フォールガイ

気合いのカースタントでギネス世界記録更新!
スタントマンの復帰と恋、事件の顛末を描く
生身のアクションで引きつけるエンタメ快作

  • 2024/07/19
  • イベント
  • シネマ
フォールガイ© 2024 UNIVERSAL STUDIOS. All Rights Reserved. 

『ラ・ラ・ランド』のライアン・ゴズリングが主演とプロデューサーを務め、迫力のスタントやアクション、コメディにラブロマンスと見どころをたっぷりと詰め込んだド派手なエンタメ快作。共演は、『オッペンハイマー』のエミリー・ブラント、『ブレット・トレイン』のアーロン・テイラー=ジョンソン、『ブラックパンサー』のウィンストン・デュークほか。監督は自身が長年スタントマンをつとめた経験をもつ、『デッドプール2』『ブレット・トレイン』のデヴィッド・リーチが手がける。一流スタントマンのコルトは、完璧にこなしたはずの落下スタントに失敗し、心身に大きなダメージを負い業界を去る。しかし彼のもとに、オーストラリアで撮影中の大作映画で復帰の要請が……。大怪我を経たのちに撮影現場へ復帰なるか、消えた大物アクション・スターの捜索、別れた元カノとの関係、さまざまな周囲の思惑が絡み合い、コルトの運命は思いがけずとんでもない展開に。アクションやスタントやバトルが盛りだくさん、大いに笑って明るいロマンスもシンプルに楽しめる、夏休みにぴったりのカラッと陽気な娯楽作である。

腕利きのスタントマン、コルト・シーバースはアクションスター、トム・ライダーの代役として、長年数々の危険なスタントをこなしてきた。ところがある日、12階の高さから落ちるスタントに失敗して心身に大きなダメージを負い、愛し合っていた映画スタッフのジョディの元からも去り、彼は業界から姿を消す。18か月後、レストランの駐車係をしているコルトの元にプロデューサーのゲイルから復帰の依頼が。オーストラリアのシドニーで撮影中のトム主演のアクション大作『メタルストーム』への参加を打診される。コルトは渋るも、その映画の監督がかつての恋人ジョディであると知り、復帰を決意してシドニーへ。さっそく撮影現場で、コルトは難しいカースタントを成功させて腕が落ちていないと証明。スタント・コーディネーターのダンを始めとするスタント仲間たちは彼を歓迎するが、ジョディは黙って姿を消した彼に、まだ腹を立てていた。監督であるジョディは難易度の高いスタントをコルトに次々と指示し、コルトは果敢に挑み続ける。一方、プロデューサーのゲイルはコルトにある“仕事”を依頼。それはスター俳優のトムが現地で行方不明となっており、彼を探し出すことだった。

ライアン・ゴズリング,エミリー・ブラント,ほか

スタントマンからアクション監督を経て、映画監督となったデヴィッド・リーチが放つ快作。スターの代役など舞台裏で活躍し、顔はスクリーンに映らず、並外れた身体能力で体を張って危険なシーンを体現していくスタントマンに、くっきりとスポットライトを当てているところに胸がすく。冒頭の12階からの落下スタントはミッション・インポッシブルの超有名シーンを彷彿とさせる面があるなど、いろいろな映画へのオマージュを散りばめているところも興味深い。リーチ監督はこの映画への思い入れをこのように語っている。「私にとってこの作品は、スタント・パフォーマーや映画業界の陰のヒーローたちに宛てたラブレターなんだ。プロダクションデザイナー、撮影監督、グリップ、照明、プロダクション・アシスタント、アシスタント・ディレクターなど、スクリーンで魔法を生むために現場で心血を注ぐ才能あふれるプロフェッショナルたちに敬意を表している。私自身がスタントマンとして体験した実際のエピソードも盛り込んであるから、特に愛着のある作品になったよ」
 リーチ監督の妻でありこの映画のプロデューサーであるケリー・マコーミックも、この物語ではスタントマンに加え、映画の制作スタッフについて描いたことについて語る。「この映画はスタント業界に称賛を贈るだけでなく、映画製作においてカメラの裏側で重要な役割を果たしている個々の人にも光を当てているの。彼らとのコラボレーションに感謝しているし、この作品を通じて今まで関わった数々の映画と素晴らしいスタッフたちに敬意を表したい」

大怪我を負い復帰する一流スタントマンのコルト・シーバース役はライアンが、どれほど難しいスタントでも即座に対応するプロフェッショナルとして。劇中では激しいスタントを次々とこなすなか、元カノのジョディにはめっぽう弱く、彼女に一途な思いを寄せているところがとてもキュートだ。ライアンはリーチ監督について、「スタントマンである彼がスタント業界に関する映画を監督するという点も完璧だと思った」と話し、スタントマンへの敬意とこの映画への思いをこのように語った。「僕の経験から言うと、スタントダブルの人たちは、現場に現れてリスクを冒しながらクールなアクションをすべてこなし、黙って去っていくイメージなんだ。そしてスタントマンが立てた手柄を俳優が自分のものにしてしまう。だからスタントマンを主役にした作品に関われるのがうれしいし、彼らの命懸けの偉業にスポットが当たることも素晴らしいと思う」
 当初はコルトのキャラクターが『ロッキー』のような“不屈のスタントマン”というイメージだったものの、ライアンがプロデューサーとして関わることで、作品のトーンがよりコミカルで楽しい内容となったという。例えば、もしハードなスタントばかりがひたすらスクリーンで展開していたら、すごいのはわかるけれど全編を通しては引きつけられにくいという向きもあるだろうものの、ライアンのユーモアやサービス精神、ロマンスを表現するスウィートさという多彩な演技により、人間ドラマとしての豊かな情感も味えることがこの映画の魅力となっている。プロデューサーのガイモン・キャサディは主演とプロデューサーを務めるライアンについて語る。「ライアンはものすごく頭が良くて直感も冴えているんだ。彼がコルトというキャラクターに抱いた直感が、この映画の方向性を決めるうえで大きな役割を果たしてくれたし、ストーリーのオリジナル性やエンターテインメント性を高めてくれた」
 コルトの元カノで現在は映画監督であるジョディ・モレノ役はエミリー・ブラントが、揺れ動く感情をかわいくユーモラスに表現。撮影現場で新たな閃きやアイデアをどんどん取り入れていったとエミリーは楽しそうに笑顔で語る。「私たちの創造力は荒唐無稽な喜劇にまで発展しながらも、最終的には現実的なのに笑えるシーンを集中して作り上げることができた。だからこそこの映画のトーンが私は大好き。理解しやすくて、どこかぎこちなくて、洗練されたカップルとはほど遠い。2人の関係がゴタゴタしているところが一番好きなの」
 プロデューサーのマコーミックもコルトとジョディの関係について語る。「2人の関係がむき出しでリアルなところが最高なの。恋愛におけるつまずきやぎこちなさを描いたインディーズ映画のようで大好きよ。2人の関係性に信ぴょう性を与えている。ゴタゴタしたラブストーリーだけど、だからこそリアルで共感できる。実際、愛というのは素晴らしくゴタゴタしたものだから」
 やり手のプロデューサーでスター俳優トム・ライダーの製作パートナーであるゲイル役はハンナ・ワディンガムが、映画『メタルストーム』のスタント・コーディネーターでコルトの友人であるダン・タッカー役はウィンストン・デュークが、スター俳優トム・ライダー役はアーロン・テイラー=ジョンソンが、劇中劇『メタルストーム』でのトムの相手役でトムのガールフレンドであるイギー・スター役はテリーサ・パーマーが、トムのアシスタントであるアルマ役はステファニー・スーが、それぞれに演じている。

アーロン・テイラー=ジョンソン,ほか

この映画は1981〜1986年にアメリカでカルト的人気となったテレビシリーズ「俺たち賞金稼ぎ!!フォール・ガイ」を原案としている。プロデューサーのガイモン・キャサディや、脚本を執筆し制作総指揮も務めたドリュー・ピアースは、このドラマの大ファンであり、キャラクターや物語に大きな愛情をもって映画化に取り組み、それが映画の面白さの強力な軸になっているとわかる。リーチ監督は映画化にあたり心がけたことについて語る。「本作での目標は、オリジナル版に敬意を表しつつ、ユニークなひねりを加えて独自の物語に進化させることだった。私たちの主人公は、自身のスタント技術が超能力に匹敵すると気づくんだ。ドリューはオリジナル版の探偵的な要素を保ちつつ、ノワール的なニュアンスもうまく加えてくれた」
 ライアンはこの映画について、「スーパーヒーローの話ではなく、それを演じる人々の物語だ」と話し、コルトのキャラクターについて語る。「コルトはブルーカラーのヒーローで、いろんな意味で普通の男だ。失ったものを取り戻そうと奮闘する男で、皆が共感を覚える。彼は何度も立ち上がり、決して諦めないから、自分が逆境に置かれた時にこうありたいと思うような男なんだ」

車が回転、ボートで突っ込み、縛られた後ろ手でボートを操舵、全身火だるま、車で跳躍などなど、アクションの見どころは全編にたっぷりと。この映画でライアンのスタントダブルは複数いて、エンディングではライアン本人と彼のスタント全員で並んだ笑顔のショットも楽しい。ライアンも12階から落ちる冒頭のスタント(高所恐怖症なのに)や、オーストラリアのシドニー・ハーバーブリッジでごみ収集車に引きずられるというかなりハードなシーンを自身で演じている。こうしたカーチェイスはブルースクリーンで撮影されることも多いなか、この映画では実際にハーバーブリッジで撮影。スタントドライバー約50人が参加したという。後半のクライマックスでは、実際に跳ぶために特別にデザインされた車で行われた225フィート(約70メートル)強のカージャンプ、高さ150フィート(約45.72メートル)を飛ぶヘリコプターからのハイフォール(飛び降りスタント)などが迫力だ。なかでも撮影時のスタントでギネス世界記録を更新したことが話題に。これは映画の前半にコルトが海岸でカースタントをキメるシーンで、スタントダブルのローガン・ホラデイが行った“キャノンロール”により車を8回半回転させてギネス世界記録更新となった(これまでの世界記録は、2006年にスタントマンのアダム・カーリーが『007/カジノ・ロワイヤル』で達成した7回転)。近年の映画製作ではアクションシーンにCGIが多く用いられていることは、安全を重視するという意味で悪いことではない。ただ、この映画ではすべて実際に人が行い、本物のスタントを見せる、という製作者たちの強い思いがあったという。リーチ監督は自身がスタントマンとして参加した『マトリックス』の現場を例に挙げ、視覚効果や特殊効果がスタント業界に大変革をもたらしたこと、そしてこの映画で観客に見せたいものについて熱く語る。「『マトリックス』の現場では、スタントの未来像を形成する最先端の技術と共同作業の融合を目の当たりにした。私にとっては、昔ながらのタフさと視覚効果の進化という両方の要素をスタントに取り入れるのが自然だった。だから今回の『フォールガイ』では、スタント・パフォーマーだった私自身の初期のキャリアに敬意を表しているんだ。視覚効果も取り入れているが、本作のスタントはすべて実際に身体を使って行われたものだ。ある意味忘れられた技術になってしまったスタント技術を取り入れ、スタント業界の精神に忠実なアクションを観客に見せたかった」
 また劇中では、KISSの「I Was Made For Lovin' You」や、テイラー・スウィフトの「All Too Well (Taylor's Version)」などいろいろな曲が効果的に、やや大げさに使われているのが楽しい。そして007シリーズや『ロッキー』をはじめ、さまざまな映画へのオマージュが感じられるシーンがたくさんあるのも愉快だ。

ライアン・ゴズリング

タイトルの“フォールガイ”はスタント用語であり、“高所から落下する人”を示している。劇中ではコルトが落下スタントをするのみならず、恋に落ち、罠に落ち、さまざまに“落ちる”ことで物語が展開していく。このタイトルの意について監督は語る。「この映画ではより広域な意味をもたせている。今では比喩的にさまざまな使われ方をするようになった言葉だからね。私たちの“フォールガイ”はスタントマンとしてカメラの前で体を張って痛手を負うだけでなく、自分がやっていないことで責めを負うハメにもなる。それに深く恋に落ち、最愛の人の心を取り戻すために迷わずリスクを冒す男でもあるんだ」
 2024年4月30日(現地時間)『フォールガイ』のプレミアイベントがカリフォルニア州ロサンゼルスで行われ、オリジナルのドラマ版「俺たち賞金稼ぎ!!フォール・ガイ」で主人公コルトを演じたリー・メジャースも参加。ライアンはこのイベントにて、「この映画はショービジネス界で活躍するスタントコミュニティへのラブレターであり、スタントマンがアカデミー賞を獲得するためのキャンペーンなんだ」と話し、スタントマンへの感謝とこの映画に込められている思いをこのように語った。「8回も火をつけられたり、ヘリコプターから飛び降りたり、車を8回転半横転させてくれたりした人に、どうやって感謝の気持ちを伝えればいいんだろう。この映画はまさにその一例なんだ。スタントマンたちが僕らのために何をしてくれるのか、彼らが映画にどう貢献しているのか、彼らが僕ら全員の為にたくさんのリスクを請け負ってくれている。彼らのストーリーを少しでも伝えることができて本当に光栄だ」
 そしてライアンは「この作品は皆が楽しめるように作っているんだ。これは制作陣へのラブレターでもあり、観客のための映画だよ」と再び話し、映画ファンに笑顔でこのようにメッセージを伝えた。「この映画を観れば、どうやって映画が作られているのかがわかると思う。映画製作者の誰もが、作り方を暴露された!って思うだろうね。そしてデヴィッド(監督)はこの映画を撮るために生まれてきたのだと思う。ラブの要素もうまく織り交ぜてあって、パーフェクトな夏の大作に仕上がっているよ!」

作品データ

公開 2024年8月16日より全国ロードショー
制作年/制作国 2024年 アメリカ
上映時間 2:12
配給 東宝東和
原題 THE FALL GUY
監督・製作 デヴィッド・リーチ
脚本・製作総指揮 ドリュー・ピアース
出演 ライアン・ゴズリング
エミリー・ブラント
ウィンストン・デューク
アーロン・テイラー=ジョンソン
ハンナ・ワディンガム
テリーサ・パーマー
ステファニー・スー
:あつた美希
ライター:あつた美希/Miki Atsuta フリーライター、アロマコーディネーター、クレイセラピスト インストラクター/インタビュー記事、映画コメント、カルチャー全般のレビューなどを執筆。1996年から女性誌を中心に活動し、これまでに取材した人数は600人以上。近年は2015〜2018年に『25ans』にてカルチャーページを、2015〜2019年にフレグランスジャーナル社『アロマトピア』にて“シネマ・アロマ”を、2016〜2018年にプレジデント社『プレジデントウーマン』にてカルチャーページ「大人のスキマ時間」を連載。2018年よりハースト婦人画報社の季刊誌『リシェス』の“LIFESTYLE - NEWS”にてカルチャーを連載中。
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