初期の前衛オブジェから美しい色絵表現の到達点まで。
天皇・皇后両陛下の晩餐に用いた「幻の食器」は10年ぶりに公開!
陶磁器でありながら、絵画のような空間の広がりと複雑な色彩の重なりをみせる独自の表現「釉描加彩」を創出するなど、戦後日本の陶芸界を牽引した藤本能道(1919〜1992)。その生誕100年を記念し、菊池コレクションが収蔵する陶磁器作品のほか、特別出品の初期作品や新出の資料などで、その仕事を振り返る展覧会が開催。
藤本は陸軍中将の祖父、大蔵省書記官の父をもつ家に生まれながら芸術の道を志し、やがて陶芸家として色絵磁器の技を極め、現代陶芸の世界に大きな足跡を残した。智美術館の創立者・菊池智は藤本との交流も深く、なかでも色絵磁器の作品は力を入れて蒐集。また、1992年には作家の生前最後の個展が智美術館の立つ西久保ビル敷地内で開催された。こうした縁により菊池コレクションには、藤本が色絵磁器に専心する1970年代から最晩年の90年代までの、質量ともに充実した作品群が収蔵されている。本展では、色絵磁器以前の初期作品から各時期の作品を並べ、創作の深まりと、藤本の色絵表現の到達点を紹介する。
見どころは、傑作「幻の食器」の10年ぶりの展示・公開。1976年、昭和天皇・皇后両陛下の晩餐用にと、菊池智が藤本に制作を依頼した総数230ピースからなるディナーセットで、鳥や花の絵皿は一点ずつ異なる絵柄でデザインされるなど、精魂込めた造りが特徴。その晩餐の一夜のみ使用された後は秘蔵され、公開の機会が限られてきたため、通称「幻の食器」と呼ばれており、今回が10年ぶりの公開となる。
また、色絵以前の希少な初期作品、素描などにも注目したい。太平洋戦争後には鹿児島で窯業指導に従事、その後京都に移り、作陶家の団体「走泥社」や、多分野の作家が参加した「モダンアート協会」で前衛的な陶彫を発表するなど、1950〜60年代の活動は多岐にわたった。本展では作家の工房があった縁の地、青梅の市立美術館に残る1950年代の希少な作品《もだえ(オブジェ)》や、未公開のまま作家宅に残された素描や水彩などが特別出品。改めて色絵磁器以前の仕事にも光をあて、戦後の時代の流行や文化的潮流の中で自身の作陶を模索した、若き陶芸家の姿を探る。
そして、最晩年の作品群《霜白釉釉描色絵金彩焰と蛾図扁壺》などからは、作家の心象風景を反映し、具象を越えた濃密な世界観を感じることができる。
展覧会名 | 生誕100年 藤本能道 ― 生命を描いた陶芸家 |
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会期 | 2019年8月3日(土) 〜 12月1日(日) |
休館日 | 月曜日(ただし祝日は開館)、翌平日休館 |
時間 | 11:00〜18:00 ※入館は閉館時間の30分前まで |
会場 | 菊池寛実記念 智美術館 港区虎ノ門4-1-35 西久保ビルB1F >> 会場の紹介記事はこちら |
入館料 | 一般 1,000円、大学生 800円、小中高生 500円 |
公式サイト | http://www.musee-tomo.or.jp/ |
問合せ | 03-5733-5131 |
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