日本を代表する“やきもの”の一つを生産、流通の観点から掘り下げる
16〜17世紀に作られた信楽、備前、伊賀、唐津、志野、織部といった桃山様式のやきものは、和物ならではの魅力で日本を代表するやきものの一つとなっています。近年の研究で判明した新しい「流通」と「生産」に注目し、伝世品や新資料を展観しながら斬新なデザインが生み出された背景に迫る企画展です。1989(平成元)年に開催した『桃山の茶陶』展に続く展示となります。
美術史では、桃山時代の終わりを豊臣家が滅亡した1615(慶長20)年としていますが、桃山様式のやきものは、1624(元和10)年まで生産が続けられました。「桃山の茶陶」は「茶の湯に用いられる桃山様式のやきもの」を指し、茶碗や茶入れなどの喫茶用から懐石具や灯火具まで幅広い道具を含んでいます。
16世紀に生まれた和物茶陶は、シンプルな形に力強さが宿っている点が特徴です。16世紀末には生産量も増え、新しい様式が登場。美濃では、黄瀬戸や志野、九州では唐津の生産が始まりました。初期の桃山の茶陶は、一点一点が強い個性を持った作品が多くあります。最盛期である慶長年間から元和年間にかけては生産量が一気に増え、信楽、備前、志野、唐津などの製品に箆目(へらめ:櫛や箆を使って表面に装飾を施す技法)や歪みが加わり、形や意匠が大胆かつ多様化していきます。京都の三条通りの一角に「瀬戸物町(せと物や町)」という日本各地の窯に注文制作してもらったやきものを販売する区画が生まれ、桃山の茶陶も並びました。この瀬戸物町の商人たちが、桃山の茶陶の隆盛に大きく関与したと考えられています。
本展では、4章立てで和物茶陶の誕生から桃山茶陶の流通までを網羅します。16世紀の和物水指を代表する重要文化財〈水指 銘 青海〉に始まり、桃山の茶陶の初期に作られた重要文化財〈黄瀬戸立鼓花入 銘 旅枕〉や、赤土と白土を繋ぎ合わせて成形した鳴海織部の作品、重要文化財〈織部松皮菱形手鉢〉など、各産地の特徴のある作品を通して展観できます。贈答品として用いるため大名が生産や流通に携わっていたものもあり、作品と合わせて流通ルートにも目を向けることで、桃山時代の茶陶の魅力を深く鑑賞できる内容となっています。
展覧会名 | 特別展 「新・桃山の茶陶」 |
---|---|
会期 | 2018年10月20日(土) 〜 12月16日(日) |
休館日 | 月曜日 |
時間 | 10:00〜17:00 ※入館は閉館時間の30分前まで |
会場 | 根津美術館 港区南青山6-5-1 >> 会場の紹介記事はこちら |
入館料 | 一般 1,300円、高大生 1,000円 |
公式サイト | http://www.nezu-muse.or.jp/ |
問合せ | 03-3400-2536 |
記載内容は取材もしくは更新時の情報によるものです。商品の価格や取扱い・営業時間の変更等がございます。