eHills Club 試写会日記

毎週、映画ファンの皆さんへ熱いメッセージ! 傑作でもB級でも映画ってやっぱり素敵!!

007/ノー・タイム・トゥ・ダイ

ダニエル・クレイグがボンドを演じる最後の作品
科学者の誘拐をきっかけに大規模な犯罪が発覚し……
秘密や裏切り、信頼をテーマに恋人とのドラマも描く

007/ノー・タイム・トゥ・ダイ© 2021 DANJAQ, LLC AND MGM. ALL RIGHTS RESERVED.

ダニエル・クレイグがジェームズ・ボンドを演じる最後の作品であり、007シリーズ25作目の最新作。共演は、『ボヘミアン・ラプソディ』のオスカー俳優ラミ・マレック、『フレンチ・ディスパッチ ザ・リバティ、カンザス・イヴニング・サン別冊』のレア・セドゥ、舞台や映画などで活躍する『キャプテン・マーベル』のラシャーナ・リンチ、『リリーのすべて』のベン・ウィショー、『キングスマン: ファースト・エージェント』のレイフ・ファインズほか。監督は、『ビースト・オブ・ノー・ネーション』のキャリー・ジョージ・フクナガが手がける。00エージェントを退き、ジャマイカで静かに暮らすボンドは、CIAの旧友フィリックスが助けを求めてきたことからある任務を引き受けるが……。宿敵ブロフェルドや新たな強敵と対峙し、次世代の00エージェントやMI6のメンバーと共に活躍し、恋人マドレーヌとの関係を描く。華麗なアクションはもちろん、秘密、裏切り、信頼をテーマとするドラマとしても引きつけるエンターテインメント作品である。

ダニエル・クレイグ,アナ・デ・アルマス

00エージェントを退いたボンドは、ジャマイカで静かに暮らしていた。しかし町でCIAの旧友フィリックスと再会し助けを求められ、ボンドは誘拐された科学者を救出するという任務を引き受ける。目的地のキューバへ向かい現地でCIA局員と合流し、その科学者がいるという現場に潜入。そこで思いがけないことが起こり、凶悪な最新技術を備えた謎の黒幕を追うことになるが……。

もともとは2020年4月だった日本公開予定から、3度の延期を経てようやく公開となった注目作。愛する人を二度と危険にさらしたくないという思いにより、ボンドがMI6を辞職した前作『007 スペクター』のラストの直後から始まる。ダニエル・クレイグは2006年の『007/カジノ・ロワイヤル』から、2008年の『007/慰めの報酬』、2012年の『007 スカイフォール』、2015年の『007 スペクター』、そして本作『007/ノー・タイム・トゥ・ダイ』と5作でジェームズ・ボンドを演じ、今回が最後となる。ダニエルは最後のボンドを演じたこの映画のストーリーについて語る。「本作では、やり残したことをすべて片付けるためにも、入念に練り上げられたストーリーが必要だった。これまで紡いできたストーリーを上手くまとめ上げた、完結編にふさわしい内容になったと思っているよ」
 監督は、プロデューサーたちが以前より注目していた実力派として決定。ボンド映画を手がける初のアメリカ人監督となったこと、ダニエル版ボンドの最後の作品を手がけたことについて、フクナガ監督は2021年9月27日に行われたバーチャルイベントにてこのように語った。「“ダニエルボンド”の卒業作品を監督できたことは、とても光栄なことだと思っています。5作品を通じて紡がれてきた物語がこうやって完結するわけで、その5作を読書に例えると、『カジノ〜』から本作まで読み終わって、『ああ、いい本だったなあ』と、みなさんがしみじみ感じてくれればいいなと思っています」

ラシャーナ・リンチ,ダニエル・クレイグ

殺しのライセンスをもつMI6の超一流エージェント、ジェームズ・ボンド役はダニエル・クレイグが、人間として魅力のある人物として本作でも熱く表現。本作のストーリーとテーマについてダニエルは語る。「『やるからには思いきりやれ』という格言があるけど、それがこれほどピッタリくる作品は、シリーズを通してもないと思う。これまでの作品は、さまざまな人間関係と、その関係がボンドの人生の選択に与える影響に焦点を当てたものが多かったように思う。敵であれ仲間であれ、彼が他人とどう関わっていくのか。今作ではそのテーマに真っ向から挑むなかで、愛と信頼という二大テーマに重点を置いている。これ以上大きなテーマはないだろう」
 ダニエルが演じるジェームズ・ボンドの魅力について、フクナガ監督は語る。「ボンド映画に危険はつきもの。想像し得る最大の危機と恐怖を前に、颯爽と現れ、救ってくれるのがボンドだが、ダニエルはボンドを演じた4作品を通して、そうしたキャラクター像に新たな深みを加えてくれている。(恋人)ヴェスパー・リンドの死によって心に痛手を負った1作目以降、ダニエル演じるボンドは、立ち直れないダメージや人間としての脆さ、複雑な心情を内に秘めたまま、どうにかやってきた。だからこそ彼の下す選択は、機知に富んでいると同時に、欠点や弱みからくるものでもある。ダニエルボンドが辿る道筋は、実に興味深い」
 ボンドの恋人マドレーヌ・スワン役はレア・セドゥが、愛する人を守る気丈な女性として。ボンドの恋人が2作品続けて主要なストーリーとして描かれるのは、今回が初めてとも(亡き恋人ヴェスパー・リンドとの思い出以外で)。MI6の次世代00エージェント、ノーミ役はラシャーナ・リンチが、MI6のメカニック担当Q役はベン・ウィショーが、MI6の長官M役はレイフ・ファインズが、Mの秘書マネーペニー役はナオミ・ハリスが、ボンドの旧友であるCIA局員フィリックス・ライター役はジェフリー・ライトが、ボンドの宿敵ブロフェルド役はクリストフ・ヴァルツが、残忍な計画を進める凶悪な男サフィン役はラミ・マレックが、それぞれに演じている。
 短い出演ながら個人的に印象に残ったのは、キューバでボンドと合流する新米CIA局員パロマ役を演じた、キューバ出身の女優アナ・デ・アルマス。いわゆる“ボンドガール”だが、これまでのキャラクターとは異なりユーモラスでキュートなのだ。エージェントらしくない愛嬌や親しみやすい抜け感がありながらも、やるときはやる!というメリハリが効いている。緊張して合言葉を忘れながらも、パロマが明るく興奮気味に、「このために3週間トレーニングしたのよ!」とはりきって言い、ボンドの表情に新しいタイプの若手へのとまどいがよぎるところが可笑しい。王道ながら、長い手足で着こなすロングのスリット・ドレスで、高々と蹴り上げるハイキックがキマっている。乱闘の最中に2人でラムを飲み一息つく、別れ際のやりとりなど、ボンドと対等な関係性があるのがまた小気味いい。またボンドがQと再会するシーンは、げんなり感と嬉しさの入り混じるQの複雑なトホホ感をベン・ウィショーがいい塩梅で演じていて楽しい。パロマやQ、次世代00エージェントのノーミ関連にある、これまでにない柔軟なニュアンスの面白さは、長年ボンド映画を手がけてきたニール・パーヴィス&ロバート・ウェイドの脚本家コンビとプロデューサー陣が男性スタッフ中心だけではなく、新たに脚本家で女優のフィービー・ウォーラー=ブリッジを引き入れて、脚本を共に練り上げていったためかもしれない。

撮影は007シリーズの原作者である作家イアン・フレミングが居住したジャマイカをはじめ、各地にて。お約束のアクションも前半からバイクや車、銃撃戦など激しいシーンが展開する。あるシーンでは、いかにも日本風といった庭園や“禅”といった和テイストのインテリアや服装も。またこれまでのシリーズ同様に人気アーティストを起用した主題歌、ビリー・アイリッシュの「No Time To Die」は、第63回グラミー賞の映画、テレビ、その他映像部門にて最優秀楽曲賞を受賞した。

ダニエル・クレイグ,レア・セドゥ

完全無欠ではなく、時には判断を誤り失敗し煩悶しながらも生きる道を模索してきた“ダニエルボンド”。数年前からダニエル本人が、そろそろボンドを演じるのは最後と話していたことは伝わってきていたなか、“ダニエルボンド”最後の作品となった本作。名残を惜しまれるなか、前述のバーチャルイベントで「本当に最後ですか?」という質問に、ダニエルはこう答えた。「本当に最後です。いろんな甘酸っぱい思いもありますが、十分やり切ったという気持ちです。もちろん寂しさはありますが、また次のボンドに託したいと思います」
 6代目ジェームズ・ボンドにダニエル・クレイグが決定した当時は、地味すぎる、オーラがない、といったアンチの声がとても強かったなか、ダニエルボンドの第1作である『007/カジノ・ロワイヤル』の公開後、世界中から称賛されたことを思い出す。00エージェントになり、さまざまな任務に関わるなかで恋人ヴェスパーや信頼する上司M(ジュディ・デンチ)を亡くし、それでもまた恋人を本気で愛したボンド。女性キャラクターへの敬意は、ダニエル本人の資質なのだろう。ダニエル以前の007シリーズは時代劇を観ているような、定番キャラクターのお約束の世界観と予定調和の展開を楽しむといった見方をしていたが、ダニエルボンドのシリーズでは、本格アクションに加えて、ボンドの苦悩や愛といった心情を描くドラマとしても引き込まれた、という感覚は世界中の映画ファンの間でも多いのではないだろうか。
 そして2021年10月には、ダニエル・クレイグが「ハリウッド・ウォーク・オブ・フェイム」の星を獲得し、ハリウッドの殿堂入りをしたことがニュースに。映画007シリーズのボンド俳優としては3代目のロジャー・ムーア、5代目のピアース・ブロスナンに次ぐ3人目で、星型プレートはムーアの隣に設置されたそうだ(ボンドを演じた俳優としての殿堂入りが4人目か3人目か情報が混在しているが、ショーン・コネリーの前にドラマ『カジノ・ロワイヤル』でボンドを演じたバリー・ネルソンを数に入れるかどうかの問題だろう。ここでは映画007シリーズのボンド俳優として3人目と表記)。ダニエルは前述のイベントにて、一緒にシリーズを作り上げてきたスタッフやキャストを称え、ボンドを演じた15年への感謝の気持ちをこのように語った。「ジェームズ・ボンドは僕にとって、いろいろな意味合いをもちます。人生15年分のなかでも数え切れないくらいです。素晴らしい役を演じることができたことは、非常に恵まれていると思います。一番良かったのは、ここにいる人たちを含む素晴らしいベストな人たちと仕事ができたこと。それが何よりも嬉しいことだと思っています」

参考:「BBC

2021年10月11日更新

作品データ

公開 2021年10月1日よりTOHO シネマズ 日比谷ほかにて全国ロードショー
制作年/制作国 2021年 イギリス、アメリカ
上映時間 2:44
配給 東宝東和
原題 No Time To Die
監督・脚本 キャリー・ジョージ・フクナガ
脚本 ニール・パーヴィス
ロバート・ウェイド
スコット・バーンズ
フィービー・ウォーラー=ブリッジ
出演 ダニエル・クレイグ
レイフ・ファインズ
ナオミ・ハリス
レア・セドゥ
ベン・ウィショー
ジェフリー・ライト
アナ・デ・アルマス
ラシャーナ・リンチ
ラミ・マレック
:あつた美希
ライター:あつた美希/Miki Atsuta フリーライター、アロマコーディネーター、クレイセラピスト インストラクター/インタビュー記事、映画コメント、カルチャー全般のレビューなどを執筆。1996年から女性誌を中心に活動し、これまでに取材した人数は600人以上。近年は2015〜2018年に『25ans』にてカルチャーページを、2015〜2019年にフレグランスジャーナル社『アロマトピア』にて“シネマ・アロマ”を、2016〜2018年にプレジデント社『プレジデントウーマン』にてカルチャーページ「大人のスキマ時間」を連載。2018年よりハースト婦人画報社の季刊誌『リシェス』の“LIFESTYLE - NEWS”にてカルチャーを連載中。