eHills Club 試写会日記

毎週、映画ファンの皆さんへ熱いメッセージ! 傑作でもB級でも映画ってやっぱり素敵!!

ザ・ファブル 殺さない殺し屋

岡田准一主演による人気コミックの映画化第2弾
休業中の殺し屋ファブルは意外な人物と再会し……
本格アクションのみならず、ドラマ性やユーモアも

ザ・ファブル 殺さない殺し屋©2021「ザ・ファブル 殺さない 殺し屋 」製作委員会

累計発行部数900万部を超える南勝久の人気コミックの映画化、シリーズ第2弾が完成。出演は前作から引き続き、『燃えよ剣』の岡田准一、『居眠り磐音』の木村文乃、『糸』の山本美月、『新解釈・三國志』の佐藤二朗、『影裏』の安田顕、『Fukushima 50』の佐藤浩市、新メンバーは『望み』の堤真一、『さんかく窓の外側は夜』の平手友梨奈、NHK大河ドラマ『麒麟がくる』の安藤政信ほか。監督は前作と同じく、カンヌ国際広告祭で3年連続受賞し、映画やドラマ、CMなどの演出を手がける江口カン。伝説の殺し屋ファブルは、ボスの指示で1年間誰も殺さず“普通”に生きることに。佐藤アキラという偽名で相棒・ヨウコと共に一般人の兄妹として暮らすなか、過去に請け負った仕事の関係者と出会い……。さまざまなファイトシーンやカーアクション、団地を一棟貸し切りにした大がかりなバトルシーンで引きつけ、脱力系の会話やオフビートのユーモアでふいに和む。人気俳優たち共演の派手なアクション映画というだけじゃない、独特の面白さのあるドラマである。

「どんな相手も6秒以内に仕留める」伝説的な殺し屋ファブルは、ボスからの「一年間、誰も殺すな。一般人として“普通”に生きろ」という命により、引き続き相棒・ヨウコと一緒に休業中。佐藤アキラという偽名でヨウコと兄妹のフリをして大阪で暮らしている。変わり者のアキラは、今日もバイト先の小さなデザイン事務所「オクトパス」の社長や同僚のミサキと過ごしながら<プロの普通>を極めるべく奮闘している。一方街では、表向きは子どもを守るNPOの代表であり、裏では多額の報酬で殺人を請け負う男・宇津帆が凄腕の殺し屋・鈴木と共に暗躍していた。そんな折、アキラは4年前のある事件で自分が救えなかった車椅子の少女・ヒナコと偶然再会し……。

堤真一,岡田准一

キレッキレの岡田准一のアクションで魅了した前作から、登場人物たちの個性がさらに際立ち、ドラマ性がますます充実しているシリーズ第2弾。今回は原作ファンの間で「一番泣けるエピソード」として知られる“宇津帆編”を映画化。映画では、主人公の側にも敵側にも各キャラクターそれぞれの信条やゆるぎなさがあり、行動への動機や思惑や欲望が皆バラバラにあるのが面白い。フィクションでは善悪や敵味方が白黒はっきりしているのが当然だが、現実ではほとんどのことが曖昧でまぜこぜで流動的であり、トラブルで予定通りにいかないのが当たり前。人の感情や立場や未来も1色や1択ではなく混沌としているもので、そこをサバイバルしていくという現実感のニュアンスがユニークに含まれているような。また前作では、ヒロインのミサキがか弱く守られる女性だったのが、今回のヒロインであるヒナコは日々に葛藤し強い反骨心を抱いて内面で戦っている少女であり、そして妹設定の相棒ヨウコの強烈なアクションシーンもありと、女性のキャラクターをより力強く描いているのが特徴だ。本作は1作目の公開中からシリーズ化が始動していたなか、“前作を超える!”という2作目のプレッシャーがあったことについて、江口監督は「すごく大変なのはわかっていましたが、やるからには絶対前作を超えないと意味がないと思っていました」と話し、「クランクアップした今、僕は前作を遥かに超える手応えに身震いしている」とコメントしている。
 3つの格闘技の師範の資格保持者である岡田准一は、本作では主演とファイトコレオグラファーを兼任。前作ではアクション制作に部分的に関わっていたものの、今回は最初からアクションの振付を考えて構成し現場ではほかの出演者たちにもアクションの動きをつけていった。2021年5月26日に東京で行われたプレミアイベントにて、岡田准一は企画が正式に始まる前から江口監督やアクション監督の横山誠と話し合っていたことについて、このように語っている。「アクションの動きや構成は、監督やアクション監督と相談してダメ出しをされながら作りました。まず2作目をやるかやらないかは置いといて、勉強してきたことを伝える会というのをやったことで、どういうアクションをやっていきたいか、という共通言語を作ることができたんです。それでやっとやりたいことを1歩目2歩目と踏み出せた、という感じがありました」

伝説の殺し屋ファブルであり一般人として“普通に”生きる佐藤アキラ(偽名)役は岡田准一が、並外れた格闘能力と、一般常識とはズレていても本人のなかではまったくブレていないマイペースすぎる様子をいい塩梅で。ファブルの仕事の相棒であり、妹として共に一般社会に潜入するヨウコ役は木村文乃が、酒好きでギャルっぽくリラックスしていながらもキメる時はキメるカッコ良さを痛快に。ファブルを親代わりとして幼い頃からプロの殺し屋に育て上げたボス役は佐藤浩市が、アキラのバイト先であるデザイン会社「オクトパス」の社長・田高田役は佐藤二朗が、バイト仲間で親の借金返済のために働く心優しいミサキ役は山本美月が、オクトパス社員・貝沼役は好井まさおが、裏社会の組織でファブルの世話人を請け負う真黒カンパニー社長・海老原役は安田顕が、海老原の部下でファブルに憧れるクロ役は井之脇海が、表向きはNPO団体・子供たちを危険から守る会の代表だが裏では高額の報酬で殺人を請け負う宇津帆役は堤真一が、過去の事件をきっかけに心を閉ざした少女・ヒナコ役は平手友梨奈が、宇津帆の右腕となる凄腕の殺し屋・鈴木役は安藤政信が、真黒カンパニーの元社員であり今は宇津帆の組織で働く井崎役はパンクブーブーの黒瀬純が、ファブルが大ファンであるお笑い芸人ジャッカル富岡役は宮川大輔が、ジャッカル主演ドラマの女優・アイ役は橋本マナミが、それぞれに演じている。江口監督は出演者たちの役作りと表現を称えて語る。「(素晴らしいのは)レギュラー俳優陣による奇抜かつリアリティあるキャラクター造形。そしてファブルはなんといっても敵が命。今回の敵・堤真一氏の怪演かつ狂演。平手友梨奈氏の魂を揺さぶる熱演。安藤政信氏の妙に人間臭い匠演。これらが渾然一体となり、奇妙だが分厚い人間ドラマが生まれた。また、コロナによる長期中断という出口の見えない危機的状況を躱して撮り切れたのは、何よりもキャスト・スタッフの今作へのこだわりと情熱と愛情の賜物に他ならない」

黒瀬純,堤真一,平手友梨奈,安藤政信

そしてアクションの見どころは、冒頭のカーアクションから。ファブルが立体駐車場で暴走する車にしがみつき、なかにいる少女を助けようと苦戦するシーンだ。実際に岡田本人がやっているのだから驚く。映画の撮影としては緻密に演出され、ファブルというキャラクターのなかでは成功の段取りが計算されているはずなのだが、ファブルのアクションや格闘シーンはどれも思い切りが良すぎるあまり高い身体能力頼みの行き当たりばったりに見えて、ハラハラさせるところがまた愉快だ。大きな団地を一棟丸ごと貸し切りで、巨大な足場を作っての大がかりな団地アクションは派手な見せ場。壁と壁の隙間のアクションでは岡田も敵役も、撮影カメラマンまでもハーネスで吊られて撮影。団地を舞台にしたバトルシーンでは、後半で明らかに実際に強いとわかる敵役との1対1の対決には、岡田の柔術の師匠であるブラジリアン柔術の橋本知之選手(2020年のヨーロピアンオープン柔術選手権の黒帯ルースター級にて優勝)が登場。技のスピード感と重さと迫力が伝わってくる。ファブルに単身で立ちはだかる短髪に白いトップス、黒いパンツのしぶとい敵役との対決シーンはお見逃しなく。クライマックスである山中のシーンも、さまざまな思惑が交錯し何がどう動くかわからない膠着状態からの展開が引きつける。
 個人的に一番好みなのはヨウコと鈴木が対峙するシーンだ。圧倒的な威圧も、あの締め技も(岡田がつけた)、キッチンタイマーも、麻婆豆腐のくだりまで。岡田が「文乃さんがめちゃくちゃ練習してくれた」というアクションについて、前述のプレミアイベントにて木村文乃はこのように語った。「気合を入れて3か月くらい前から練習を始めたら、岡田さんは1つ課題をクリアすると、次は2つ課題をくださるという(笑)『アクションはお芝居で対話なんだよ』と、ただの殴る蹴るじゃないということを初めて岡田さんが教えてくれました。そこから本当にアクションが楽しくなったので、とても貴重な経験をさせてもらったなと思います」
 また鈴木役の安藤政信も、同イベントにて岡田のアクションについて熱心に語った。「今までいろいろな映画でアクションをやってきましたが、岡田に会ってからは今まで自分がやってきたことをアクションと呼ぶのがおこがましいんじゃないかと思うくらい、岡田のアクションは本当にすごいと思いました。全然ヨイショしている訳ではなくて、マジですごいと思って。僕も指導してもらったんですけど、最初は『なんで指導されなきゃいけないんだろう?』とちょっと思っていました。でも岡田の動きや、アクションの哲学みたいなものを目の前で見て、すぐに『弟子にしてください!』と言いました。岡田の動きはどう考えたって真似できないけど、ちゃんと自分の体で、芝居としてアクションを伝えることが大事だと思うようになりました。師匠です(笑)」
 江口監督も岡田が真摯に打ち込んだ本作のハイレベルなアクションについて語る。「岡田准一氏と共に目指したものは“前作を遥かに超える今までにないアクション映画”。岡田氏は前回同様ほとんどのアクションを自ら演じるのみならず、共演者のアクションも考案・指導。自分の出番がなくても現場に張り付くという徹底ぶりで今作のアクションのクオリティを高次元に引き上げた」
 原作者の南勝久は、脚本やキャスティングから参加したことや映画への期待を語る。「今回、映画の続編のお話を頂き、脚本段階から打ち合わせに参加させて頂きました。原作ファン・映画ファンの両面からも前作以上に凄い作品になると確信しています。キャストではウツボ役を堤真一さんに受けて頂き、興奮と感謝の気持ちでいっぱいです。またヒナコ役の平手友梨奈さんも僕の第一希望でありました。その他のキャスティングも最初から最後まで、しっかりと摺り合わせをして頂き、心から感謝しております。またコロナ騒動の中、撮影が中断するなど大変だったはずですが、江口カン監督、岡田准一さんをはじめとするキャストの皆様、関係者の皆様、本当にお疲れ様でございました。完成をいちファン目線で本当に楽しみに待ち望んでおります」

佐藤二朗,山本美月

アクションはもちろん、ドラマも笑いもしっかりと楽しめる本作。笑いで言うと、じっと制止してテレビを見ているアキラの頭の上でくつろいでいたインコが、いきなり全身で大笑いするアキラの動きに動揺するシーンとか、デザイン事務所での突然のトラブルにとっさに冷静に対処したアキラが、社長の勘違いについてサクッと返答するシーンとか、ヨウコとアキラの食卓でのおかずにまつわる会話、アキラが最悪にキワどい状況でもヨウコにごく平静に「問題ない」というシーンとか、どうってことない“間”がツボを突いてくるシーンが多々。オフビートの笑いがそこかしこにあり、ギョッとするようなトリッキーなアクションやドラマとして緊迫感のある展開のなかにもそれはあり、“緊張と弛緩”を繰り返すキレのある演出で長めの上映時間でも観客を飽きさせずに引きつける。
 そして主題歌はレディー・ガガとアリアナ・グランデのコラボレーションで、2021年のグラミー賞にて最優秀ポップ・デュオ/グループ・パフォーマンス賞を受賞したヒット曲「レイン・オン・ミー」。映画の本編シーンと華やかでパワフルなサウンドで魅せるミュージック・トレーラーは、映画の公式HP「NEWS」の主題歌決定の記事からも視聴できる。最後に、岡田准一が熱く語る本作への思い入れと、観客へのメッセージをお伝えする。「江口監督をはじめスタッフみんなでチャレンジ!を合言葉に一種の狂気を帯びた現場になったと思います。僕だけではなくカメラマンさんやスタッフも吊られ、これは行けるか? 無理か? など手探りで撮影したのも良い思い出です。現代物の日本のエンタメアクションの枠を広げる良い映像が撮れていると思います。原作ファンも映画ファンも期待してお待ちいただけると嬉しいです」

2021年6月4日更新

作品データ

公開 2021年6月18日より丸の内ピカデリーほかにて全国ロードショー
制作年/制作国 2021年 日本
上映時間 2:10
配給 松竹
監督 江口カン
原作 南勝久
主演・
ファイトコレオグラファー
岡田准一
出演 木村文乃
平手友梨奈
安藤政信
黒瀬純
好井まさお
橋本マナミ
宮川大輔
山本美月
佐藤二朗
井之脇海
安田顕
佐藤浩市
堤真一
:あつた美希
ライター:あつた美希/Miki Atsuta フリーライター、アロマコーディネーター、クレイセラピスト インストラクター/インタビュー記事、映画コメント、カルチャー全般のレビューなどを執筆。1996年から女性誌を中心に活動し、これまでに取材した人数は600人以上。近年は2015〜2018年に『25ans』にてカルチャーページを、2015〜2019年にフレグランスジャーナル社『アロマトピア』にて“シネマ・アロマ”を、2016〜2018年にプレジデント社『プレジデントウーマン』にてカルチャーページ「大人のスキマ時間」を連載。2018年よりハースト婦人画報社の季刊誌『リシェス』の“LIFESTYLE - NEWS”にてカルチャーを連載中。