ニッポン貝人列伝 -時代をつくった貝コレクション-

貝類学の発展に寄与した伝説の貝人たちとそのコレクションに注目

  • 2018/02/22
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南からの黒潮と北からの親潮によって世界的にも貝分布が充実している日本。貝塚が生まれた古墳時代から貝を食べ、道具にするなど生活に利用してきました。その貝を科学的に研究して貝類学の発展に寄与した平瀬與一郎、黒田徳米、鳥羽源藏ら、近代から現代にかけて活躍した研究者や貝のコレクター10人の足跡にスポットを当て、そのコレクションを展観する企画展です。

江戸時代、博物学者らは貝を収集して美しい図譜を編纂します。しかし、科学的な研究はされておらず、本格的な調査は明治時代以降に始まりました。実業家の平瀬與一郎は、日本を中心に中国、台湾から集めた貝で標本を作り、海外の研究者に販売する過程で知識を深め、私財を投じて貝類博物館を開館。その弟子である黒田徳米は、650種の新種を発見し、昭和天皇の貝類コレクションを『相模湾産貝類』として編纂した日本を代表する研究者になります。戦前、南方熊楠と並び称された鳥羽源藏は、貝類学だけでなく、昆虫学、植物学、動物学、地質学、考古学など幅広い分野で功績を残しました。黒田徳米を師に持つ波部忠重は、日本産貝類約6500種のうち、5分の1近くを記載し、日本の貝類学を世界水準に押し上げています。そのほか、小学校の教員にして住職だった吉良哲明や日本一の貝コレクションを築いた河村良介、日本初の女性コレクター山村八重子など、貝に魅了されて学術的に研究したり、収集したりしたことで、日本の近代貝類学は大きく発展しました。

本展では、日本の近代貝類学の黎明期を築いた10人の列伝と、コレクションを周辺の資料とともに紹介します。貝に捧げた人生とも言える生涯をパネルで分かりやすく解説。また、彼らが収集した貝コレクションも一堂に展示します。先人たちの経歴を振り返りながら見る貝標本からは、造形以外の面白さや魅力が感じられます。マニアックな陸貝(かたつむり)、極小の貝、希少な貝など、一時代を築いた礎が貴重な標本から読み取れる内容となっています。

  1. キセルガイ科の標本 (黒田コレクションより) 所蔵:西宮市貝類館 撮影:佐治康生
    キセルガイ科の標本 (黒田コレクションより)
    所蔵:西宮市貝類館
    撮影:佐治康生
  2. 『貝千種(かいちぐさ)』(1914-5、1922)全4巻。所蔵:大阪市立自然史博物館(鳥羽水族館寄託) 撮影:佐治康生
    『貝千種(かいちぐさ)』(1914-5、1922)全4巻。美術に造詣の深かった平瀬與一郎による貝類図鑑。日本の版画技術の粋を尽くした多色刷木版画。出版は木版画、美術出版で知られる京都の「芸艸堂(うんそうどう)」。
    所蔵:大阪市立自然史博物館(鳥羽水族館寄託)
    撮影:佐治康生
  3. 「ナンブヒダリマキマイマイ」(鳥羽コレクション)。所蔵:陸前高田市立博物館 撮影:佐治康生
    「ナンブヒダリマキマイマイ」(鳥羽コレクション)。この貝標本には「日出島 1934」という鳥羽源藏の字が記された封筒が残されている。1936年に黒田徳米とともに新種発表した貝がこれに当たるかと推測されるもの。
    所蔵:陸前高田市立博物館
    撮影:佐治康生
  4. 「オオシマヒオウギ」(河村コレクション)。所蔵:国立科学博物館 撮影:佐治康生
    「オオシマヒオウギ」(河村コレクション)。採集地は奄美大島。河村はお気に入りの貝の標本を、紫色に染めた真綿入りケースに保存していた。これはその一つ。
    所蔵:国立科学博物館
    撮影:佐治康生

開催概要

展覧会名 ニッポン貝人列伝 -時代をつくった貝コレクション-
会期 2018年3月8日(木) 〜 5月26日(土)
休館日 水曜日
時間 10:00〜18:00
会場 LIXILギャラリー
中央区京橋3-6-18 東京建物京橋ビル LIXIL:GINZA 2F 
入場料 無料
公式サイト http://www1.lixil.co.jp/gallery/
問合せ 03-5250-6530

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