エレガントな陶板から、迫力のモザイク壁画まで
北欧・フィンランドのイメージを刷新するセラミックの世界
フィンランドを代表するセラミックアーティスト、ルート・ブリュック(1916〜1999)。名窯アラビアの専属アーティストとして約50年にわたって活躍し、初期の愛らしい陶板から膨大なピースを組み合わせた晩年の迫力あるモザイク壁画まで、幅広い作品を手がけた人物として知られている。作品の重厚でエレガントな釉薬の輝きと、独自の自然観にもとづく繊細な図や形態は、今も多くの人々を魅了している。本展は、約200点のセラミックやテキスタイルなどを通じて、その多彩な仕事を日本で初めて網羅する展覧会となる。
蝶類の研究者で画家でもあった父の影響で自然や美術に親しみ、学生時代は建築家になりたいという夢を持ったブリュックだが、周囲から反対されて断念。グラフィックデザインに転向すると、その繊細で詩的な世界観がアラビア製陶所の目にとまり、1942年に美術部門のアーティストとして入所する。
1950年前後に職人たちと共に独自の成型技術を開発し、巧みな釉薬技法とスタンプやエングレービングによる加飾でオリジナルの陶板をつくり、イタリアのデザイン展(ミラノ・トリエンナーレ)でグランプリを受賞するなど、美的価値を追求したアプライドアート(応用美術)として高く評価された。
1970年代後半からは、教会や市庁舎など公共建築のための大型壁画を手がけ、数千数万という膨大な数のタイルを手作業で組み合わせた、繊細さと力強さが共存するモザイク壁画を制作。これらは、高度な技術と類まれな造形・色彩感覚が融合した、ブリュックの芸術の真骨頂ともいえる。
初期と後期でドラマティックに変わる作風の謎、たしかな伝統技術に裏打ちされた細やかな凹凸による動き、詩的な品格を漂わせる色使いなど、実物の作品は「明るく、かわいい」印象で語られがちな北欧・フィンランドのイメージを刷新する、いくつもの発見を与えてくれるだろう。また、作品の空間効果にこだわったブリュックにちなんだ、オリジナルの展示壁と展示台によるダイナミックな展示構成も見どころだ。
展覧会名 | ルート・ブリュック 蝶の軌跡 |
---|---|
会期 | 2019年4月27日(土) 〜 6月16日(日) |
休館日 | 月曜日(ただし4月29日、5月6日、6月10日は開館)、5月7日(火) |
時間 | 10:00〜18:00(金曜は20:00まで) ※入館は閉館時間の30分前まで |
会場 | 東京ステーションギャラリー 千代田区丸の内1-9-1 |
入館料 | 一般 1,100円、高大生 900円、中学生以下無料 |
公式サイト | rutbryk.jp |
問合せ | 03-3212-2485 |
記載内容は取材もしくは更新時の情報によるものです。商品の価格や取扱い・営業時間の変更等がございます。