次に注目すべきはこの人物!江戸の美意識と西洋感覚を兼ね備えた知られざる日本美術の名匠・渡辺省亭
明治から大正にかけて活躍した日本画家・渡辺省亭(1852〜1918)。当時の日本画界では突出したデッサン力や描写力を誇りながらも、明治30年代以降は次第に中央画壇から離れて市井の画家であることを貫いたため、没後は知る人ぞ知る画家となった人物だ。近年、作品の質の高さから再評価の機運が高まり、満を持して、美術館での初の大規模な回顧展が開催される。
嘉永4年、江戸神田佐久間町に生まれた省亭は、16歳で歴史画家・菊池容斎に入門し、筆遣いや写生の基礎を学ぶ。明治11年の万博を機にパリに渡り、ドガをはじめ印象派の画家たちと交流した経験を持つ。繊細で洒脱な花鳥画は、その後、万博への出品やロンドンでの個展などにより海外で高い評価を得る。一方国内では、迎賓館赤坂離宮の七宝額原画を描くなどその実力は認められながらも、明治30年代以降は次第に中央画壇から離れて市井の画家であることを貫いたため、展覧会で紹介される機会が少なくなっていく。しかし人気は依然高く、明治40年代からは同時代で群を抜く高い画料で仕事をし、大正7年に亡くなる直前まで、弟子をとらずひとり注文に応じて旺盛な制作を行った。この展覧会では、海外からの里帰り作品を含め、これまで知られていなかった個人コレクションを中心に、省亭の全画業を紹介する。
見どころは何といっても、西洋人の眼さえも驚かせた美しい花鳥画や、繊細で精緻な表現で生き生きと描かれた動物画。生涯浅草に暮らした省亭は、江戸の美意識を頑なに守るタイプの日本画家だったが、その反面、卓越したデッサン力や描写力は当時の日本画界では突出しており、日本的な情緒と西洋的な写実がみごとに融合した絵画世界が、現代の私たちをも虜にすること間違いなしだ。
さらに、印象派の画家やロンドンっ子をうならせた、海外からの里帰り品にも期待が高まる。特に、《鳥図(枝にとまる鳥)》は、画中に「為ドガース君 省亭席画」とあり、この小品が印象派の画家ドガの目の前で描かれ贈られたものとわかる、貴重な初公開作品だ。日本では無名に近い省亭が、「花鳥画の名手」として海外でいかに高い評価を得ていたかも実感できるだろう。
展覧会名 | 渡辺省亭−欧米を魅了した花鳥画− |
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会期 | 2021年3月27日(土)〜5月23日(日) ※会期中、展示替えあり 前期:3月27日(土)〜4月25日(日) 後期:4月27日(火)〜5月23日(日) |
休館日 | 月曜日(ただし5月3日は開館) |
時間 | 10:00〜17:00 ※入館は閉館時間の30分前まで |
会場 | 東京藝術大学大学美術館 台東区上野公園12-8 |
入館料 | 一般 1,700円、高大生 1,200円、中学生以下無料 ※本展は事前予約制ではありませんが、今後の状況により変更及び入場制限等を実施する可能性があります ※最新の情報は公式サイトをご確認ください |
公式サイト | https://museum.geidai.ac.jp/ |
問合せ | 03-5777-8600 (ハローダイヤル) |
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