現代美術における文学のさまざまな表れ方を日本の現代美術家6人の作品から考察
国内外で活躍する日本の現代美術家(北島敬三、小林エリカ、ミヤギフトシ、田村友一郎、豊嶋康子、山城知佳子)の6名による、「文学」をテーマに掲げたグループ展。
この6名の作家は1950年代から1980年代生まれまでと幅広く、表現方法も映像や写真を用いたインスタレーションをはじめ多岐にわたる。そんな作家たちに共通するのは、作品のうちに文学の要素が色濃く反映されていることだ。しかし、本展でいう文学とは、一般に芸術ジャンル上で分類される文学、つまり書物の形態をとる文学作品だけを示すわけではない。古代ローマの詩人ホラティウスが『詩論』で記した「詩は絵のごとく」という一節は、詩と絵画という芸術ジャンルに密接な関係があることを示し、詩や文学のような言語芸術と、絵画や彫刻のような視覚芸術との類縁関係を巡る議論は、さまざまな時代と場所で繰り広げられてきた。このことからも、日本の現代美術における文学のさまざまな表れ方を、本展で考察するのは良い機会となるだろう。
1983年に木村伊兵衛写真賞を受賞した北島敬三は、沖縄のコザ、東京、ニューヨーク、東欧、ソ連において撮影されたスナップショットのシリーズや、白い衣装を身に纏った人物を定点観測するかのように撮影する「PORTRAITS」のシリーズなどで知られる。小林エリカは、目に見えない物、時間や歴史、家族や記憶をモティーフとして作品を制作。著作には、小説『マダム・キュリーと朝食を』、放射能の科学史を巡るマンガ『光の子ども1, 2』などがあり、近年ではインスタレーションも多数発表。同じく、小説『ディスタント』など著書を持つミヤギフトシは、映像、写真、オブジェクト、テキストなどを用いて、社会政治的事象、とりわけセクシュアリティとマイノリティの問題を俎上に載せた作品を手掛ける。一方、既存のイメージやオブジェクトを起点にしたインスタレーションやパフォーマンスを手掛ける田村友一郎は、現実と虚構を交差させつつ多層的な物語を構築することを得意とする。また、豊嶋康子は、ソロバン、サイコロ、安全ピンなどの既製品、あるいは鉛筆、油絵具、木枠など美術に馴染みのある物質など幅広い素材に手を加え、これら事物の中に複数の見え方が表出する作品を発表。沖縄生まれ・在住の山城知佳子は、写真、映像、パフォーマンス、インスタレーションによって沖縄における米軍基地や戦争の問題を掘り下げ、接触と分離、生と死などの概念の境界を問い直す作品を手掛けている。
展覧会名 | 話しているのは誰?現代美術に潜む文学 |
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会期 | 2019年8月28日(水) 〜 11月11日(月) |
休館日 | 火曜日(ただし10月22日は開館)、10月23日(水) |
時間 | 10:00〜18:00 ※金・土曜日は、8・9月は21:00まで、10・11月は20:00まで ※入場は閉館時間の30分前まで |
会場 | 国立新美術館 企画展示室1E 港区六本木7-22-2 >> 会場の紹介記事はこちら |
観覧料 | 一般 1,000円、大学生 500円 ※11月3日(月・祝)は無料 ※高校生、18歳未満は無料(要証明) ※障害者手帳をご持参の方(付添の方一名含む)は無料 |
公式サイト | https://www.nact.jp |
問合せ | 03-5777-8600 (ハローダイヤル) |
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