“デザイン”とはなんだ?その存在を所蔵作品約120点から再考
“デザイン”という言葉が私たちの生活に定着し、さまざまな場面で聞かれるようになった今日。普段何気なく口にしつつも、ふと考えてみると、その定義や意味合いは状況や場所、人によって変化する、つかみどころのない存在だということに気づく。東京国立近代美術館工芸館では、所蔵するデザイン・工芸作品の中から約120点を選りすぐり、国境、領域、時間という3つの視点でデザインを考える展覧会を開催。
現代では、世界のさまざまな場所で同じものが手に入るようになり、デザインにおける国の違いを感じることは少なくなった。しかし、近代デザインの歴史に目を向けると、大量生産の起点をなしたイギリスの産業革命、フランスのアール・ヌーヴォーやアール・デコといった装飾様式、ドイツの美術学校バウハウスの提唱した規格化、といったように国ごとに様式や思想は異なっていたことが分かる。その国境によるデザインの違いを、インダストリアルデザイナーの先駆者と呼ばれるクリストファー・ドレッサーや、アール・デコ様式の家具デザインで知られるピエール・シャローなどの作品で考察する。
また、実用的でありながら美術品でもあるデザインや、商業デザインなど、美術と実用双方の領域に影響しあう作品も、デザインを考える上で重要になってくる。例えば、陶芸家の富本憲吉は、一品制作で培った技術や知識を安価で量産に適した日常の器作りに活かすことに強い関心を示し、彫刻家のイサム・ノグチは、代表作である照明シリーズ《あかり》を光の彫刻でもあるとしている。新しい創造への出路を切り開くきっかけになった芸術領域の拡張を、彼らの作品から感じ取ることができるだろう。イタリアデザイン界の巨匠エンツォ・マーリが、1973年に日用品メーカーのダネーゼ社から発表した陶磁器のシリーズSAMOSは、約30年ぶりに工芸館で全シリーズ展示される。
そして、デザインの寿命にも着目。発売から長い年数が経過してもなお、人々に親しまれている家具や日用品のデザインが多く存在する一方で、ポスターデザインのように、一定期間を過ぎるとその役目が終わるものもある。柳宗理の《バタフライ・スツール》や森正洋の《G型しょうゆさし》といったロングライフデザインの代表的な例と共に、平成元年に制作されたポスターを展示してデザインと時間の関係性についても考える。
展覧会名 | デザインの(居)場所 |
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会期 | 2019年5月21日(火) 〜 6月30日(日) |
休館日 | 月曜日 |
時間 | 10:00〜17:00 ※入館は閉館の30分前まで |
会場 | 東京国立近代美術館工芸館 千代田区北の丸公園1-1 |
入館料 | 一般 250円、大学生 130円 無料観覧日:6月2日(日) |
公式サイト | https://www.momat.go.jp/cg/exhibition/wheredesign2019/ |
問合せ | 03-5777-8600(ハローダイヤル) |
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