日本では16年ぶり、東京では初となる美術館での個展
現代アートの巨匠、60年の軌跡
油彩画、写真、デジタルプリント、ガラス、鏡など多岐にわたる素材を用い、具象表現や抽象表現を行き来しながら、人がものを見て認識する原理自体を表すことに、一貫して取り組み続けてきた現代アートの巨匠、ゲルハルト・リヒター(1932-)。90歳を迎えた今年2022年、彼が手放さず大切に手元に置いてきたコレクションや最新のドローイングを含む約110点によって、一貫しつつも多岐にわたる60年の画業を紐解く個展を開催する。美術館での大規模な個展は、日本では16年ぶり、東京では初めてのこととなる。
2012年のオークションで存命作家の最高落札額(当時/2132万ポンド=約27億円)を更新するなど、世界のアートシーンで常に注目を集めてきたリヒター。ベルリンの壁が作られる直前、1961年にドレスデンから西ドイツへ移住し、デュッセルドルフ芸術アカデミーで学び、「資本主義リアリズム」と呼ばれる運動を展開する。そのなかで独自の表現を発表し、徐々にその名が知られるように。その後、イメージの成立条件を問い直す、多岐にわたる作品を通じてドイツ国内のみならず、世界で評価されるようになる。
本展のみどころは、本邦初公開される近年の大作《ビルケナウ》。幅2メートル、高さ2.6メートルの4点の巨大な抽象画からなり、ホロコーストというテーマを下敷きとしている。見た目は抽象絵画だが、絵具の下層には、アウシュヴィッツ・ビルケナウ強制収容所で囚人が隠し撮りした写真を描き写したイメージが隠れている。1960年代以降、ホロコーストという主題に何度か取り組もうと試みたものの、この深刻な問題に対して適切な表現方法を見つけられず、断念してきた。2014年に完成させた本作はリヒターにとっての達成点であり、また転換点にもなった最重要作品である。
また、リヒターの代名詞のようなシリーズ「アブストラクト・ペインティング」のほか、写真を忠実に描いた「フォト・ペインティング」、写真に油絵具などを塗りつけた「オイル・オン・フォト」、近年のドローイングなど、多種多様な作品が一堂に紹介されているのも大きなみどころである。
今回の展示では、特定の順路に縛られず、来場者が自由にそれぞれのシリーズを往還しながら鑑賞できる空間を創出している。彼が生み出した一つひとつの作品にじっくり時間をかけて対峙してみたい。
展覧会名 | ゲルハルト・リヒター展 |
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会期 | 2022年6月7日(火)〜10月2日(日) |
休館日 | 月曜日(ただし7月18日、9月19日は開館)、7月19日(火)、9月20日(火) |
時間 | 10:00〜17:00(金・土曜日は20:00まで) ※入館は閉館時間の30分前まで |
会場 | 東京国立近代美術館 千代田区北の丸公園3-1 >> 会場の紹介記事はこちら |
観覧料 | 一般 2,200円、大学生 1,200円、高校生 700円、中学生以下無料 ※詳細はこちらをご確認ください |
公式サイト | https://richter.exhibit.jp/ |
問合せ | 050-5541-8600(ハローダイヤル) |
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