忘れられた稀代の前衛画家・坂田一男を、造形作家・岡ア乾二郎が読み解く
キュビスム以降の抽象絵画の展開を核心で理解し、その可能性を究極まで推しすすめた画家・坂田一男(1889〜1956)。世界的にも稀有な高い次元に到達した作品を残しながら、その仕事は生前・没後を通じて故郷の岡山県以外で大きく紹介されることはほとんどなく、忘却されていたといっても過言ではない。本展では、そんな知る人ぞ知る突出した前衛画家・坂田一男を、当代随一の近代美術史研究者でもある造形作家・岡ア乾二郎が読み解く。
日本では岸田劉生の画業がピークに達し、マヴォをはじめとする大正アヴァンギャルドがしのぎを削っていた1920年代。坂田は渡仏、同時代の抽象絵画と出会い、10年以上にわたってフランスで最前衛の画家として活躍した。1933年の帰国後、故郷の岡山で制作に励み、また前衛グループ「アヴァンギャルド岡山」を結成し後進の育成にも努めたが、その絵が評価されることはなく、「ワシの絵は50年経ったら分かるようになる」とうそぶいたという。
自身の著書の中で、当時は理解されなかった彼の前衛表現に焦点を当て、その複雑な空間操作を解析したのが、本展監修者の岡ア乾二郎だ。ジョルジョ・モランディなど坂田と同世代の画家や、ジャスパー・ジョーンズなど意外な作家たちを組み合わせて比較展示することで、現在の画家としての坂田一男の全貌を初めて提示する。
また、坂田のアトリエは海抜の低い干拓地にあり、1944年と1954年の二度にわたって水害にみまわれ、多数の作品が破損、あるいは失われている。しかし彼は、冠水した作品に自ら修復を施し加筆するなど、冠水の被害を逆に創作に生かすことで、凄みを感じさせるものに昇華している。
本展のタイトル「捲土重来(一度敗れたものが勢いを盛り返すさま)」は、歴史に埋もれてしまった坂田一男という画家を掘り起こす意味であるとともに、ひとたび受けた破壊を復活に転化させるような驚くべき作品にも重ねられている。絵画そして世界の巻き返し=再生はまだ可能だ。
展覧会名 | 坂田一男 捲土重来(けんどちょうらい) |
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会期 | 2019年12月7日(土) 〜 2020年1月26日(日) |
休館日 | 月曜日(ただし1月13日、1月20日は開館)、12月29日(日) 〜 1月1日(水)、1月14日(火) |
時間 | 10:00〜18:00(金曜は20:00まで) ※入館は閉館時間の30分前まで |
会場 | 東京ステーションギャラリー 千代田区丸の内1-9-1 |
入館料 | 一般 1,000円、高大生 800円、中学生以下無料 |
公式サイト | http://www.ejrcf.or.jp/gallery/ |
問合せ | 03-3212-2485 |
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