ダウントン・アビー

英国のカントリー・ハウスを舞台に描く人気ドラマを映画化
国王夫妻来訪が決定、伯爵一家は使用人たちと準備を始め…
エレガントでいてユーモアやガッツを含む味わい深い群像劇

  • 2020/01/06
  • イベント
  • シネマ
ダウントン・アビー© 2019 FOCUS FEATURES LLC. ALL RIGHTS RESERVED.

20世紀初頭のイギリス、架空のカントリー・ハウス「ダウントン・アビー」を舞台に描く人気ドラマを映画化。出演はドラマから引き続き、『パディントン』のヒュー・ボネヴィル、大御所のオスカー女優マギー・スミス、『天才作家の妻−40年目の真実−』のエリザベス・マクガヴァン、『ベロニカとの記憶』のミシェル・ドッカリー、『シンクロ・ダンディーズ!』のジム・カーター、そして今回が初出演となる『ヴェラ・ドレイク』のイメルダ・スタウントンほか。製作はテレビシリーズの生みの親であり、『ゴスフォード・パーク』で第74回アカデミー賞の脚本賞を受賞した脚本家ジュリアン・フェローズをはじめ、ドラマの主要メンバーが手がける。ダウントン・アビーに“国王夫妻ご来訪”の知らせが到着。グランサム伯爵家のクローリー家と使用人たちは発奮し、歓迎のパレードや晩餐会の準備を始めるが……。王室、貴族、使用人、といったさまざまな立場の人々が関わり合いながら、各人が自分たちらしい道をゆくさまを描く、エレガントな群像劇である。

マギー・スミス,ヒュー・ボネヴィル,ミシェル・ドッカリー

イングランド北東部、ヨークシャーのダウントン村にある壮麗な大邸宅「ダウントン・アビー」。ここには、当主のグランサム伯爵ロバート・クローリーと、その妻でアメリカ出身のコーラ、長女メアリーと息子ジョージ、前夫を亡くしたメアリーが再婚した夫ヘンリー、亡き三女シビルの夫トム・ブランソンと娘シビーが暮らしている。また次女のイーディス一家や、先代伯爵夫人のバイオレット、メアリーの亡夫マシューの母親イザベル・マートンもたびたび訪れている。ある日、ダウントンをジョージ5世国王とメアリー王妃が訪れる、という知らせが届き、一家も使用人たちも驚き興奮。歓迎のパレードや晩餐会の準備を始めるが、事前に下見に来た王室の従者たちは、国王夫妻の食事作りも給仕もすべて自分たちが行うと告げる。ダウントンの使用人たちは憤慨し落胆するも、あることを思いつく。一方でバイオレットは、メアリー王妃の侍女を務める、何十年も音信不通だった従妹モードと国王夫妻の来訪時に再会することから、財産の相続についてハッキリさせると意気込む。

テレビシリーズは2010〜2015年にシーズン6まで全52エピソードを放送、劇中で1912年〜25年当時の英国ヨークシャーにある架空のカントリー・ハウスを舞台に描き、ゴールデングローブ賞やエミー賞など数々の賞を受賞した人気作。映画では1925年から1年半後のダウントンの人々を描いている。“国王夫妻のご来訪”というわかりやすく華やかなテーマを軸に、ロマンスやスキャンダルや計略などそれぞれの悲喜こもごもが描かれ、ドラマシリーズを観ていない人にとっても映画単体で楽しめる作品となっている。ジュリアン・フェローズは「映画では、テレビではできないようなスケールの大きなことができた」とコメント。ドラマシリーズで企画・脚本・製作総指揮を務め、映画では単独で脚本を執筆したフェローズは本作について、「映画化の噂がどんどん大きくなり、製作チームがその声に抗えなくなった。それで映画ができたんだ」と語る。そして映画として工夫した点について、このように語っている。「テレビでは1話の中で4〜5人の人物に焦点を当ててストーリーを作る。あとの人物は登場するだけだ。そして次の回には、別の4〜5人に焦点を当てる。映画ではすべての人物にストーリーを用意し、それを決着させなければならない。いくつものストーリーを織り上げる感じだ」
 また映画の見どころについてマイケル・エングラー監督は語る。「映画は大きなスクリーンで上映するから、映像もスケールも大きくした。この作品の筋金入りのファンでなくても映画を楽しめるよ。熱烈なファンだったら、登場人物のことやお互いの関係がよく分かって、より満足感が高まると思う。それぞれの人物にどんなストーリーがあっても、大きな出来事が起こることで、みんながひとつになるんだ」

マイケル・フォックス,ソフィー・マックシェラ,レスリー・ニコル,ラケル・キャシディ,ケヴィン・ドイル,フィリス・ローガン,ジム・カーター,ジョアン・フロガット,ブレンダン・コイル,ほか

ダウントンの主であるグランサム伯爵ロバート・クローリー役はヒュー・ボネヴィルが、娘たちを見守る紳士的な父親として、長女メアリー・タルボット役はミシェル・ドッカリーが賢く行動力のある女性として、先代グランサム伯爵未亡人バイオレット役はマギー・スミスが、高圧的で押しが強いものの率直で憎めない老婦人として、グランサム伯爵夫人コーラ役はエリザベス・マクガヴァンが、メアリーの現在の夫であるヘンリー役はマシュー・グードが、現在は引退したもと執事のカーソン役はジム・カーターが、バイオレットの従妹でメアリー王妃の侍女モード・バッグショー役はイメルダ・スタウントンが、メアリーの亡夫マシューの母イザベル役はペネロープ・ウィルトンが、ジョージ5世国王役とメアリー王妃役はサイモン・ジョーンズとジェラルディン・ジェームズが、それぞれに演じている。
 ジュリアン・フェローズはキャラクターたちへの思い入れを語る。「ドラマが6年続いて、もうすっかり実在の人物のようになった。私はよく、どの人物が好きかを質問される。答えは全員だよ。どの人物も大好きだ。みんな私の子どもだからね。私は人物を生み出した。そしてダウントン・アビーという世界で、私と俳優たちはそれぞれの役柄に宿り、育っていったんだよ。一緒にね」

撮影はドラマと同様、17世紀にイギリスのハンプシャーに建てられたカントリー・ハウス、ハイクレア城にて。1000エーカーの敷地にケイパビリティ・ブラウンの設計による庭園があり、1679年から代々カーナヴォン伯爵家が住んでいる。この場所はドラマの撮影にあたり製作チームが半年かけて様々な城を見て回って決定したという。ところで、壮麗な屋敷の舞台裏で使用人たちがテキパキと動き回る映画の冒頭シーンで、ロバート・アルトマン監督の2001年の映画『ゴスフォード・パーク』がパッと浮かぶのは当然のこと。脚本家のジュリアン・フェローズは自身初のプロデュース作品だった『ゴスフォード・パーク』でアカデミー賞の脚本賞をはじめ、全米脚本家組合賞やNY批評家協会賞などさまざまな賞を受賞。そもそもドラマシリーズのはじまりは、プロデューサーのギャレス・ニームがジュリアン・フェローズにこう言ってオファーしたのが始まりだったそうだ。「エドワード朝のカントリー・ハウスを舞台にしたドラマはどうか?『ゴスフォード・パーク』は、イギリスのカントリー・ハウスを描くジャンルを確立したから、その時代設定でプライムタイムに放映するテレビシリーズを作れば、すごい作品ができると思ったんだ」

ローラ・カーマイケル,エリザベス・マクガヴァン,ミシェル・ドッカリー

イギリスの時代物である本作を監督したのは、アメリカ人のマイケル・エングラー。ドラマのファンであるエングラー監督は、製作のリズ・トルブリッジがイギリス文化の外からこのドラマを見て意見が言える、第三者の視点を求めていた頃に会い、フェローズやニームとも会って話し、ドラマでは第5シーズンで1本、第6シーズンで数本の監督を手がけた人物だ。監督はアメリカ人である自身がこの作品を手がけたことについて、「イギリスの作品をアメリカ人が監督することに抵抗する人もいるかと思ったが、そんなことはなかった」と語っている。そして映画の見どころについて監督は語る。「テレビシリーズでみなさんが気に入っていたロマンスやサスペンス、コメディ的な要素などが、最高の完成度で展開します。ダウントン・アビーの人々は階級制度のなかで、自分にとって名誉とは何か定義しようとする。彼らは自分より大きな何かの一員であることに、意味を見出しているんだ。歴史的な面や美しい衣装、素晴らしいロケ地なども見どころだね。スケールは大きくなっているが、感情に支配された人間ドラマ、伯爵一家と使用人たちの関係など、シリーズでおなじみの要素もしっかり描かれていますよ」

イギリスのクラシックなカントリー・ハウスを舞台に、貴族社会に生きる人々や使用人、周囲の人々のドラマを描く物語。と言っても、気取っていてシリアスで陰鬱な感覚ではなく、主義主張のはっきりした個性的な面々のいざこざや身内のごたごた、エレガントな表舞台の裏にあるユーモアやガッツが軽快に描かれているのが楽しい本作。200以上の国と地域で放送され大ヒットし、世界中に大勢のファンがいるこの作品の魅力について、エングラー監督はこのように語っている。「この作品に描かれている価値観は普遍的で、それが成功につながっていると思う。観る人はノスタルジックな感傷に浸ったり、昔も今も変わらないと思ったりするんじゃないかな。王立美術館やナショナル・ポートレート・ギャラリーへ行くのと近いのかもしれないね。イギリスの歴史は文学、ビジュアル、文化と密接に関わっていて今も色あせていないから、人々の感性に響くんだ」

作品データ

ダウントン・アビー
公開 2020年1月10日よりTOHOシネマズ日比谷ほかにて全国ロードショー
制作年/制作国 2019年 イギリス・アメリカ
上映時間 2:02
配給 東宝東和
原題 Downton Abbey
監督 マイケル・エングラー
脚本・製作 ジュリアン・フェローズ
製作 ギャレス・ニーム
リズ・トルブリッジ
出演 ヒュー・ボネヴィル
ジム・カーター
ミシェル・ドッカリー
エリザベス・マクガヴァン
マギー・スミス
イメルダ・スタウントン
ペネロープ・ウィルトン
:あつた美希
ライター:あつた美希/Miki Atsuta フリーライター、アロマコーディネーター、クレイセラピスト インストラクター/インタビュー記事、映画コメント、カルチャー全般のレビューなどを執筆。1996年から女性誌を中心に活動し、これまでに取材した人数は600人以上。近年は2015〜2018年に『25ans』にてカルチャーページを、2015〜2019年にフレグランスジャーナル社『アロマトピア』にて“シネマ・アロマ”を、2016〜2018年にプレジデント社『プレジデントウーマン』にてカルチャーページ「大人のスキマ時間」を連載。2018年よりハースト婦人画報社の季刊誌『リシェス』の“LIFESTYLE - NEWS”にてカルチャーを連載中。
XInstagram

記載内容は取材もしくは更新時の情報によるものです。商品の価格や取扱い・営業時間の変更等がございます。