eHills Club 試写会日記

毎週、映画ファンの皆さんへ熱いメッセージ! 傑作でもB級でも映画ってやっぱり素敵!!

ホリック xxx HOLiC

CLAMPの人気コミックを蜷川実花が実写映画化
“アヤカシ”が視える高校生がとある女主人と出会い……
極彩色のビジュアルが織りなすダークなファンタジー

ホリック xxx HOLiC©2022映画「ホリック」製作委員会 ©CLAMP・ShigatsuTsuitachi CO.,LTD./講談社

累計売上1400万部を超えるCLAMPの人気コミックを蜷川実花監督が実写映画化。出演は、『ノイズ』の神木隆之介、女優・シンガー・実業家として活躍する柴咲コウ、『ライアー×ライアー』の松村北斗(SixTONES)、『Diner ダイナー』の玉城ティナ、『ハケンアニメ!』の吉岡里帆、『東京リベンジャーズ』の磯村勇斗ほか。脚本は『センセイ君主』の吉田恵里香、音楽は『ミッドナイトスワン』の渋谷慶一郎が手がける。“アヤカシ”が視えてしまう孤独な高校生・四月一日(ワタヌキ)はある日、不思議な「ミセ」にたどり着き、謎めいた女主人と出会うが……。孤独な少年の迷いと選択、決断と成長、人との出会いにより変化してゆく関係性、少年少女たちの友情、異界のものたちによる怪しげな出来事を描く。作り込まれた美術セットや衣装、そしてサウンドや音響、蜷川実花の演出による極彩色の耽美的なビジュアルが織りなす、ダークなファンタジー作品である。

人の心の闇に寄り憑く“アヤカシ”が視えてしまう孤独な高校生・四月一日(ワタヌキ)は、その能力を消し去り普通の生活を送りたいと願っている。ある日、一羽の蝶に導かれた四月一日は、不思議な「ミセ」にたどり着く。その女主人・侑子(ユウコ)は四月一日に、対価と引き換えに人の願いを何でも叶えると話し、願いを叶えたければ“一番大切なもの”を差し出すように促す。自分にとって大切なものがわからない四月一日は、侑子のもとで暮らしミセを手伝うようになる。やがて寺の息子である百目鬼(ドウメキ)や美少女のひまわりといった同級生とも親しくなるなか、四月一日は厄介な事件に巻き込まれ……。

DAOKO,モトーラ世理奈,柴咲コウ,神木隆之介

蜷川監督が人気俳優を迎え、作り込んだビジュアルやサウンドでベストセラーのコミックを実写映画化した本作。原作のコミック『xxxHOLiC』は、これまでに小説化、アニメ化、実写ドラマ化、舞台化となされてきたなか、初の実写映画化ということも話題となっている。ややレトロな現実世界と幻想的な異界を行き来する原作の世界観が、蜷川監督の感性と演出によって実体化しスクリーンに広がる、味わいのある映像となっている。原作の持ち味であるコメディの面は前半に少しあるのみのシリアスな内容で、俳優たちが各キャラクターに合っているのも特徴だ。監督は約10年前に原作コミックを知り、「その面白さはもちろん、最初に感じた画の美しさ、圧倒的なビジュアルの美しさ、包容力と厳しさの両方があるところにハマりました」とコメント。また映画化したいと思った理由、作品のテーマと映画に込めた思いについて、このように語っている。「この作品のテーマが自分の考えに近いこともあります。それは、対価が必要であるということ。何かを欲したら対価が必要である、それって真実だと思うんです。でも、私たちは、欲しがることや与えられることが当たり前になっている。現実は、ありとあらゆることがリスクと共にあって、何でも叶う楽園は世の中にはないのだよ、ということから目を背けてはいけない。それをきっちりと伝える楽しい映画にしたいと思いました。私には息子がいるので、母親として息子たちに、これから世界に出る人たちに向けて伝えたいことをメッセージとして込めたつもりです」

“アヤカシ”が視える孤独な高校生・四月一日君尋役は神木隆之介が、迷い悩みながらも自分なりの答えをつかんでいく姿を好演。神木は2022年4月14日に東京の神田明神で行われた大ヒット祈願イベントにて、ストーリーについてこのように語った。「蜷川実花監督ならではの唯一無二のビジュアル世界で描いている作品だけれど、すごく温かいヒューマン映画でもあります。自己肯定感を高めさせてくれるので、僕自身も元気をもらえた気がしました」。不思議なミセの妖しく美しい女主人・壱原侑子役は柴咲コウが、妖しく美しい存在感で表現。柴咲は物語のテーマ性を演技に込めたと語る。「圧倒的なビジュアルの奥には、人の業について考えさせられる素晴らしいセリフがたくさんあります。願いを叶えるために対価が必要であることや、この世に偶然なんてなくてすべてが必然であること。責任重大な選択を毎日、毎秒、みんながしている、そんなことを考えながら演じました」
 四月一日の同級生で、寺の息子であり弓の名手である百目鬼静役は松村北斗が、同じく同級生の謎を秘めた美少女・九軒ひまわり役は玉城ティナが、四月一日に目をつける女郎蜘蛛役は吉岡里帆が、映画のオリジナルキャラクターでヒトでありながら女郎蜘蛛を崇拝するしもべのアカグモ役に磯村勇斗が、ミセで侑子と一緒に暮らす謎の少女・マルダシ役は米津玄師とのコラボ曲「打上花火」で知られる映画初出演のDAOKOが、同じくミセで暮らす少女・モロダシ役はモデルで女優のモトーラ世理奈が、それぞれに演じている。またミセに訪れる客として、猫娘役の西野七瀬、座敷童役の橋本愛、人間の客として趣里、大原櫻子、てんちむが出演している。蜷川監督はキャストやスタッフへの感謝と共に、この映画製作で得た気づきについて語る。「今回、個人的に嬉しかったのは、わりと初めましてに近いキャストのみなさんとタッグを組んで創り上げたこと。これまでは父の存在も大きくて、自分の力で関係を築けているのか不安だったけれど、今回の撮影で、本当にチームが育っていたんだなと、いい関係が築けていたんだなと、自信が持てました。この言葉を使うのは一生に一度かもしれないけれど──『あたたかさ』を感じました。みんなの力がひとつになって、毎日、奇跡的で尊い瞬間にいると思えた。幸せでしたね。ものを作る場があることに感謝をした、それが一番の発見かもしれないです」
 この映画では、俳優たちの魅力をキャラクターとして存分に引き出しているのが特徴。カリスマ的な人気を誇るコミックには根強いファンが多く、読者がそれぞれにもつイメージもあり、実写映画化が容易ではないことは周知の通り。本作ではW主演の神木と柴咲がしっかりとした軸になっているのはもちろん、冴えている美術や衣装やヘアメイクなどが相まって世界観全体として楽しめるのが特徴だ。個人的には原作で百目鬼がお気に入りのキャラクターだったので、実写で幻滅したくないと不安もあったが、松村がこれまでのどの作品よりも沈着かつストイックなムードで清廉に表現していた。なかでも特に驚いたのは、ひまわり役の玉城ティナと女郎蜘蛛役の吉岡里帆。蜷川作品のミューズである玉城について、監督は「圧倒的なビジュアルの強さがあるのはわかっていましたが、あれほどまでにツインテールが似合うとは予想外でした」とコメント。コミック原作の“美少女”に追いつくのは基本ムリのはずが、イメージを超えるようなかわいらしさで、ピカピカと輝くような雰囲気がよく伝わってくる。また女郎蜘蛛役の吉岡里帆は、よくよく見れば彼女だとわかるものの、一見すると「この煽情的な美女は誰?」となるのが面白い。動き、目線、胸の谷間、すべてが誘惑と支配と堕落のためにあり、一切の迷いと疑問がない、という純粋な残酷さの表現が非常にハマッている。吉岡は2022年3月22日に東京で行われた完成披露試写会のイベントにて、「自分史上最も肌見せをしているし、悪女なので色々とどうしようかと思った」とも。そうした戸惑いを踏み越えて、映像美に定評のある蜷川監督の作品で、美しくカッコよく退廃的にセクシーを解禁したのは賢い選択だろうし、同性としても好ましく思える。現場では蜷川組初という“セクシー指導”担当が指南したそうで、吉岡は「とにかくセクシーな所作が難しくて、工夫の連続なんだなと勉強になりました」とのこと。蜷川監督は、「解き放れた吉岡里帆を見た気がして鳥肌が立った」とコメントしている。

玉城ティナ

撮影は、侑子のミセにつながる道は新宿のゴールデン街、渋谷のスクランブル交差点は足利にあるオープンセット、百目鬼の寺は江の島の龍口寺などにて。またミセの居間や宝物庫や縁側といった蜷川組の美術チームによるセットのなかでも、藤棚と蓮の池のセットが際立っている。劇中で侑子は同じ衣装の着回しがなく、かんざしや煙管などは特注で制作され、合計16着を着こなしているとのこと。侑子と共にいる2人の少女マルモロも同様で、女郎蜘蛛の衣装も登場するたびに毎回変わっているとも。柴咲は衣装や美術が役作りの助けとなったと語る。「侑子という役は、とても説明しにくい妖艶なキャラクターですが、美術の力、装飾の力、衣装の力が凄まじく、その力をお借りすることで、現場に入れば自然と侑子になることができました」
 主題歌「Habit」は、蜷川監督の“今を生きる若者たちへの優しさを込めてほしい”というオーダーに応えてSEKAI NO OWARIが書きおろし、サウンドトラックは渋谷慶一郎が担当。渋谷とドバイ万博で共演予定である声明(しょうみょう。仏教の経文を朗唱すること)の演奏家・藤原栄善の声を生かしたサウンドなど、バトルのシーンに生々しい迫力と奥行きを加えている。“アヤカシ”のサウンドデザインはサウンドアーティストのevalaが担当し、立体的な音響を繰り出している。

原作者のCLAMPは、第32回星雲賞コミック部門受賞作品『カードキャプターさくら』などでも知られている、いがらし寒月、大川七瀬、猫井椿、もこなの女性4名による創作集団。CLAMPの作品は2017年時点で国内コミックス総売上数1億部を突破し、世界20ヶ国以上で出版されている。初の実写映画化である今回の『ホリック xxx HOLiC』に寄せて、CLAMPとしてこのようにコメントしている。「『xxx HOLiC』という作品を深く愛して下さっている蜷川実花監督の、想い描くままの『映像』と『物語』がみたいというネガイが叶いました。原作者としても一映画ファンとしても幸甚です」
 蜷川監督は映画化について2012年から考え始め、2013年には原作サイドから蜷川監督なら、と快諾を得ていたものの、全19巻の原作を約2時間の映画にするための脚本の開発が難航。原作のCLAMPサイドからは「自由に描いてもらっていい」という許諾があり、多様なパターンを試行錯誤し、10年を経てようやく実現したという。蜷川監督は完成披露試写会にて、やっと完成した本作についてこのように語った。「長いお話を2時間にまとめるにあたり、どこをどう守りどう変えるのかが難しく七転八倒。でも神木さんと柴咲さんが決まった途端に、これはいける! という確信に変わりました。10年という歳月は必然だったと思ったくらい、満足のいく完成度になりました」

松村北斗,吉岡里帆,神木隆之介

蜷川監督率いるスタッフとキャストによる、ダークで耽美的なファンタジーの世界が展開する本作。原作ファンも、原作を知らない初見の観客もひとつの映像作品として楽しめるのではないだろうか。最後に、監督によるメッセージをご紹介する。「音を立てて世界が変わる瞬間を体験した私たち、今だからこそ『xxx HOLiC』のなかで語られていることが、より滲み入るように入ってきます。『この世界ではみんな誰かと関わって、何かを共有している。選ぶのはあなた自身、未来はそれぞれの選択の先に在る』。原作のもつ力に導かれながら、新しい表現にたどり着けたと思います。やり切りました。ぜひ劇場にお越しください」

2022年4月18日更新

作品データ

公開 2022年4月29日より全国ロードショー
制作年/制作国 2022年 日本
上映時間 1:50
配給 松竹
アスミック・エース
監督 蜷川実花
原作 CLAMP
脚本 吉田恵里香
出演 神木隆之介
柴咲コウ
松村北斗
玉城ティナ
趣里
DAOKO
モトーラ世理奈
西野七瀬
大原櫻子
てんちむ
橋本 愛
磯村勇斗
吉岡里帆
:あつた美希
ライター:あつた美希/Miki Atsuta フリーライター、アロマコーディネーター、クレイセラピスト インストラクター/インタビュー記事、映画コメント、カルチャー全般のレビューなどを執筆。1996年から女性誌を中心に活動し、これまでに取材した人数は600人以上。近年は2015〜2018年に『25ans』にてカルチャーページを、2015〜2019年にフレグランスジャーナル社『アロマトピア』にて“シネマ・アロマ”を、2016〜2018年にプレジデント社『プレジデントウーマン』にてカルチャーページ「大人のスキマ時間」を連載。2018年よりハースト婦人画報社の季刊誌『リシェス』の“LIFESTYLE - NEWS”にてカルチャーを連載中。