eHills Club 試写会日記

毎週、映画ファンの皆さんへ熱いメッセージ! 傑作でもB級でも映画ってやっぱり素敵!!

キングスマン:ファースト・エージェント

英国紳士で最強のスパイ“キングスマン”の始まりとは?
第一次世界大戦を推進する闇の組織に立ち向かう
イギリス貴族の父子と仲間たちを描くアクション大作

キングスマン:ファースト・エージェント© 2021 20th Century Studios All Rights Reserved.

英国紳士にして最強のスパイ組織“キングスマン”の始まりを描く人気シリーズ第3弾。出演は、オスカー俳優である『007/ノー・タイム・トゥ・ダイ』のレイフ・ファインズ、『マレフィセント2』のハリス・ディキンソン、『アリス・イン・ワンダーランド/時間の旅』のリス・エヴァンス、『キャプテン・マーベル』のジャイモン・フンスー、『007/慰めの報酬』のジェマ・アータートン、『ボヘミアン・ラプソディ』のトム・ホランダーほか。監督はシリーズ全作の監督・脚本・製作を手がけるマシュー・ヴォーンが務める。1914年、世界大戦を密かに操る闇の組織に、英国名門貴族のオックスフォード公と息子コンラッド、父子の仲間たちは立ち向かうが……。実際に起きた事件や史実を交え、ラスプーチンやマタ・ハリなどオリジナルの個性を加えた歴史上の人物たちも登場。戦争を止めるべく奔走する有志たちの姿、世界最強のスパイ組織“キングスマン”の始まりを描く、アクション大作である。

1914年。貴族社会の打倒を目指す闇の組織は、世界大戦を引き起こそうと、ヨーロッパ各国へ刺客を送り込む。ロシア皇帝本人からその家族までをも巧みに掌握する怪僧ラスプーチン、要人の命を狙う暗殺犯プリンツィプ、二重スパイの高級娼婦マタ・ハリといった面々の手に落ちた国により世界大戦が勃発。平和主義であるイギリスの名門貴族オックスフォード公は独自の諜報網から、ドイツやロシアの不穏な動きを察知。闇の組織の企みを阻止すべく、仲間と共に立ち上がる。一方、オックスフォード公の息子コンラッドは正義感の強さから、兵士として世界大戦に赴くことを志望。戦争に参加することだけが正義ではないと信じるオックスフォード公は息子を諭して戦地から遠ざけ、やがて自らが率いる極秘の諜報活動へコンラッドを引き入れる。そして世界大戦を止めるべく、父子と仲間たちは奔走するが……。

レイフ・ファインズ,ほか

エレガントな英国紳士にして最強の諜報員であるメンバーによるスパイ組織“キングスマン”の始まりを描くシリーズ最新作。ストーリーの軸にさまざまな史実が盛り込まれ、実在の人物たちもキャラクターとして登場しているのが特徴だ。1914年6月にオーストリア・ハンガリー帝国の皇位継承者フランツ・フェルディナント大公と、その妻ホーエンベルグ公爵夫人ゾフィーの暗殺、その事件により世界大戦が始まったこと、1917年2月にドイツの高官アルトゥール・ツィンメルマンから在メキシコ独大使へ送られた暗号電報を、英国の諜報機関が傍受し解読、その事実を知ったことで1917年4月にアメリカがドイツに宣戦を布告したこと。戦争が始まり、各国が世界大戦へと向かう大きなうねりのなか、英国貴族の父子と仲間たちが戦争の拡大を推進する闇の組織に立ち向かう、というストーリーになっている。ヴォーン監督と脚本を共同執筆したカール・ガイダシェクは、史実をベースにキングスマンの活動を描いたことについて語る。「年代も出来事も正確だし、歴史上で起きたすべてのことを尊重した。その上で、史実の裏側の誰も見ていないところでは、こんなことが起きていたかもしれないという発想を駆使して書き上げた」
 ヴォーン監督は、第一次世界大戦時の危機には現代に通じるところがあり、その危機によりキングスマンが始まったと語る。「子どもたちには、狂った人間が世界を支配してしまうと、物事があっという間にコントロールできなくなるということを知ってもらいたい。今の政治状況は、第一次世界大戦前に非常によく似ている。当時は誰も戦争が起こるとは思っていなかったし、なぜ起こったのかも理解できなかった。第一次世界大戦はまったく狂気の沙汰であり、それが原因でキングスマンが設立されたんだ」

平和を愛するイギリス名門貴族オーランド・オックスフォード役はレイフ・ファインズが、愛情深い父親であり、諜報活動によりスパイ組織キングスマンの礎を築く人物として。平和主義でありながら戦いに関わる、息子を守りたいけれど縛り付けることはできない、といった葛藤、1人息子と大切に思い合いながらもすれ違う心情などを表現している。オーランド公の思想と言葉は、1作目でコリン・ファースが演じたハリー・ハートと通じているとレイフ・ファインズは語る。「キングスマンとはどうあるべきか。人命を守り、持続させることが使命。キングスマンは、一国家が運営する諜報機関の役所仕事から切り離された、どの国家にも属さないスパイ機関だ。それは、平和と人類愛という原則を大切に持ち続けるためであり、彼らの存在理由でもある。悪や不正と闘うために存在する、アーサー王伝説の騎士と同じイメージだ」
 その息子コンラッド役はハリス・ディキンソンが正義感と愛国心にあふれる好青年として。武術に長けていても箱入りで、それゆえに突っ走ってしまうところなど未熟でも憎めない人柄、父を慕い大切に思い合いながらもすれ違う心情を、素直に表現している。オックスフォード家に仕える使用人でコンラッドの世話役ポリー役はジェマ・アータートンが、オックスフォード家の執事ショーラ役はジャイモン・フンスーが、ロシア皇帝とその家族を操る怪僧グリゴリー・ラスプーチン役はリス・エヴァンスが、いとこ同士であるイギリス国王ジョージ5世、ロシア帝国最後の皇帝ニコライ2世、最後のドイツ皇帝ヴィルヘルム2世はトム・ホランダーが1人3役で、英国陸軍元帥キッチナー役はチャールズ・ダンスが、キッチナーの右腕である軍人モートン役はマシュー・グードが、ドイツ皇帝に取り入り参謀となる詐欺師エリック役はダニエル・ブリュールが、高級娼婦でドイツとフランスの二重スパイ、マタ・ハリ役はヴァレリー・バフナーが、暗殺の実行犯ガヴリロ・プリンツィプ役はジョエル・バズマンが、ロシア屈指の名門貴族でコンラッドの従兄弟フェリックス・ユスポフ役はアーロン・ヴォドヴォスが、それぞれに演じている。

リス・エヴァンス,ほか

劇中では、実在の人物たちが多数登場する。ラスプーチンに傾倒したドイツ皇帝の妻アレクサンドラ皇后、ニコライ2世の姪と結婚した大富豪のロシア人貴族フェリックス・ユスポフ、現在の英国女王エリザベス2世の祖父である英国王ジョージ5世、彼のいとこであるロシア皇帝ニコライ2世とドイツ皇帝ヴィルヘルム2世、第28代アメリカ合衆国大統領ウッドロウ・ウィルソンなどなど。また敵対する組織のメンバーの多くが、アクション能力などの設定を加えた実在する人物となっているのもユニークだ。また、トム・ホランダーがいとこ同士の王族3人を1人3役で演じることになったきっかけは、ヴォーン監督がジョージ5世とニコライ2世の写真を見て、実際に見分けがつかないほどよく似ていたと知ったからとのこと。当時のヨーロッパの王族はみんな親戚関係にあったという事実について、トムは「だからこそ、戦争になるんだ。同盟したり、ライバル意識を燃やしたりするからね」とコメント。そして実在の人物が登場する本作のストーリーについてトムは語る。「歴史上の多くの人物によって作り出された悪の枢軸から、危機が発生する。彼らは現実では必ずしも関係があるわけではないが、この物語のなかではつながっている。マタ・ハリ、ラスプーチン、エリック・ヤン・ハヌッセンの3人は互いを知っていて、架空の人物による悪の組織に加担しているんだ」

このシリーズでは、オーダーメイドのスーツや衣装も特徴のひとつ。衣装デザイナーのミシェル・クラプトンは、正確な時代考証や各国の軍服を確認し、現代的なアレンジを取り入れたとのこと。彼女は「レイフ演じるオックスフォードは、伝統的で時代を感じる衣装にしたわ。ハリス演じるコンラッドの衣装は、もう少し時代の先取りをしていて、若者向けの側面がある」とコメント。クラプトンはコンラッドのスーツについて、「モダンな感じにするために、パンツは細くハイウエスト。ジャケットは通常の3つボタンで、カットアウェイになっている。現代的なテーラーで作った」とも。実際に着用したハリスはこのように絶賛している。「最終的に8着ものスーツを用意してくれて、すべて僕の体にぴったり合っていたんだ。堂々とした雰囲気を醸し出しながら、簡単に体を動かせるのでリラックスもできるスーツだった。ちゃんと当時の時代に合わせながら、本当に見事に作られていた」
 また本物のラスプーチンが着用していたものに似たロングコートやロシアンブーツをはじめ、たくさんの毛皮や仕立ての良い神父服のような独特の衣装を、188cmの長身で着こなしたリスは、こうしたスタイルの面白さについて語る。「円すい形のドレスもあったね。これが映像になると絶妙で、特に戦いのシーンでは、イスラム神秘主義の修道僧のスカートのように動く。拳や脚を舞い上げ、唾を飛ばしながらスカートを広げて、天気予報の気象図の渦のように部屋のなかを動き回るんだ。この衣装を着ていると、自分の周りに普段よりも空間があるように感じられた」

ハリス・ディキンソン,レイフ・ファインズ

今回は100年以上前が舞台であることから、アクションはこれまでの近未来的なガジェット満載のものとは異なっている。ドイツ兵とイギリス兵が戦う塹壕のシーンでは、長さ約300メートルの塹壕を実際につくり、CGは一切使わず、無人地帯を駆け抜ける危険なシーンもハリス本人が行った。ヴォーンはこのシーンへの思い入れを語る。「第一次世界大戦の恐ろしさと無意味さを表現することや、その実態に近づくことは非常に難しい。僕はそのことをドキュメンタリーのようにならないようにしながらも、リアルに見せたいと思った。そして、あらゆる立場の兵士たちに敬意を払って表現することに最善を尽くした。あの戦争は紛れもなく狂気の沙汰だったからね。その狂気を、コンラッドというキャラクターを通して表現したかった」
 劇中で最も華やかなアクションは、コサック・ダンスの型を生かした“コサック・アクション”だろう。それはリズミカルでややコミカルながら相手に深刻なダメージを与えるという、ラスプーチンの実戦スタイルだ。この動きはロシアのプロのダンサーたちとスタントチームの責任者が共同で生み出したとのこと。裾の舞う円錐形の衣装を着て技を繰り出す激しいファイト・シーンについて、リスは語る。「マシュー(監督)と並外れたスタントチームは何ヶ月もかけて、柔道、柔術、空手を融合させた格闘技を考案し、さらにその格闘技とロシアンダンスを融合させた。それは比類ないものだった。ラスプーチンは、相手を音楽によるめまいの感覚に陥れる。彼が相手と一緒に回転して踊ることで、穏やかなダンスに見えていたものが突然、とても恐ろしいことに変わる。一撃を放って相手を殺してしまうんだ」
 また映像としては、年代物の長焦点レンズで撮影し、昔ながらの映画作りに回帰したとのこと。ヴォーンは、「見るのも撮るのも、そしてこの映画の一員になるのもうれしかった。僕は『基本に立ち返る』と言って、自分が見て育ってきた映画のような、昔ながらの大作映画を作ることを大いに楽しんだ」とコメント。そして2021年12月6日(現地時間)にロンドンで行われたワールドプレミアにて、監督は映像へのこだわりをこのように語った。「『アラビアのロレンス』(1962)で使われたのとまさしく同じレンズで撮影したんだ。壊れてばかりなので、造り直したけどね。ワイドスクリーンで見て、スクリーンに没入してもらえるように撮影した。劇場に行って見てもらうことに、本当に価値がある、間違いなくね」

シリーズ3作目という区切りである本作。ヴォーン監督は「『キングスマン』の時代は、まだ始まったばかり」と語り、4作目以降につながるかどうかは本作が興業として成功するか次第で、監督はぜひシリーズ製作を続けていきたい、とのこと。レイフ・ファインズは本作の魅力について語る。「観客はまず、スケールの大きさに驚くと思う。さらに、歴史上のひとつの時代と、そこに生きる人々を、どれだけリスペクトしているかという点に感銘を受けるだろう。そして、第一次世界大戦の恐怖と悲劇から、『キングスマン』らしい生きる喜びや、ユーモアを添えたアクションアドベンチャーへと、マシューが自ら敢えて挑んだトーンの変化に胸を躍らせるはずだ。でも、そこにもちゃんと重みがある。とても人間味のあるストーリーに、重点が置かれているんだ」
 そしてヴォーン監督は、観客へのメッセージとしてこのように語った。「笑って泣いて、想像を超える旅へと連れて行ってくれる、壮大な冒険映画が完成した。『キングスマン』シリーズのファンは、本作を通してファンでいる理由を確認することになるだろう。そして、ファンでない人には、本作でファンになってもらえるとうれしいね」

2021年12月17日更新

作品データ

公開 2021年12月24日よりTOHOシネマズ日比谷ほか映画館だけで全国公開
制作年/制作国 2021年 イギリス・アメリカ
上映時間 2:11
配給 ウォルト・ディズニー・ジャパン
原題 THE KING’S MAN
監督・原案・脚本・製作 マシュー・ヴォーン
脚本 カール・ガイダシェク
出演・製作総指揮 レイフ・ファインズ
出演 ジェマ・アータートン
リス・エヴァンス
マシュー・グード
トム・ホランダー
ハリス・ディキンソン
ダニエル・ブリュール
ジャイモン・フンスー
チャールズ・ダンス
:あつた美希
ライター:あつた美希/Miki Atsuta フリーライター、アロマコーディネーター、クレイセラピスト インストラクター/インタビュー記事、映画コメント、カルチャー全般のレビューなどを執筆。1996年から女性誌を中心に活動し、これまでに取材した人数は600人以上。近年は2015〜2018年に『25ans』にてカルチャーページを、2015〜2019年にフレグランスジャーナル社『アロマトピア』にて“シネマ・アロマ”を、2016〜2018年にプレジデント社『プレジデントウーマン』にてカルチャーページ「大人のスキマ時間」を連載。2018年よりハースト婦人画報社の季刊誌『リシェス』の“LIFESTYLE - NEWS”にてカルチャーを連載中。