間や魔法動物たちとともにパリへ。闇祓いとしてマクーザに復職したティナもまた、強い魔力を封じられた孤独な青年クリーデンスを追ってパリにいた。一方、ホグワーツ魔法学校ではダンブルドア先生のもとに訪問者が……。

黒い魔法使いと支持者たちの野望、強大な力ゆえに各方面からマークされ、自身の出自を知りたいと渇望するひとりの青年、状況に巻き込まれてゆくニュートたち、法と規律を守ろうとする各国の魔法省の人々、そして登場人物たちの恋の行方は? 青年の冒険と成長を描き、魔法動物たちのかわいさや登場人物たちのテンポのいいやりとりが特徴だった前作から一転、“ハリー・ポッター”シリーズ後期のようなダークな世界となっている本作。“ハリー・ポッター”を含めてウィザーディング・ワールドを手がけるのは本作で6度目となるイェーツ監督は、原作者J.K.ローリングが脚本を執筆する映画“ファンタビ”シリーズの魅力について語る。「今回のジョー(J.K.ローリングの愛称)の脚本を読んだとき、1作目とはずいぶん印象が違うと感じました。物語が厚みを増し、さらに複雑になり、新たなキャラクターが絡んで、ぐっとダークな趣になっている。何よりも感心したのは心理サスペンスの要素が描かれていたことです。こういう展開になるとは予想もしていませんでした。ジョーは自ら築いた世界をつねに進化させる。監督としては、そこが毎回のやりがいであり、試練でもあるんです」

ジュード・ロウ,ほか

魔法動物学者ニュート・スキャマンダー役は、エディが少し大人になった様子で。著書『幻の動物とその生息地』がベストセラーになっても、いつも通り淡々と魔法動物たちの世話をしている姿はいかにもニュートらしい。前作でニュートとともに活躍したことでマクーザ(米国魔法省)に闇払いとして復職したティナ役はキャサリンが、仕事に打ち込む正義感の強い女性として、ティナの妹で人の心が読める魔法使いクイニー役はアリソンが、クイニーの恋人でマグル(人間)の陽気なパン職人ジェイコブ役はダンが演じている。オッドアイの黒い魔法使いことグリンデルバルド役はジョニー・デップが柔らかな物腰でも冷徹な人物として、英国魔法省のエリートで闇払い局のトップであるニュートの兄テセウス役はカラム・ターナーが弟思いの兄として、ニュートの学生時代からの幼なじみで純血の魔法使いリタ役はゾーイ・クラヴィッツが、養母に魔力を封じられた青年クリーデンス役はエズラ・ミラーが、クリーデンスの友人でビーストに変身する女性ナギニ役はクローディア・キムが、アフリカ系フランス人の純血の魔法使いユスフ役はウィリアム・ナディラムが、マクーザ議長のセラフィーナ役はカーメン・イジョゴが、アルカナス・サーカスのオーナー兼団役はオラフル・ダッリ・オラフソンが、魔法省が雇った賞金稼ぎのグリムソン役はイングバール・シーグルソンが、グリンデルバルドの一派で元マクーザ職員のアバナシー役はケビン・ガスリーが、グリンデルバルドのとりまきの人々はポピー・コービー=チューチ、マヤ・ブルーム、サイモン・ミーコック、デイビッド・サクライ、クラウディアス・ピーターズがそれぞれに演じている。

キャラクターとしての見どころは、ハリー・ポッターのシリーズでおなじみの人物が登場することだ。まずはホグワーツ魔法学校の偉大なる校長となる前の若い頃、一介の教師であるアルバス・ダンブルドア。ジュード・ロウがあごひげ姿で、魔法使いとしてトップクラスの実力と遊び心、複雑な過去をもつさまを演じている。有名なキャラクターを演じることにジュードは大きなプレッシャーがあったものの、J.K.ローリングと話して助言を得たことがとても励みになったそうだ。J.K.ローリングはニュートとダンブルドアの関係性について語る。「2人の間柄はなかなか興味深くて、ハリー・ポッターの場合の師弟関係とはずいぶん違う。もっと対等な関係なんです」。またJ.K.ローリングは“ファンタビ”で描くダンブルドアとグリンデルバルドの因縁について語る。「このシリーズで描いているのは、『ハリー・ポッター』の原作シリーズのなかで軽く触れただけのエピソードです。グリンデルバルドの台頭は魔法界と非魔法界の両方を根底から揺るがし、その宿敵であるダンブルドアは物語に欠かせない存在です。グリンデルバルドの名前が初めて出たのは第一巻の『ハリー・ポッターと賢者の石』で、最初から存在感はあったものの、素性のよく分からない謎の人物でした。ダンブルドアの過去に大きく関わっているのは確かだけれども、その大きさが見え始めたところで原作シリーズは終わりを迎えました。私が何よりも掘り下げてみたいと思ったのは、まさにそこです。私自身、ダンブルドアは大好きなキャラクターですから」
 もうひとりの有名なキャラクターは“賢者の石”を作った人物、古代の錬金術師ニコラス・フラメルだ。“ハリポタ”ファンの間で知られるこの人物は、錬金術による長命でまさに生き字引でありつつも、600歳の体でよぼよぼの動作と気弱な話しぶりといった様子を、ブロンティス・ホドロフスキーがユーモラスな味わいで演じている。そしてキモかわいい魔法動物、ビーストたちも健在。ニュートの相棒で小枝のような姿、内気で純真な性分のボウトラックル、ひかりものが大好きで手癖(?)の悪いげっ歯類系のニフラー、全身をケルプ(海藻)で覆われたような姿で気が荒い水獣ケルピー、鋭い鉤つめに長い牙、七色の尻尾をもつ獰猛なネコ科の大型獣ズーウーほか、個性的なビーストたちがダークな物語のなかで躍動感や楽しさを担っている。ところで余談ながら、ボウトラックルをみて『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』のグルートを、ケルピーをみて『まんが日本昔ばなし』のオープニングの竜や、映画『ネバーエンディング・ストーリー』のファルコンを、ズーウーをみて『となりのトトロ』の猫バスを思い出すのは筆者だけではないはずだ。

ジョニー・デップ,ほか

“ハリー・ポッター”全シリーズを含むウィザーディング・ワールドの作品すべてを手がけてきた製作のデイビッド・ヘイマンは、J.K.ローリングのストーリーの魅力と本作のテーマ性について語る。「ジョーがつむぐストーリーはどれも楽しくて、アイデアにあふれ、キャラクターが生き生きと描かれています。この作品にも『ハリー・ポッター』シリーズに通じるテーマとして、善と悪の対決、愛と喪失、友情と誠意、アイデンティティーと疎外感が描かれます。また、本作では選択というテーマも強く打ち出しています。どちらの側に付くのか、あるいは、どちらの側にも付かないのか。その選択が自分だけではなく、周囲にも影響します。こうした数々のテーマには古今東西を問わない普遍性がある。魔法の世界を舞台にしながら、人間社会を映し出しているんです」
 『ハリー・ポッターと賢者の石』は初版から2017年に20周年を迎え、日本では2019年に発売から20周年を迎える。イギリスやアメリカでは舞台版『ハリー・ポッターと呪いの子 第一部・第二部』の上演や、20周年記念特別展『ヒストリー・オブ・マジック』が開催され、アニバーサリーイヤーのお祝いムードが続いているとも。“ファンタビ”の気分をより楽しむのに、日本での関連イベントを公式HPから確認するのも楽しいだろう。またJ.K.ローリングは2018年11月9日にフランスで行われたパリ・ワールドプレミアにて、「今は続編にとりかかっているから、今日ついにみなさんとストーリーを共有できてとても嬉しいわ」とコメント。映画“ファンタビ”シリーズは全5作の予定で、脚本はすべてJ.K.ローリングが担当。新たなウィザーディング・ワールド、ニュートたちのドラマがどのように展開していくのか、世界中の魔法ワールドのファンとともに楽しみにしている。

作品データ

劇場公開 2018年11月23日よりTOHOシネマズ日比谷ほかにて3D/4D/IMAX(R)同時公開
制作年/制作国 2018年 アメリカ
上映時間 2:14
配給 ワーナー・ブラザース映画
原題 FANTASTIC BEASTS: THE CRIMES OF GRINDELWALD
監督 デイビッド・イェーツ
原作・脚本・製作 J.K. ローリング
製作 デイビッド・ヘイマンほか
出演 エディ・レッドメイン
キャサリン・ウォーターストン
ダン・フォグラー
アリソン・スドル
エズラ・ミラー
ゾーイ・クラヴィッツ
カラム・ターナー
クローディア・キム
ウィリアム・ナディラム
ケビン・ガスリー
カーメン・イジョゴ
ポピー・コービー=チューチ
ジュード・ロウ
ジョニー・デップ
:あつた美希
ライター:あつた美希/Miki Atsuta フリーライター、アロマコーディネーター、クレイセラピスト インストラクター/インタビュー記事、映画コメント、カルチャー全般のレビューなどを執筆。1996年から女性誌を中心に活動し、これまでに取材した人数は600人以上。近年は2015〜2018年に『25ans』にてカルチャーページを、2015〜2019年にフレグランスジャーナル社『アロマトピア』にて“シネマ・アロマ”を、2016〜2018年にプレジデント社『プレジデントウーマン』にてカルチャーページ「大人のスキマ時間」を連載。2018年よりハースト婦人画報社の季刊誌『リシェス』の“LIFESTYLE - NEWS”にてカルチャーを連載中。
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