eHills Club 試写会日記

毎週、映画ファンの皆さんへ熱いメッセージ! 傑作でもB級でも映画ってやっぱり素敵!!

バブル

日本の実力派クリエイターと、注目のキャストが参加
廃墟と化した東京で、ある声を聴く青年と少女が出会う
最新の映像体験を届けるオリジナルのアニメーション映画

バブル©2022「バブル」製作委員会

日本のアニメーション界における実力派クリエイターと、さまざまな注目のキャストによるオリジナル映画が完成。監督は2006〜2007年のアニメ「DEATH NOTE」、2013年のアニメ「進撃の巨人」の荒木哲郎、脚本は「魔法少女まどか☆マギカ」「Fate/Zero」の虚淵玄、キャラクターデザイン原案は「DEATH NOTE」「バクマン。」の小畑健、音楽はアニメ映画『プロメア』『機動戦士ガンダムNT』の澤野弘之が手がけ、制作スタジオは「進撃の巨人」で荒木監督とタッグを組んだWIT STUDIOが参加。声の出演は、『さんかく窓の外側は夜』の志尊淳、TikTokの弾き語り投稿で人気のシンガーソングライター、りりあ。、『サイレント・トーキョー』の広瀬アリス、そして人気声優である宮野真守、梶裕貴、畠中祐ほか。世界に謎の泡〈バブル〉が降り注ぎ、東京は巨大なバブルに包まれて重力が壊れた異常事態に陥る。一連の事象により廃墟と化した東京で、青年ヒビキは不思議な少女ウタと出会い……。鋭すぎる聴覚ゆえに人との交流が不得手になった青年と、謎の泡から生まれた無邪気な少女の淡い恋、不可思議な超常現象の謎、仲間と力を合わせて予測できない困難を乗り越えようとするチームの行方を描く。充実のスタッフと声のキャストにより、カラフルなヴィジュアルと立体感のある声やサウンド、少年少女たちがパルクール(鍛えた身体能力により障害物を次々と乗り越え疾走する)で街を跳ぶ映像といった、最新の映像体験を届けるアニメーション作品である。

世界に謎の泡〈バブル〉が降り注ぎ、東京一帯は巨大なバブルに包まれて重力が壊れた異常事態に陥る。一連の事象によりライフラインが断たれた東京は、家族を失った一部の若者たちの住処となり、ビルからビルに駆け回るパルクールのチームバトルの戦場となっていた。ある日、パルクールチーム“ブルーブレイズ(通称BB)”のヒビキはプレイ中に、重力が歪む危険な海へ落下。そこに突如現れた、不思議な力をもつ少女ウタがヒビキの命を救う。ウタは驚異的な身体能力をもち、ヒビキと彼のチームメンバーたち、降泡現象を観測し続ける科学者マコトと共に船で暮らし始める。穏やかな暮らしのなか、ヒビキとウタだけに聴こえる“歌声”があるとわかり、2人は心を通わせていく。しかし降泡現象が再び始まり、東京が沈没の危機に陥るなか、件の歌声を聴いたウタは皆の前から姿を消してしまう。

バブル

日本のアニメーション界における実力派クリエイター、人気の俳優と声優陣、そしてYouTubeやTikTokで人気のシンガーソングライター、りりあ。がヒロインの声とエンディングテーマの作詞・作曲・歌唱で参加、という話題作。印象的なヴィジュアル、歌やサウンド、パルクールのアクションなど、気持ちよさを集めたミュージックビデオのような感覚だ。作品単体やストーリー性だけでとらえると、幅広い年齢層の万人向けという内容ではないかもしれないものの、国内外の観客への情報発信(広まり方や届け方)、多様なメディアミックスなど、作品+派生を含む全方位といった、実証実験的な企画としてユニークだ。おそらくZ世代にとって、“コミュニケーションのためのコンテンツ”のひとつとなる作品なのではないだろうか。そもそものきっかけは荒木監督が、『君の名は。』『天気の子』などを手がけてきたプロデューサーの川村元気に、完全オリジナルストーリーで映画を一緒に作ってほしい、とアプローチしたことから始まったとのこと。川村プロデューサーは、「アニメーション映画としては、細田守監督、新海誠監督、新房昭之監督、長井龍雪監督と作品を作ってきました」と話し、荒木監督への信頼を語る。「日本から次に世界に送り出すべき才能は誰か、とずっと探していました。荒木哲郎監督は紛れもなく、その筆頭の才能だと思っています」
 荒木監督はこの作品への思い入れをこのように語っている。「長年ひっそりと作っていましたが、ようやくお披露目できることを嬉しく思います。爽快なアクションや、美しい背景美術はもちろんのこと、今回はさらに、思いもよらないところに皆さんを連れていけると良いなと思っています。早くお見せしたい!」

渋谷を拠点とするバトルクールチームBBのエースであるヒビキの声は志尊淳が、鋭すぎる聴覚ゆえに生きづらく、人との交流が不得手になった青年として繊細に。見どころのひとつであるパルクールの動きは、荒木監督がパルクールアスリートのZEN氏に直接会い、「“彼の映像こそヒビキ”という位置付けで、彼の動作からいろいろ導いていった」と語っている。泡から生まれた謎の少女・ウタの声は、シンガーソングライターのりりあ。が、恋する無垢な少女をかわいらいしく表現。BBのメンバーたちと共に船・令洋で暮らし、降泡現象の調査をする科学者マコトの声は、オーディションに「大好きなアニメ『進撃の巨人』の荒木監督に会えればそれだけでいい」と思い臨んだという広瀬アリスが、バトルクールチームの少年たちを見守る年長者であるシンの声は宮野真守が、降泡現象で家族を失ったBBのリーダー、カイの声は梶裕貴が、秋葉原を拠点とするバトルクールチーム“電気ニンジャ”のリーダーの声は畠中祐が、BBの最年少メンバーであるウサギの声は千本木彩花が、バトルに特化した高性能ブーツを使用するバトルクールチーム“アンダーテイカー”の不遜なリーダーの声は井上麻里奈が、練馬を拠点とするバトルクールチーム“関東マッドロブスター”のリーダーの声は三木眞一郎が、それぞれに表現している。

バブル

創作の始まりは、荒木監督が廃墟の東京を背景にした人魚姫の絵をきっかけに、脚本家・虚淵玄の「人魚姫モチーフの物語で“少女が恋した末に泡になる”のを“泡が恋して少女になる”に組み替えては?」というアイデアから、ストーリーが決まっていったとのこと。川村プロデューサーは、脚本家・虚淵玄が手がけた『魔法少女まどか☆マギカ』が「ものすごく好き」で、脚本家・虚淵は「荒木さんとご一緒に何か面白い作品を作りたい」と思っていたという。そしてキャラクターデザイン原案の小畑健からは、オファーした川村プロデューサーに一度は「忙しいから無理かも」と返事があったものの、プロットを読んだ後に「やっぱりやりたい」という連絡がきて決まったとも。そして音楽は、「進撃の巨人」「甲鉄城のカバネリ」などの荒木監督作品に参加している澤野弘之が手がけ、「進撃の巨人」を荒木監督と共につくり上げたアニメーション制作会社WIT STUDIOが参加。日本アニメーションの先端を走るクリエイターたちの顔合わせが実現できたことについて、川村プロデューサーはこのようにコメントしている。「今回、“荒木監督に関わってきたクリエイターが集結したフェス“にしたいと思っていたので、本当に大好きな人で集まって映画を作ったらどうなるのか、この作品のポイントになりました」

『バブル』では、エンディング主題歌「じゃあね、またね。」はりりあ。が、オープニング主題歌「Bubble feat. Uta」は、TVアニメ「呪術廻戦」の主題歌「廻廻奇譚」が大ヒット中のシンガーソングライター・Eveが担当。りりあ。は当初、主題歌のアーティストとしてのみ参加する予定だったところ、ヒロインの声に抜擢。その理由について、川村プロデューサーは「彼女が本作『バブル』のヒロイン・ウタと重なった」とし、荒木監督も「話し声や柔らかいムードが心地よく、ヒロインのウタというキャラクターに求めているものそのものでした」と感じたことから、ヒロインのウタ役に抜擢。りりあ。は、主題歌の話を受けたところ、ヒロインの声のオファーもきたときの驚き、初めてのアフレコに挑戦したときの思いをこのように語っている。「最初は主題歌のお話だと聞いていたのでやりたい!と即答しました。その後にヒロイン役のお話を聞いて私が声優?!無理!出来るわけない!という気持ちと楽しそう!やってみたい!の気持ちが行ったり来たりで大騒ぎでした。このような壮大な企画だと知ったのは、ヒロイン役も決まった後のことでした。初めて台本を読んだ時、ウタの気持ちとリンクしすぎて泣きまくりました。今でも思い出して泣けるくらいウタに感情移入できたので初めてのアフレコでしたがあの時はちゃんとウタが心のなかにいた気がします」
 またオープニング主題歌「Bubble feat. Uta」を手がけたEveについて、荒木監督は「かねてライブなども見せていただいていた」そうで、ミュージシャンとしての世界観に強く惹かれていたとのこと。Eveはこの映画のために新曲を提供したことについて、このようにコメントを寄せている。「“荒木哲郎×虚淵玄×小畑健×澤野弘之” 自分の好きが集結したような空間に、歌でご一緒させていただき感慨深い気持ちです。ピュアで優しくて、臨場感溢れるこの作品に今回書き下ろした楽曲は今までみたことのないようなところにまで連れていってもらえたような気がします」
 川村プロデューサーは人気ミュージシャンとのコラボレーションについて語る。「この映画を世界に届ける時に、今の日本の音楽の最先端にいる人がいいなあ……って思っていたんです。Eveの作る音楽とアニメーションとの親和性は素晴らしいと思っています。その後、『呪術廻戦』の主題歌の『廻廻奇譚』もものすごいことになって、びっくりしました。りりあ。さんもそうですが、アニメを愛してくれているアーティストと一緒に作れたのが良かったと思います」

バブル

日本のアニメ界の実力派クリエイターたちがオリジナル作品としてつくり上げた本作。集合的無意識と個人的無意識、集合からふとしたきっかけで外れてしまったもの、イレギュラーな存在や感覚、特殊な感性による少数派、といった要素がわかりにくく、物語の謎めいた展開やラストの表現などがピンとこないと感じる向きもあるかもしれない。ただ、ある種の人にとっては「自分のことかもしれない」と思えるような、寄り添うようにつくられている側面もあり、特別な優しさや情を感じる人もいるのかも。スクリーンで観る劇場公開のほかに、現在Netflixで全世界配信もされているため、世界中の人たちに時間差なしで観るチャンスがあり、たまたま『バブル』と出会った人のなかに何か伝わることがあれば、この作品の役割や価値がそこにあるともいえるのかもしれない。結末についてどう感じるか、どんな作品を思い出すかといったことは観た人それぞれというなか、筆者は個人的に2013年11月に公開された『劇場版SPEC 〜結〜 爻ノ篇』のラストを思い出した。意味合いは近く、ただもっと明るさや幸福感のあるイメージだ。
 2022年2月に行われた第72回ベルリン国際映画祭では、『バブル』がティーンエイジャーや子供の世界を描く作品を対象としたジェネレーション部門に招待。荒木監督はベルリン国際映画祭への正式出品について、「大変驚きました。本当に光栄に思います」と話し、このように語った。「映画や自分が試されていると同時に、これまでの監督仕事で積み上げてきた、仲間たちとの仕事のすべてが、いま試されているのだと思います。どこまで届くのか見届けたいです」
 そして川村プロデューサーは、観客や視聴者へのメッセージをこのように語った。「満を持して日本そして世界中のみなさまにお届けできるのが楽しみで仕方ありません。凄まじいアクションのなかで、心と心が通い合っていく。活劇とドラマが融合した、日本アニメーションの醍醐味を体験していただければ幸いです」

2022年5月9日更新

作品データ

公開 2022年5月13日より劇場版全国公開
NETFLIX版 全世界配信中
制作年/制作国 2022年 日本
上映時間 1:40
配給 ワーナー・ブラザース映画
監督 荒木哲郎
脚本 虚淵玄[ニトロプラス]
キャラクターデザイン原案 小畑健
音楽 澤野弘之
企画・プロデュース 川村元気
制作スタジオ WIT STUDIO
声の出演 志尊淳
りりあ。
宮野真守
梶裕貴
畠中祐
千本木彩花
逢坂良太
井上麻里奈
三木眞一郎
広瀬アリス
:あつた美希
ライター:あつた美希/Miki Atsuta フリーライター、アロマコーディネーター、クレイセラピスト インストラクター/インタビュー記事、映画コメント、カルチャー全般のレビューなどを執筆。1996年から女性誌を中心に活動し、これまでに取材した人数は600人以上。近年は2015〜2018年に『25ans』にてカルチャーページを、2015〜2019年にフレグランスジャーナル社『アロマトピア』にて“シネマ・アロマ”を、2016〜2018年にプレジデント社『プレジデントウーマン』にてカルチャーページ「大人のスキマ時間」を連載。2018年よりハースト婦人画報社の季刊誌『リシェス』の“LIFESTYLE - NEWS”にてカルチャーを連載中。