企画展 彩られた紙―料紙装飾の世界―

書や絵画に用いられる紙・料紙の美しい装飾世界に、顕微鏡で迫る

  • 2021/03/29
  • イベント
  • アート

書や絵画に用いられる紙・料紙に注目し、その美しい装飾性や魅力に迫る展覧会。奈良時代の写経から江戸時代の大津絵にいたるまでの料紙を、顕微鏡による拡大画像とともに展示する。
 本展は、2020年度に中止となってしまった同名展を再開催するものである。

料紙には、美しく染めた色紙や、下絵を描き金や銀を蒔くなど、華やかな装飾を施したものがある。手漉き紙の場合、つくられたままの紙を生紙きがみといい、これに対し加工された紙は熟紙じゅくしと呼ばれる。また、装飾を施すだけでなく、平滑にするために硬いもので叩いたり、白くする目的でデンプンなどの添加も行われた。このように加工された料紙の表面は、立体的で見た目よりも変化に富んでおり、顕微鏡や斜光線などを用いて観察すると、繊維の形状や配向性、添加物の有無、紙の表面の情報などから、その特性や装飾の技法を明らかにすることができる。
 例えば、国宝《古今和歌集序》の料紙は、竹の繊維を原料とし、表面に布目を付けた上に、さまざまな色の胡粉を塗り、雲母摺りや空摺りの技法で吉祥文様を表現している。さらに、色と文様の組み合わせを考えながら、美しく見えるように仕立てた巻子に本文を書いたものだ。布目の上に書いた文字の線は途切れている箇所が多くあり、平安時代の人々は文字の書きにくさを楽しんでいたかのようにも見える。
 他にも、聖武天皇の筆と伝えられる《賢愚経断簡(大聖武)》 の料紙は、香木を漉き込んでいるといわれた荼毘紙だびしで、原料であるニシキギ科のマユミの樹脂が凝固した粒と、白くするための胡粉、さらに微細な金箔の付着もみえる。正倉院文書の分析から、奈良・天平時代のわずか9年間のみ使用されたと考えられており、高貴な身分の人が使用した特別な料紙として貴重だ。

書や絵画に注目が集まることはあっても、それらを受ける料紙にスポットが当たるのは珍しく、国宝《古今和歌集序》を所蔵する大倉集古館ならではの展示と言える。人々の願いや美意識が反映された各時代の料紙装飾をじっくり鑑賞し、託された祈りや夢、そして美の移り変わりを探求したい。

  1. 国宝「古今和歌集序」 藤原定実筆 (部分) 平安時代・12世紀 ※巻替えあり
    国宝「古今和歌集序」 藤原定実筆 (部分)
    平安時代・12世紀
    ※巻替えあり
  2. 重要文化財「東大寺文書屏風」(部分) 奈良〜平安時代・8〜13世紀 ※全期間展示
    重要文化財「東大寺文書屏風」(部分)
    奈良〜平安時代・8〜13世紀
    ※全期間展示
  3. 「詩書巻」 本阿弥光悦筆 (部分) 江戸時代・17世紀 ※巻替えあり
    「詩書巻」 本阿弥光悦筆 (部分)
    江戸時代・17世紀
    ※全期間展示
  4. 平家納経 模本 田中親美作 (部分 大正〜昭和時代・20世紀 ※全期間展示
    平家納経 模本 田中親美作 (部分)
    大正〜昭和時代・20世紀
    ※巻替えあり

開催概要

展覧会名 企画展 彩られた紙―料紙装飾の世界―
会期 2021年4月6日(火)〜6月6日(日)
※会期中展示替えあり
前期:4月6日(火)〜5月5日(水)
後期:5月7日(金)〜6月6日(日)
※本展は、開催中止となった同名展(2020年4月4日〜5月24日)を再開催するものです
休館日 月曜日(ただし祝日の場合は開館、翌平日休館)、5月6日(木)
時間 10:00〜17:00 ※入館は閉館時間の30分前まで
会場 大倉集古館
港区虎ノ門2-10-3(The Okura Tokyo前)
>> 会場の紹介記事はこちら
入場料 一般 1,000円、高大生 800円、中学生以下無料
公式サイト https://www.shukokan.org/
問合せ 03-5575-5711

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