江戸に茶の湯を広めた茶人・川上不白の魅力を、茶道具や縁の品々から探る
千家流の茶を江戸に広め、不白流の茶家の祖となった川上不白(1719〜1807)。その生誕300年を記念し、縁の品や不白を取りまく人々との関わり、自身でしたためた書画など多角的に展観し、江戸後期から近代にかけて大きな支持を得た不白の茶の湯の魅力を探る展覧会。
享保18年、紀州藩の江戸詰家老・水野家の家臣の次男で、仕官して江戸にあった16歳の不白は京に上り、紀州徳川家の茶道師範を務めていた表千家七代如心斎天然宗左に入門。上京した不白は茶の道に精進し、早々に如心斎の信任を獲得、ついには、千家における正当な継承者であることを証する「茶湯正脈」を授けられる。そして、千家流の茶人として大成して江戸に戻った不白のもとには、大名や旗本、豪商、市井の人々までもが続々とその門をたたき、江戸の茶の湯を隆盛に導くことになる。
展示では、如心斎との師弟関係や、不白好みの道具はもとより、大名をはじめとする門人や周辺の職人たちとの関わり、その人柄を反映したような魅力的な書画、そして根津美術館のコレクションの礎を築いた根津青山ら近代数寄者への影響までを多角的に紹介。
不白の茶道具の醍醐味は、その造形の奔放さと力強さに内在する深い教養と繊細さにある。好んで書いた「只」の文字が大胆に入った《赤樂茶碗 銘 只》や、一双で作られているが茶碗の形が違う《赤黒一双茶碗》など自作の茶碗をはじめ、強い関心を持っていた鶏頭図を意匠に用いた《鶏頭蒔絵棗》など好みの棗(抹茶を入れる器)まで、その美意識が強くあらわれた茶道具は必見だ。
また、不白が江戸に下ることを決めた時に、大坂(大阪)の豪商で後援者であった鴻池家から餞別として贈られた《黒楽茶碗 銘 紙屋黒》や、来日した中国僧・清拙正澄の絶筆で不白の名声の高さがうかがえる《清拙正澄墨蹟 遺偈》(国宝)など、縁の品々も展示される。
晩年を中心に自らがしたためた書や画にも、禅の味わいや俳諧的なユーモアが溢れており、不白の内面的な魅力を垣間見ることができる。
展覧会名 | 特別展 江戸の茶の湯 川上不白 生誕三百年 |
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会期 | 2019年11月16(土) 〜 12月23日(月) |
休館日 | 月曜日(ただし12月23日は開館) |
時間 | 10:00〜17:00 ※入館は閉館時間の30分前まで |
会場 | 根津美術館 港区南青山6-5-1 >> 会場の紹介記事はこちら |
入館料 | 一般 1,300円、学生 1,000円 |
公式サイト | http://www.nezu-muse.or.jp/ |
問合せ | 03-3400-2536 |
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