自分自身に立脚した世界を陶で追求する、萩焼の名門陶家から生まれた異端児
萩焼の名門陶家に生まれ育ちながら、既存の概念にとらわれない自由な制作で自己表現を試みる
陶によるシンボリックかつ具象的な造形で、その時々の自身の心情を形にしてきた三輪龍氣生。もがき苦しむ胸像で自身の苦悩を表し、官能の歓びをヌードの造形に示したかと思えば、乳房の造形で母性への憧憬を形にし、極彩色のドクロには自身の自虐的実存を投影する。他にも、男性と女性を象徴させた造形で生命誕生の現場を造形化する一方、炎と自身が一体となる命の終焉までをも陶に表すのだ。率直ともいえるそれらの作品は、生命への喝采、官能の歓び、苦悩、死についての考察、祈りといった人間の本性といえる普遍的なテーマを示している。
江戸時代から続く萩焼の名門陶家に生まれ育ちながら、茶の湯の世界で親しまれる萩焼の伝統に立脚するというよりも、やきもので自己を表現するために、既存の概念にとらわれない自由な制作を求める三輪。半世紀以上にわたって次々と異なる造形を生み出しており、その形状もさることながら、大きさについても7メートルを超える大作から掌にのるものまで制作内容に合わせて異なる。そこにやきものならではの質感や量感、自身を育む萩の風土や伝統を昇華させて、制作を深めると同時に個性を表現するのが三輪のスタイルだ。
やきものらしさや伝統を否定することなく、それらを自由な造形に昇華させて、あくまで自分自身に立脚した世界を追求する異色の作家。その作品に立ち上がる圧倒的な生命感は、鑑賞者の内奥に潜む感情をも刺激し、命に訴えかけるだろう。

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- [1] 「豊饒の視志」2020年 高55.0 横幅65.0 奥行53.5p (撮影:伊藤晃)
- [2] 「黒のソナチネ」1977年 大阪市立東洋陶磁美術館蔵 高さ45.0 横幅39.0 奥行38.0p (撮影:渞忠之)
- [3] 「やわらかい海 1」1997年 山口県立萩美術館・浦上記念館蔵 高さ59.0 横幅86.0 奥行37.2p (撮影:田中学而)
- [4] 「崩壊と生成」 2020年 高さ101.5p 横幅169.0 奥行73.3p (撮影:伊藤晃)
- [5] 「女帝・荘厳」 2015年 菊池寛実記念 智美術館蔵 高さ43.0 横幅108.0 奥行50.0p (撮影:伊藤ゆうじ)
- ※全て、三輪龍氣生

展覧会名 | 三輪龍氣生の陶 命蠢く |
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会期 | 2021年4月17日(土)〜8月1日(日) 8日(日) ※6月1日(火)より再開、会期延長 |
休館日 | 月曜日(ただし祝日は開館)、翌平日休館 |
時間 | 11:00〜18:00 ※入館は閉館時間の30分前まで |
会場 | 菊池寛実記念 智美術館 港区虎ノ門4-1-35 西久保ビルB1F >> 会場の紹介記事はこちら |
入館料 | 一般 1,100円、大学生 800円、小中高生 500円 |
公式サイト | https://www.musee-tomo.or.jp/ |
問合せ | 03-5733-5131 |
2021年6月1日更新