トップガン マーヴェリック
トム・クルーズが辣腕パイロットを演じるヒット作の続編
危険な任務で若手を指導し、懐かしい人たちと再会する
人間ドラマと本物の空撮シーンを映すスカイ・アクション

1986年のヒット映画から36年を経て、前作と同様にトム・クルーズ主演で完成。共演は、『セッション』のマイルズ・テラー、『ビューティフル・マインド』のオスカー女優ジェニファー・コネリー、『ザ・ロック』のエド・ハリス、『キスキス, バンバン』のヴァル・キルマーほか。監督は『オブリビオン』のジョセフ・コシンスキー、製作は前作も手がけたヒットメーカーのジェリー・ブラッカイマー、脚本は『ミッション: インポッシブル』シリーズの監督であり、アカデミー賞脚本賞受賞経験のあるクリストファー・マッカリーが手がける。アメリカのエリート・パイロットチーム“トップガン”は、世界の危機を回避するための困難な極秘ミッションに直面。凄腕のパイロットでありながら、型破りな性格と言動により組織のなかで追いやられていたマーヴェリックは、新世代トップガンたちへの指導役を任命され……。前作から36年後の海軍で、若いパイロットたちを指導するなか、他界した旧友の息子やかつての恋人、ライバルと再会し、困難な任務へと挑むマーヴェリックの姿を描く。“飛行シーンはすべて本物”という迫力の映像、前作のエピソードからの懐かしさを生かしつつ、最新の航空機やシステムなどの現代的な要素を取り入れ、チームで成し遂げる感動をストレートに描く、スカイ・アクション大作である。
アメリカのエリート・パイロットチーム“トップガン”は、世界の危機を回避するため、生還の可能性が限りなくゼロに近い困難な任務に直面する。海軍は任務成功のため、伝説的な実績をもち、現在は海軍のテストパイロットをしているマーヴェリックに、若手パイロットへの指導を命ずる。マーヴェリックは高度な技術をもつ一流のパイロットでありながら、常識破りの性格と、組織に縛られない振る舞いから昇進しないまま、テストパイロットとして現役であり続けていた。そして危険な任務を成功させるべく、3週間というリミットのなか、マーヴェリックは新世代のトップガンたちへの指導と訓練を開始するが……。

1980年代のアメリカで大ヒットした映画の36年ぶりの続編。旧作の続編やリブートは明暗がわかれるところながら、この作品はとても慎重かつ熱心につくられたことがわかる。たとえば、旧作の物語やキャラクターを分析して特徴を抽出し、映画の流行を巧くコラージュしただけでは観客をしらけさせるだけになりがちだが、音楽やアイテムなどによる懐かしさは前面に押し出しすぎず、内容の一部として織り交ぜながら、若い世代からの見え方、パイロットとして活躍する女性など、旧作とは違う文脈でストーリーを現代的に展開していることが特徴だ。映画の前半には、マーヴェリックが某所でペナルティをとられ、「誰アンタ、はいはい退場」みたいなノリで、若者たちに軽く放り出されるシーンがあって。ハリウッドでも現実の社会でも、50代オーバーに対する心情的な現実として辛辣ながら、“トム様”がぞんざいに扱われるのをみるのはめったにないので、なかなか面白い。レジェンドを敬い崇めるといった、主人公を持ち上げるだけの内容ではなく、若い世代たちとの関係がマイナスからスタートし、体験を通じて実力を認め合うことで世代を超えたつながりができていく、といった物語となっている。プロデューサーのブラッカイマーは、この映画にある懐かしさについて、「久しぶりに旧友に会い、また一緒に過ごせることを楽しむ感じ」と話しながら、続編の製作に必要な視点として、「良いシリーズ作品は過去と同じくらい未来にも目を向けていなければならない」とコメントしている。またスタンフォード大学で航空宇宙工学と機械工学を学び、映画製作の世界へ転身したというユニークな経歴をもつコシンスキー監督は、「『トップガン』はある意味ファンタジーだ」と話し、1作目を手がけた故トニー・スコット監督(リドリー・スコットの弟)への敬意と共にこの映画に対する思いを語る。「太陽はいつも夕陽で、ビーチではバレーボールが行われ、ジュークボックスにはクラシックな曲がいっぱい詰まっている。とてもゴージャスだよ。トニーは大作を製作していたが、それをまるでアート映画のように撮ったんだ。照明、グラデーションフィルター、フレーミング。この映画には、トニーの映画のスタイルに対するオマージュのような瞬間がいくつかある」
一流の腕をもつパイロットながら、型破りの性分と言動により昇進せずにいる現役パイロットのピート・“マーヴェリック”・ミッチェル役はトムが、強引な一匹狼ながらも前作から時間を経て、人々と共に支え合っていく姿を表現。新世代のトップガン・パイロットであり、マーヴェリックの亡き親友でレーダー迎撃担当だったニック・“グース”・ブラッドショウの息子であるブラッドリー・“ルースター”・ブラッドショウ中尉役はマイルズが、ジェイク・“ハングマン”・セレシン海軍大尉役はグレン・パウエルが、“コヨーテ”役はグレッグ・ターザン・デイヴィスが、“ペイバック”役はジェイ・エリスが、“ファンボーイ”役はダニー・ラミレスが、“フェニックス”役はモニカ・バルバロが、“ボブ”役はルイス・プルマンが演じている。前作でマーヴェリックのライバルで、現在は大将となった“アイスマン”役はヴァル・キルマーが、離婚経験のあるシングルマザーで、パイロットたちが通うクラブのオーナーであるペニー役はジェニファーが、“ウォーロック”海軍少将役はチャールズ・パーネルが、コールマン准尉役はバシル・サラフディンが、チェスター・“ハンマー”・ケイン海軍少将役はエド・ハリスが、それぞれに演じている。新世代パイロットのなかでも、ハングマン役のグレン・パウエルは父親と10歳の時に観た前作の大ファンで、「『トップガン』は、まさに僕が俳優になった理由なんだ」といい、続編に出演してトムと共演できたことに心から感動したと話している。
また前作にはいなかった女性パイロットが今回は登場している理由は、前作の頃は女性パイロットが戦闘に参加することが禁止されていたが、1993年にアメリカ国防軍が戦闘禁止を撤廃されたからとのこと。女性パイロットという書き方そのものが性差別であるというのもわかるものの、劇中で一流パイロットの一員としてあたりまえに女性がいて、実際にも活躍していると知ると、やはり紹介したくなる。そしてジェニファー演じるマーヴェリックの元恋人ペニーは、海とレースを愛するベテランの船乗りであるタフなキャラクターとなっている。

「僕にとって、「トップガン」とは、空を飛ぶことへのラブレター。(映画の中の)飛行シーンはすべて本物だ」と、主演・プロデューサーを兼ねるトムがきっぱりと言い切る本作。空撮の撮影は、デスバレー国立公園のレインボーキャニオンや、ワシントン州のカスケード山脈など、“アメリカで最も難しく美しいコース”にて。劇中にはアメリカ海軍の空母USSセオドア・ルーズベルトのデッキから実際に離陸するシーンも。コシンスキー監督はこの撮影について、「これまで行ったなかで最も素晴らしく、最も大変な撮影だった」と話し、そのときの興奮を語る。「厳しい仕事環境ではあったが、そこで得られた映像は圧巻だった。僕らはトムが操縦するF/A-18をカタバルトから射出させ、すべてカメラに収めることができた。彼は4〜5回離陸したよ。誰も映画でそれをやったことはない。海軍飛行士だけがやることだ。肉体的に過酷で、撮影部隊にとっても辛いものだったが、得られた映像は決して見せかけでは作れない。素晴らしい経験だった」
新世代パイロットを演じる役者たちは、トムのようにもともと心身を鍛えていて軍用機P-51(この映画に登場)を所有し、飛行士の資格をもっているわけではない。そのため操縦士役の俳優たちのために、特別なトレーニング・プログラムをトム本人が設計。コシンスキー監督は俳優たちにまず、「これは典型的な演技の仕事ではない。時速600マイル(約965km)で飛ぶスーパーホーネット戦闘機に乗り、強力なG(重力加速度)にさらされる。飛ぶことに抵抗はないか?」といい、新世代パイロット役の俳優たち全員が撮影前に5カ月かけて軍用機に乗る訓練を積んだ。
またトムとブラッカイマーは、アメリカ太平洋艦隊海軍航空部隊司令官でエアボスのデウォルフ・H・ミラー3世副将軍に会いに行き、映画について丁寧に説明をして海軍への心からの敬意を伝え、軍用機F/A-18の使用許可など映画製作のための協力を得たとのこと。本物のトップガンのベテランで、この映画の海軍航空技術顧問兼航空コーディネーターを務めるブライアン・“ファーグ”・ファーガソン大尉は、海軍と映画製作スタジオとの協力体制について、「挑戦であり、険しい習得過程だった」と話し、手探りで進めていったとコメントしている。そしてトムとコシンスキー監督と撮影監督のクラウディオ・ミランダは、海軍と連携してコックピット内を撮影するためのカメラを開発したとも。そして撮影では、F/A-18の小さなコックピットに入る6台のIMAXカメラを搭載した本物の戦闘機に、俳優たちが搭乗して行われた。トムは劇中の飛行シーンについて熱心に語る。「空撮シーンで僕らが成し遂げたのは、これまで誰も見たことのないようなものだ。本物のF/A-18で飛行しながら演技ができるように、俳優たちを訓練した。そのために世界最高峰の戦闘機パイロットを米海軍から起用し、パイロットと俳優たちは一丸となって(トレーニングと撮影に)取り組んだ。これが空撮シーンの精巧さだ。これまで誰も成し遂げたことがないよ」
プロデューサーのブラッカイマーは語る。「今回はトムのおかげで、出演者たちは全員訓練を受け、飛行やG(重力加速度)の基本やメカニズムに慣れることができた。前作とは違って、俳優たちは実際に飛行中のF/A-18のコックピットで演技をし、セリフを話しているんだ」

さて、第1作からのファン向けのシーンとしては、夕陽を背景に、レザージャケットにアビエーターサングラスをまとったマーヴェリックがカワサキのバイクに乗り、滑走路を走るF/A-18と並走する、ライバルのアイスマン役として前作に引き続きヴァルが出演、といったことがある。またサウンドトラックは前作からケニー・ロギンスの「Danger Zone」やインストのテーマ曲「Top Gun Anthem」などの有名な曲を引き継ぎ、新しい曲としてワンリパブリックの「I Ain’t Worried」、レディー・ガガがブラッドポップと書き下ろした新曲「Hold My Hand」などを収録。また前作では父グースがピアノを弾きながら歌ったように、今作では息子ルースターがジェリー・リー・ルイスの1957年のヒット曲「Great Balls of Fire」をクラブで演奏し歌うシーンがある。マイルズは撮影前にピアノのレッスンを7週間受けて、実際に歌い演奏できるようになったそうだ。
大ヒット作の36年ぶりの続編という難しさは製作陣にも大きなプレッシャーがあり、製作を務め脚本も執筆したクリストファー・マッカリーは、一旦は辞退しようと決めたとも。しかし引き受けると決めてからは、ストーリーづくりに集中し、主人公のドラマというだけではなく、パイロットたちの文化を描く、という面にも力を入れたそうだ。「オリジナルに目を向け過ぎず、気後れしたり圧倒されたりしないようにすることが課題となった。グースがマーヴェリックに立ちはだかっていたように、前作『トップガン』は常に僕たちの上にのしかかっていた。単体で素晴らしい映画だっただけに、オリジナル作品のファンに対する義務感もあった」
それにしてもなぜ続編が36年後になったのか。周囲から続編を、といわれ続けてきたトムは、「CGIで撮れないのか?」といわれるたびにNOといい、続編をつくる条件として、飛行シーンのすべてを実際に撮影、そのためのカメラの開発、自身がF/A-18に乗る、最新の設備や技術を取り入れることなどを挙げていたそうだ。前作のあとですぐに続編の話もあったなか、トム本人が「1作目でやりきったから続編に興味がなかった」ことや、「長年、いろんな続編のアイデアを投げかけられてきたが、まったく“らしく”なかった」とも。そんななか、『ミッション:インポッシブル』シリーズを自身で3作製作して見比べてみたときに、『トップガン』の続編としてのアプローチが見えてきたという。
2022年5月23日に東京で行われた約3年ぶりの来日記者会見にて、トムは続編を製作したタイミングとして「“今しかない”という感覚」だったとコメント。実際に「まるで戦闘機に乗っているかのような体感」のあるこの映画について、これまでに観たことのない初めての体験を届ける、と語り、トムは観客に笑顔でメッセージを送った。「みなさんもこの映画を観れば、本当にF/A-18に乗っているリアルさを感じてもらえると思います。私たちはいつも最先端のテクノロジーを駆使して、キャラクターが中心にあるストーリーをつくってきました。ジェリーも私も物語や映画への愛があります。生きることを祝福するような映画をつくり、みなさんに特別な感覚をお届けしたかった。この映画はとても楽しくて、エモーショナルな作品です」
ここまでやる? という映画づくりを遂行するのがトムの流儀。極端にやればそれだけでスゴイ! というわけではないし、絶対的な“トム様”派というわけでは個人的にないけれど、こうした情熱の注ぎ方をする有言実行の人物だと知っていると、次は何をするのかな、と自然に興味がわいてくる。近頃には、トムがダグ・リーマン監督と共に、イーロン・マスクやNASAとコラボレーションをして、宇宙での撮影を含む映画に挑戦するという報道も。次回は空を突き抜けて宇宙とは! 今はまずこの映画で、マッハ1超えの超音速による飛行体験をしてみてはいかがだろう。
2022年5月24日更新
作品データ
公開 | 2022年5月27日より全国ロードショー |
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制作年/制作国 | 2022年 アメリカ |
上映時間 | 2:11 |
配給 | 東和ピクチャーズ |
原題 | Top Gun Maverick |
監督 | ジョセフ・コシンスキー |
脚本・製作 | クリストファー・マッカリー |
製作 | ジェリー・ブラッカイマー |
出演・製作 | トム・クルーズ |
出演 | エド・ハリス マイルズ・テラー ジェニファー・コネリー ヴァル・キルマー |
