最も根源的でシンプルな表現「ドローイング」を、さまざまな文脈から再考
線を核とするさまざまな表現を、現代におけるドローイングと捉え、その可能性を「言葉とイメージ」「空間へのまなざし」「水をめぐるヴィジョン」の文脈から再考しようとする展覧会。
デジタル化のすすむ今日、手を介したドローイングの孕む意義は逆に増大していると言える。それは、完成した作品に至る準備段階のものというよりも、常に変化していく過程にある、人や社会のありようそのものを示すものだからだ。
本展ではまず、イメージだけでなく手がきの言葉も含めて、ドローイングとして捉え、両者の関係を探っていく。いくつもの挿絵本を手掛けたアンリ・マティス(1869〜1954)の集大成ともいえる作品『ジャズ』や、自ら紡いだ現代社会をめぐる批評的な詩文を書の作品として精力的に発表する石川九楊(1945〜)の近作から、言葉とイメージの関係やその間にあるものを再考する。
次の章では、このように平面の上で拡がる線だけでなく、支持体の内部にまで刻まれるものや、空間のなかで構成される線も視野に入れ、空間へのまなざしという観点から、ドローイングの実践を紹介する。一貫した空間へのまなざし、つまり空間へのドローイングを核に彫刻のあり方を再考する戸谷成雄(1947〜)、ホット・グルーガンで糸を壁に糊付し、架空の構築物を想起させる作品を発表する盛圭太(1981〜)、そして、草間彌生(1929〜)の無限の反復に見えるドローイングから、その深度を探る作品も展示される。
さらに、現実を超える想像力の中で、画家たちを捉えて離さなかった、流動的な水をめぐるヴィジョン(想像力による現実を超えるイメージ)というものが、ドローイングの主題として取り上げられてきた点にも注目。地域環境計画の分野のパイオニアとして仕事に従事し、近年では河川や海の水をめぐるヴィジョンをドローイングとして示す磯辺行久(1935〜)、木々の間を水が埋め尽くす大画面の流水図など、古今の画家によるアプローチの中のいくつかの要素をとりあげながら、絵画の可能性を追求する山部泰司(1958〜)の作品が取り上げられる。
最も根源的でシンプルな表現であるドローイングが、複雑化した現代において、どのような意味を持ちどう捉えられるのか。本展が、そのはてしない可能性を探るきっかけとなるだろう。
展覧会名 | ドローイングの可能性 |
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会期 | 2020年6月2日(火) 〜 6月21日(日) |
休館日 | 月曜日 |
時間 | 10:00〜18:00 ※展示室入場は閉館時間の30分前まで |
会場 | 東京都現代美術館 企画展示室3F 江東区三好4-1-1 |
観覧料 | 一般 1,200円、大学生・専門学校生・65歳以上 800円、中高生 600円、小学生以下無料 |
公式サイト | https://www.mot-art-museum.jp/ |
問合せ | 03-5777-8600 (ハローダイヤル) |
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