美術批評家ジョン・ラスキンの眼を通して、
19世紀のイギリス美術を概観
1848年イギリスにて、ダンテ・ゲイブリエル・ロセッティ(1828〜1882)、ウィリアム・ホルマン・ハント(1827〜1910)ら7名の画学生によって結成された前衛芸術家集団「ラファエル前派同盟」。彼らは、ラファエロ以降のありふれた感傷的な絵画表現を理想とする保守性が、イギリスの画家を型通りの様式に縛りつけていると主張し、中世美術のように分かりやすく誠実な表現を取り戻そうと、ラファエロ以前に回帰する必要性を訴え“ラファエル前派”を名乗った。当初は悪意のある批評にさらされた彼らの試みを高く評価し、ラファエル前派の精神的な指導者となったのが、美術批評家のジョン・ラスキン(1819〜1900)だ。ラスキンの生誕200年を記念する本展では、彼が見出し当時のアートシーンの中心へと引き上げた、ラファエル前派とその周縁の前衛芸術家たちの作品が海を越えて一堂に会する。
ラスキンは関心の幅が驚くほど広く、難解に思える分野の話題でも生き生きと表現し幅広い支持を獲得。先入観に惑わされず自身の眼と心で考え、正当な評価を下す信念が、数々の前衛アーティストの社会的地位の高まりを後押しした。
例えば、偉大な風景画家として知られるJ.M.W.ターナー(1775〜1851)は、1843年当時、存命する最も優れたイギリス人画家として広く認知される一方で、数年前から、理性による制御を取り払ったかのような荒々しい描き方を実践しており、その独自の表現が強く非難されていた。24歳の青年ラスキンは、自らターナー作品を買い求めコレクションを形成する一方で、この画家を擁護するために、広範な主題を扱った著作集『現代画家論(Modern Painters)』を発表、その地位の確立に大きな役割を果たした。本展では、ターナーの貴重な油彩画・水彩画も多数出品される。
また、ラスキンの芸術論や建築論に心酔するあまり、聖職から芸術の道へと方向転換したエドワード・バーン=ジョーンズ(1833〜1898)の同時代の画家とは一線を画す作品群や、ラスキンの思想が起源にある「アーツ・アンド・クラフツ運動」の先駆者、画家・デザイナーのウィリアム・モリス(1834〜1896)の装飾芸術など、ラスキンの影響下で芸術家として花開いた人物たちにも注目する。
展覧会名 | ラスキン生誕200年記念 ラファエル前派の軌跡展 |
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会期 | 2019年3月14日(木) 〜 6月9日(日) |
休館日 | 月曜日(ただし、4月29日、5月6日、6月3日と、トークフリーデーの3月25日、5月27日は開館) |
時間 | 10:00〜18:00 ※祝日を除く金曜、第2水曜、6月3日〜7日は21:00まで ※入館は閉館時間の30分前まで |
会場 | 三菱一号館美術館 千代田区丸の内2-6-2 |
入場料 | 一般 1,700円、高大生 1,000円、中学生以下無料 |
公式サイト | https://mimt.jp |
問合せ | 03-5777-8600 (ハローダイヤル) |
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