eHills Club 試写会日記

毎週、映画ファンの皆さんへ熱いメッセージ! 傑作でもB級でも映画ってやっぱり素敵!!

ミラベルと魔法だらけの家

魔法一族の危機を15歳の普通の女の子が救う!?
コロンビアの音楽や色彩を鮮やかに取り入れた
ディズニー・アニメ60作目のオリジナル・ミュージカル

ミラベルと魔法だらけの家©2021 Disney. All Rights Reserved.

第89回アカデミー賞にて長編アニメーション賞を受賞した『ズートピア』のバイロン・ハワードとジャレド・ブッシュが再タッグを組んだディズニー・アニメーションの最新作。オリジナル・ミュージカルの楽曲は『モアナと伝説の海』を担当し、ブロードウェイミュージカル「イン・ザ・ハイツ」や、脚本・作詞・作曲・主演を務めたミュージカル「ハミルトン」でトニー賞やグラミー賞など数々の賞を受賞したリン=マニュエル・ミランダが手がける。魔法のギフト(才能)をもつマドリガル一家は、南米コロンビアの山奥の町で暮らしている。一族のなかで1人だけ魔法を授からなかった15歳の少女ミラベルは、魔法の家に亀裂が入っていることに気づくが……。町の人たちと仲良く暮らすマドリガルの大家族と、魔法をもつ一族でありながら何の力ももたない少女の奮闘を描く。陽気なラテン系のリズムとサウンドにのせて、プレッシャーやコンプレックスなど内面の悩みや、家族の不和と和解について、ミラベルと家族たちが向き合っていくさまを映す。ファッションや色彩、音楽やダンスのステップなどコロンビアの文化を詳しく調べて反映し、あたたかく力強いラテンの雰囲気をたっぷりと楽しめるファンタジー作品である。

コロンビアの山奥にある町エンカント。マドリガル一家は魔法の力に包まれた不思議な家で暮らしている。家族全員が家から与えられた魔法のギフト(才能)をもち、町の人たちの暮らしをサポートして慕われている。しかし一家のなかで、15歳の少女ミラベルだけは何の魔法も使えない。マドリガル家の子どもたちは、5歳の誕生日にそれぞれ“魔法のギフト”を家から与えられるが、ミラベルだけは何も授けられなかったのだ。それでも家族や人々のためにできることをして明るくひたむきに過ごすミラベルはある日、家に大きな亀裂があることに気づく。それは世界から魔法の力が失われていく前兆だった。ミラベルは愛する家と家族、町のみんなを守りたい一心で、家族が口を閉ざす秘密について調べるが……。

ミラベルと魔法だらけの家

南米コロンビアの架空の街を舞台に、家族をテーマに描くディズニー・アニメーションであり、陽気なファンタジー・ミュージカル。劇中の歌の歌詞には、魔法のギフトをもつ家族たちにコンプレックスを抱く三女のヒロイン、日々のプレッシャーに疲弊する次女、理想的にふるまうのではなく自由に生きたいという願望をもつ長女など、明るく楽しいだけじゃない、普遍的な家族の問題をストレートに表現しているところが特徴だ。ハワード監督は大家族を描こうと決めた理由について語る。「2人ほどのキャラクターではなく、親族たちも含む大家族のストーリーを語れたら素晴らしく面白いのではないかと私たちは考えました。大家族の複雑な人間関係を祝福し、それが本当の意味でどのように機能するものなのかを理解したいと思ったんです。私たちは自分の家族のことをどれほど知っているのでしょう? 彼らは私たちのことをどれほど知っているのでしょう?」

声の出演にはコロンビア系をはじめ南米に関わるメンバーが多く参加。マドリガル一家のなかで唯一魔法をもたない15歳の少女ミラベルの声は、ステファニー・ベアトリスが、マドリガル家の女家長でミラベルの祖母アブエラことアルマの声は、マリア・セシリア・ボテーロが、食事によって人々を癒すミラベルたちの母フリエッタの声はアンジー・セペダが、不器用でケガをよくするミラベルたちの父アグスティンの声はウィルマー・バルデラマが、植物を成長させ、花を自在に咲かせるミラベルの長姉イザベラの声はダイアン・ゲレロが、ものすごく力持ちで働き者であるミラベルの次姉ルイーサの声はジェシカ・ダロウが、感情で天気をコントロールするミラベルの叔母ぺパの声はカロリーナ・ガイタンが、ペパを愛する陽気な夫でミラベルの叔父フェリックスの声はコロンビアの人気シンガー、マウロ・カスティージョが、ペパとフェリックスの娘で、どんなに小さな声でも聞こえる驚異の聴力をもつミラベルの従妹ドロレスの声はアフロ=ラティーナのシンガーで女優のアダッサが、ドロレスの弟で誰にでも変身できるカミーロの声はレンジー・フェリズが、ペパとフェリックスの末っ子で動物とコミュニケーションが取れるシャイな少年アントニオの声はラヴィ・キャボット=コニャーズが、未来を予見するミラベルのミステリアスな叔父ブルーノの声はジョン・レグイザモが担当している。
 日本語吹き替え版の声の出演は、ディズニーのUS本社のオーディションを経て決まった実力派の新人女優・斎藤瑠希、ミュージカルなど舞台を中心に活躍する平野綾、3時のヒロイン・ゆめっち、そして歌手・女優の中尾ミエ、声優の中井和哉、冬馬由美、関智一、俳優の勝矢、藤田朋子ほかが参加している。
 監督・脚本のジャレッド・ブッシュは、ミラベルのキャラクターについて語る。「ミラベルは私たち全員の代表です。彼女は、並外れたマジカルな人々ばかりの家族のなかにいる、ごく普通のメンバーです。自分の周りはスーパースターばかりだと感じたことがある人はたくさんいるでしょう……自分のことが小さく見えて、インポスター症候群に陥ってしまう。自分がどういう人間かとか、自分がどんなことをやり遂げたかということには目が行かず、自分よりも大きなことや良いことをやっている人物にばかり目が行ってしまう。そんな誰もが共感できるキャラクターがミラベルです」
 共同監督で脚本家のシャリース・カストロ・スミスは、ミラベルの心情について語る。「ミラベルは、頼まれたことは何でもやります。自分に魔法の能力がないことへの埋め合わせをしなければ、と感じているのです。この家族の人間関係だって平気だと彼女はいつも自分に言い聞かせている。でも心の奥底では、ぜんぜん平気なんかではありません。彼女は変えたいのです。この物語における彼女の心の旅は、自分に本来備わっている価値を認識し、この家族における自分の居場所を見つけ出すものなのです」
 そしてブッシュはこの映画のストーリーについて、「自分が誰よりも注目されていないと感じている家族の1人が、家族の全員に、そして自分自身にしっかりと目を向けることを学ぶ姿を描いたお話です」とコメントしている。

ミラベルと魔法だらけの家

一家の住む町の名前であり、この作品の原題である「Encanto」という言葉について、共同監督で脚本家のシャリース・カストロ・スミスは語る。「エンカントは、マジカルな出来事や並外れた出来事が起こるような、魔法や高められたスピリチュアルな場所という意味でも使われることがある言葉です」
 劇中では、カラフルで鮮やかな色彩や衣装、緑豊かな自然など、映像から生き生きとしたコロンビアの土地の雰囲気や民族性が伝わってくるのが興味深く、作品の魅力となっている。製作スタッフたちがコロンビアならではの文化や地域性を適切に描きたいと強く思い、さまざまな準備とリサーチを行ったことについて、製作のイヴェット・メリノは語る。「私たちはコロンビアの文化、人類学、衣装デザイン、植物学、音楽、言語、建築などなどの専門家たちを探し求め、彼らと何時間にもわたって、土着の植物から、当時のその地方における建物の建て方に至るまで、ありとあらゆる話を聞きました。トウモロコシの正しい焼き方から、日常生活の細々したディテールに至るまで、この映画で描かれる大小さまざまなディテールについて、その知識を貸してくれる専門家たちのグループ、コロンビアン・カルチュアル・トラストを作りました」
 その専門家として、ドキュメンタリー・フィルムの制作者でありコロンビア人であるホアン・レンドンとナタリー・オズマも参加。2人は製作スタッフたちがコロンビアに向かうリサーチ旅行に同行し、さまざまな地域を一緒に回り、コンサルタントとなるたくさんの人たちを紹介したそうだ。またウォルト・ディズニー・アニメーション・スタジオ内でも、ラテン系のディズニー社員によるグループ「ファミリア」のメンバーたちが私的な考えや経験を共有し、映画の企画に協力したとも。

この作品ではラテン系のサウンドが大きな魅力となっている。なかでも『モアナと伝説の海』の「どこまでも 〜How Far I'll Go〜」を手がけたリン=マニュエル・ミランダが書き下ろした8曲のミュージカル・ナンバーは注目だ。ミランダが家族を明るく紹介する1曲目「Family Madrigal」、魔法をもたないミランダが奇跡に思いをはせる「Waiting on a Miracle」、長姉イザベラが胸に秘めた自由への思いを歌う「What Else Can I Do」、謎の存在ミラベルの叔父ブルーノについて歌う「We Don’t Talk About Bruno」などなど。なかでも特に、ミランダの次姉ルイーザが期待に応え続けなければならない重圧への本音をストレートに歌う「Surface/Pressure」や、クライマックスで流れる「All of You」、コロンビア出身の世界的なシンガーソングライター、カルロス・ビベスが深みのあるあたたかな声で歌い上げるエンドソング「Colombia, Mi Encanto」は個人的に響くものがあった。日本語吹き替え版を観てラテンのサウンドに興味をもったなら、字幕版でスペイン語や英語によるオリジナルの歌を楽しむのもおすすめだ。
 ミランダはリサーチ旅行や企画の段階から参加し、監督たちと一緒にストーリーを練り上げていったとのこと。こうした進め方はディズニーでは珍しいそうで、楽曲制作と脚本の執筆が相互に影響し合いながら物語をつくり上げていったことについて、監督・脚本のカストロ・スミスは2021年9月13日にZoomで行われたQ&Aにて、「今作では音楽と脚本のすばらしいコラボレーションがあったのよ」とコメント。また同Q&Aにて、監督・脚本のブッシュは本作の楽曲の魅力について、このように語った。「この映画には8つの曲がある。そこにはとても違ったジャンルの曲、違ったリズムやサウンドが混じっている。初期の段階から、リンは今作の舞台がコロンビアであることを喜んでいた。コロンビアには違ったタイプの音楽がたくさんあるからだ。今作には、レゲエにインスピレーションを得たような、今ラジオで聴けるような曲もあるし、100年前のフォークソングみたいな曲もある。それら全部を観客に聴いてもらえることに興奮しているよ。すごく幅広いから、みんなきっと驚くと思う」
 そしてミランダは、今回の音楽制作を心から楽しんだと語る。「リズム自体はその多くが私にも馴染みのあるものでしたが、楽器編成やオーケストレーションは異なるもので、コロンビア特有のものが多くありました。なかでも特に楽しかったのは、アコーディオンが音楽の中心に据えられていることです。また、この映画で幸運にも一緒に仕事をすることができたカルロス・ビベスなど、私が子どものころに大好きだったサウンドをより深く掘り下げていけたことは、本当に楽しかったですよ。私はこのプロセス全体を通して、コロンビアの音楽や文化に恋に落ち、その空間でプレイしていったのです」

ミラベルと魔法だらけの家

ディズニー長編アニメーション60作目であり、『モアナと伝説の海』以来、新作としては4年ぶりとなるオリジナル・ミュージカルである本作。前述のZoomのQ&Aにて、60作目である本作が継いでいるディズニーの精神について、プロデューサーのクラーク・スペンサーはこのように語った。「このスタジオの基盤はミュージカルにある。僕らはそれを21世紀らしい形でやったんだよ。リン・マニュエル=ミランダに参加してもらい、これまでと違うタイプの音楽を通じてストーリーを語った。それに、今作のキャラクターは複雑で、みんな奥が深くてニュアンスがある。僕らは、1937年に始まったことを、今日のアニメーションで可能なレベルへともっていく。ここにいる人たち(本作の製作スタッフ)によるディテールの豊かさを見てくれればわかるだろう。それは、このスタジオの進化を反映している。もっとも、このスタジオのハートにあるのはいつだってミュージカルであり、優れた物語であり、愛すべきキャラクターだ。それらのキャラクターと一緒に笑ったり、感動したりするんだ」
 また2021年11月3日(現地時間)にロサンゼルスで行われたワールドプレミアでは、製作のメリノが映画のちょっとした注目ポイントを伝えた。「アニメーターたちが、映画のあちらこちらに小さなミッキーを隠しているから、ぜひ見つけてほしいわ」
 最後に、本作の監督を務めたバイロン・ハワード、ジャレド・ブッシュ、シャリース・カストロ・スミスの連名による、観客へのメッセージをお伝えする。「誰もがマドリガル家のように“特別な才能(魔法のギフト)”をもっているわけではありません。だからこそ、ミラベルのように特別な才能がなくても自分にできることをみつけることで、あなたの家族や大切な人たち、そしてあなた自身が既にもっている“特別ななにか”に気づいてもらえたら嬉しく思います」

2021年11月19日更新

作品データ

公開 2021年11月26日よりTOHOシネマズ日比谷ほかにて全国ロードショー
制作年/制作国 2021年 アメリカ
上映時間 1:49
配給 ウォルト・ディズニー・ジャパン
原題 Encanto
監督 バイロン・ハワード
ジャレド・ブッシュ
共同監督 シャリース・カストロ・スミス
脚本 ジャレド・ブッシュ
シャリース・カストロ・スミス
製作 イヴェット・メリノ、クラーク・スペンサー
音楽 リン=マニュエル・ミランダ
声の出演 ステファニー・ベアトリス
マリア・セシリア・ボテーロ
アンジー・セペダ
ウィルマー・バルデラマ
ダイアン・ゲレロ
ジェシカ・ダロウ
カロリーナ・ガイタン
マウロ・カスティージョ
アダッサ
レンジー・フェリズ
ラヴィ・キャボット=コニャーズ
ジョン・レグイザモ
日本語吹き替え版の
声の出演
斎藤瑠希
ゆめっち(3時のヒロイン)
平野綾
:あつた美希
ライター:あつた美希/Miki Atsuta フリーライター、アロマコーディネーター、クレイセラピスト インストラクター/インタビュー記事、映画コメント、カルチャー全般のレビューなどを執筆。1996年から女性誌を中心に活動し、これまでに取材した人数は600人以上。近年は2015〜2018年に『25ans』にてカルチャーページを、2015〜2019年にフレグランスジャーナル社『アロマトピア』にて“シネマ・アロマ”を、2016〜2018年にプレジデント社『プレジデントウーマン』にてカルチャーページ「大人のスキマ時間」を連載。2018年よりハースト婦人画報社の季刊誌『リシェス』の“LIFESTYLE - NEWS”にてカルチャーを連載中。