インサイド・ヘッド2

アニメーション映画の世界興収歴代No.1
思春期の葛藤や混乱を経て自身を受け入れるまでをあたたかく描く、ピクサー最新作

  • 2024/08/08
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インサイド・ヘッド2©2024 Disney/Pixar. All Rights Reserved.

第88回アカデミー賞にて長編アニメーション賞を受賞した前作『インサイド・ヘッド』から9年、ディズニー&ピクサーによるヒット作の続編が完成。監督は『モンスターズ・ユニバーシティ』などでストーリースーパーバイザーを務め、今回が長編監督初となるケルシー・マン、脚本は前作から引き続きメグ・レフォヴが手がける。すくすくと成長し、高校入学を控えたライリーの頭の中で、ある日、“思春期警報”が鳴り響く。そして彼女の幸せを子どもの頃から見守る感情たち、ヨロコビ、カナシミ、ムカムカ、ビビリ、イカリの前に、大人の感情であるシンパイ、イイナー、ダリィ、ハズカシが現れ……。天真爛漫に過ごしてきた少女の頃から成長し、友だちや周囲との関係に悩み、人と比べて不安になったり、自分はダメだと落ち込んだり、複雑な感情が次々とわいてきてどうしようもなく混乱するような時のこと。そうしたことも含め、どんな自分も受け入れていくことをストーリー全体であたたかく表現する、かわいくてポジティブなアニメーションである。

ライリーはパパとママと友だちとホッケーが大好きで、陽気で優しい女の子。ライリーの頭の中では、彼女を子どもの頃から見守る感情たち、ヨロコビ、カナシミ、ムカムカ、ビビリ、イカリが、ライリーが幸せに暮らせるよう今日も奮闘している。高校入学を控え、試合で実力を見込まれたライリーと2人の親友は、ホッケーの名門高校のサマーキャンプに招待される。ここで結果をだせば名門高校のチームに入れるかも、というなか、ライリーの頭の中で“思春期警報”が鳴り響く。困惑するヨロコビたちのもとに、最悪の将来を想像し必要以上に準備するシンパイ、いつも周りの誰かを羨んでいるイイナー、退屈&無気力で片時もスマホを手放さないダリィ、いつもモジモジして恥ずかしがっているハズカシ、4つの大人の感情たちが現れる。そしてシンパイたちはライリーの幸せを願うあまり、ヨロコビたちをビンのなかに閉じ込めて司令部から追放する。

インサイド・ヘッド2

これまでアニメーション映画の世界興行収入で歴代No.1だった『アナと雪の女王2』を追い越し、アニメーション映画史上世界No.1となった話題作。この世界的な大ヒットの理由として、「大人になるとヨロコビは失われていくのか?」という問いや、自分のダメなところも受け入れていこう、という前向きなメッセージが描かれ、アニメーション作品でありながら大人の観客が動員の中心となっていることがあげられている。またプロデューサーのマーク・ニールセンは、2024年7月に東京で行われた来日イベントにて、続編のヒットの理由についてこのように語った。「いろんな人たちが9年経ってライリーに何が起こっているか気になっていたと思います。今回の作品では“シンパイ”という少し複雑な感情について描いていますが、それは子どもや大人、性別や年齢などにかかわらず感じる感情だからだと思います」
 また『トイ・ストーリー』『モンスターズ・インク』『カールじいさんの空飛ぶ家』などを手がけ、監督としてアカデミー賞の長編アニメーション賞を最多受賞、前作『インサイド・ヘッド』で原案・脚本・監督を務めたピクサーのチーフ・クリエイティブ・オフィサーであるピート・ドクターは、日本時間2024年6月11日にアメリカのロサンゼルスで行われたUSプレミアにて、続編の魅力についてこのように語った。「誰にとっても不安と闘っている瞬間がたくさんあります。僕も経験したことだし、みんなも経験することだと思います。『インサイド・ヘッド2』では、それをとても、楽しく意外な方法で描くことができました」
 ピート・ドクターから抜擢され、長編アニメーション初監督となるケルシー・マンは、この作品のテーマ性についてこのように語っている。「この映画は、自分自身を受け入れることをテーマにしています。欠点があっても、ありのままの自分を愛すること。愛されるために完璧である必要はない。それがこの映画の根底にあるテーマです」

思春期となり前作から少し大人になったライリーの声はケンジントン・トールマン(日本語版:横溝菜帆)が、ライリーの頭の中で子どもの頃からライリーの幸せを願い続ける感情、ヨロコビの声はエイミー・ポーラー(小清水亜美)が、内気で泣き虫ながら誰よりもやさしくて仲間思いのカナシミの声は(大竹しのぶ)が、熱い闘争心の持ち主であるイカリの声はルイス・ブラック(浦山迅)が、キライなものやダサイものは断固NGで毒舌な一面もあるムカムカの声はライザ・ラピラ(小松由佳)が、いつも怯えているが迫りくる危険には素早く反応するビビリの声はトニー・ヘイル(落合弘治)が、新たに登場した<大人の感情>で、最悪の将来を想像して必要以上に準備してしまうシンパイの声はマヤ・ホーク(多部未華子)が、いつも周りの誰かを羨むイイナーの声はアヨ・エデビリ(花澤香菜)が、退屈&無気力で片時もスマホを手放さないダリィの声はアデル・エグザルホプロス(坂本真綾)が、いつもモジモジして恥ずかしがっているハズカシの声はポール・ウォルター・ハウザー(マヂカルラブリーの村上)が、ライリーが大好きなゲームキャラクターのランス・スラッシュブレードの声はヨン・イェア(中村悠一)が、ライリーが好きだった子ども番組のキャラクターであるブルーフィーの声はロン・ファンチェス(武内駿輔)が、同番組のポーチーの声はジェームズ・オースティン・ジョンソン(花江夏樹)が、それぞれに表現している。

インサイド・ヘッド2

1979年の発足より、アニメーションによる表現を牽引し続けているピクサー・アニメーション・スタジオの最新作。ピクサーの作品は鮮やかでかわいらしく、生き生きとしたキャラクターたちと、世代や国籍を問わず老若男女が共感できるあたたたかく深みのある物語性が特徴だ。ピクサーのチーフ・クリエイティブ・オフィサーであり、前作『インサイド・ヘッド』の原案・脚本・監督を手がけ、今作ではエグゼクティブ・プロデューサーを務めるピート・ドクターが2024年7月に来日した際、2018年の映画『リメンバー・ミー』で主人公ミゲルの日本版声優を務めた現在19歳(2024年8月に20歳になる)の石橋陽彩と対談。そこでピート・ドクターは思春期の頃に生まれる大人の感情について、このように話した。「私たちはみんな同じだと思います。思春期ぐらいになると環境が変わり、新しい世界に身を置く機会が増えるでしょう。そこに自分はなじめるのだろうか、うまく属することができるのだろうか、という気持ちが生まれるもの。でもそれがあるからこそがんばれるので、悪いことばかりではないんです。シンパイのようにがんばりすぎちゃうこともありますよね」
 またケルシー・マン監督は『インサイド・ヘッド2』に込めた思いについて、前述の来日イベントにてこのように語った。「私のいろんな部分をこの映画に込めましたが、主に描かれるのは自分を受けとめようということです。10代になると自意識が強くなって、自分に厳しくなります。外から自分を批判したりするから新しい感情が出てきて、自分のことを他の人と比べて良くないんじゃないかと思ってしまうんです。ライリーもそうやって悩んで自分を責めてしまうけど、最終的には自分を愛することを学ぶ、そういうことを作品に込めました」

インサイド・ヘッド2

日本版のエンドソングはSEKAI NO OWARIの『プレゼント』であり、オリジナル曲以外の楽曲の使用が許諾されたのは世界で唯一、日本のみ。ヴォーカルのFukaseが「ひとりぼっちにさせないから、大丈夫だよ」と歌うこの曲は、2015年にNHK合唱コンクールの中学生の部の課題曲として制作。上手くいかないことや辛く苦しいことも、いつかきっと自分の人生の「プレゼント」だと思える日が来る、という楽曲のメッセージが映画のテーマと合致していることから決定された。歌詞はSEKAI NO OWARIのSaoriが、葛藤の多かった中学生時代の自分に“プレゼント”したい曲として手がけたという。Saoriは前作『インサイド・ヘッド』の大ファンだったことから、『プレゼント』が続編の日本版エンドソングに決まったことについてこのように話している。「『インサイド・ヘッド』は、私の人生に大きな影響をもたらしてくれた映画でした。頭のなかの感情の仕組みが面白く描かれていて、自分の思考を整理するときにも、作中のキャラクターたちをよく思い出していました。『インサイド・ヘッド2』では、私たちの楽曲『プレゼント』を使用していただけると聞いて、本当に光栄です。家族や仲間たちと映画について話せるのが今から楽しみです」
 ケルシー・マン監督は『プレゼント』を賞賛しこのようにコメントを寄せている。「SEKAI NO OWARIのみなさんの『プレゼント』は、『インサイド・ヘッド2』にとって完璧なエンドソングです! 私たちがこの映画を通じて観客のみなさんに届けたかった最も大切なメッセージは、ダメなところも含めて自分を愛すること、すべての感情はいつか宝物になるということでした。そして、SEKAI NO OWARIのみなさんの楽曲は、そんな映画の大切なメッセージを見事に体現してくれています。こんなにも深く心を打ち、前向きな気持ちにしてくれる楽曲を生み出してくださったことにとても感謝していますし、日本の観客のみなさんに『インサイド・ヘッド2』の最後で『プレゼント』を聴いていただけるのがとても楽しみです」

成長するライリーと共に、迷いや失敗、葛藤や混乱などのなか変化していく感情たちの騒動を描き、個人のアイデンティティが育まれていく過程を映像化するかのような物語。“自分自身を受け入れること”をテーマに、子どもたちや若い世代のみならず、大人たちにも通じるストーリーにより各国の幅広い観客たちに支持されている。最後に、この映画の魅力について、ケルシー・マン監督とプロデューサーのマーク・ニールセンが前述のUSプレミアにて語ったメッセージをお伝えする。
 マーク・ニールセン「『インサイド・ヘッド2』ではライリーの世界を広げ、新しい感情が登場しているけど、とても楽しくて面白いです。とても感動的で、心温まる物語になっています」
 ケルシー・マン監督「欠点が“あるにもかかわらず”ではなく、欠点が“あるから”自分を愛してほしいと語る映画を制作したいと思いました。そのメッセージを、僕は世界に向けて伝えたいのです」

作品データ

公開 2024年8月1日より全国劇場公開
制作年/制作国 2024年 アメリカ
上映時間 1:36
配給 ウォルト・ディズニー・ジャパン
原題 Inside Out 2
監督 ケルシー・マン
脚本 メグ・レフォヴ
日本語吹き替え版 声の出演 大竹しのぶ
多部未華子
横溝菜帆
村上(マヂカルラブリー)
小清水亜美
小松由佳
落合弘治
浦山迅
花澤香菜
坂本真綾
:あつた美希
ライター:あつた美希/Miki Atsuta フリーライター、アロマコーディネーター、クレイセラピスト インストラクター/インタビュー記事、映画コメント、カルチャー全般のレビューなどを執筆。1996年から女性誌を中心に活動し、これまでに取材した人数は600人以上。近年は2015〜2018年に『25ans』にてカルチャーページを、2015〜2019年にフレグランスジャーナル社『アロマトピア』にて“シネマ・アロマ”を、2016〜2018年にプレジデント社『プレジデントウーマン』にてカルチャーページ「大人のスキマ時間」を連載。2018年よりハースト婦人画報社の季刊誌『リシェス』の“LIFESTYLE - NEWS”にてカルチャーを連載中。
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