生誕140年 ふたつの旅 青木繁×坂本繁二郎

対照的な運命を辿った青木と坂本、66年ぶりの二人展
幻の作品群を含む代表作を一堂公開

  • 2022/08/10
  • イベント
  • アート

1882(明治15)年、現在の福岡県久留米市に生まれた青木繁(1882-1911)と坂本繁二郎(1882-1969)。生誕140年という記念すべき年に二人の特徴や関係性を表す作品を中心に、それぞれの生涯をときに交差させながら「ふたつの旅」をひもとく展覧会が開催。

青木と坂本は、ともに同じ高等小学校で学び、同じ洋画塾で画家を志した。日本の洋画が成熟へと向かう時代の流れのなかで、それぞれに独自の作風を探求する。
 青木は東京美術学校(現東京藝術大学)在学中に画壇にデビューし、美術と文学において浪漫主義的風潮が高まる時代のなか、《海の幸》(1904年)で注目を集め、若くして評価される。しかし、華々しいデビューとは対照的に晩年は九州各地を放浪し、中央画壇への復帰も叶わず28歳という短い生涯を終える。
 一方、坂本は青木に触発されて上京し、数年遅れてデビューする。パリ留学後は福岡へ戻り、87歳で亡くなるまで長きにわたって、馬・静物・月などを題材にこつこつと制作に励み、静謐な世界観を築いた。

青木夭折後、ブリヂストンタイヤ(現・ブリヂストン)の創業者・石橋正二郎は、高等小学校時代の師である坂本の、夭折した青木の作品が散逸するのを惜しみ、作品を集めて美術館を建てて欲しいという願いを聞き、青木作品の収集を進める。それらは、1952年(昭和27年)に創設されたブリヂストン美術館(現アーティゾン美術館)で公開され、1956年、石橋美術館(現久留米市美術館)開館の年に、はじめての二人展「青木繁・坂本繁二郎作品展覧会」が開催される。二人展はそれ以来66年ぶりの開催となり、借用作品も含め約250点の作品で構成される本展は、代表作が一堂に会する貴重な機会となる。
 特に見どころは、40年ぶりにまとめて公開される、伎楽や舞楽などの仮面を写した「仮面スケッチ」と呼ばれる青木の作品群。同じく40年ぶりの公開となる坂本の滞欧作《眠れる少女》。第4章では、二人が唯一同じ題材をモティーフにしたとされる能面を描いた作品が観覧できるのも興味深い。

展覧会の最後には、二人が最晩年に描いた作品が展示されている。海上を照らす朝日が描かれた青木《朝日》と、雲に隠れながらも穏やかな光を放つ月が描かれた坂本《幽光》。
 朝日と月という対照的な主題のように、それぞれ対照的な運命を辿った二人の時に交差し、響きあう作品の競演をご覧頂きたい。

  1. 坂本繁二郎《放牧三馬》1932年 油彩・カンヴァス
  2. 坂本繁二郎《能面と鼓の胴》1962年 油彩・カンヴァス
  3. 青木繁《行道面》1900-03年頃 鉛筆水彩・紙 *後期のみ展示
  4. 青木繁《わだつみのいろこの宮》1907年 油彩・カンヴァス 重要文化財
  5. 青木繁《海の幸》1904年 油彩・カンヴァス 重要文化財
  1. 坂本繁二郎《放牧三馬》1932年 油彩・カンヴァス
  2. 坂本繁二郎《能面と鼓の胴》1962年 油彩・カンヴァス
  3. 青木繁《行道面》1900-03年頃 鉛筆水彩・紙 ※後期のみ展示
  4. 青木繁《わだつみのいろこの宮》1907年 油彩・カンヴァス 重要文化財
  5. 青木繁《海の幸》1904年 油彩・カンヴァス 重要文化財
  6. ※すべて、石橋財団アーティゾン美術館蔵

開催概要

展覧会名 生誕140年 ふたつの旅 青木繁×坂本繁二郎
会期 2022年7月30日(土)〜10月16日(日)
※会期中、展示替えあり
前期:7月30日(土)〜9月11日(日)
後期:9月13日(火)〜10月16日(日)
休館日 月曜日(9月19日、10月10日は開館)、9月20日(火)、10月11日(火)
時間 10:00〜18:00
※9月23日を除く金曜日は20:00まで
※入館は閉館の30分前まで
会場 アーティゾン美術館 6・5階展示室
中央区京橋1-7-2
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入館料 【ウェブ予約チケット】1,600円
【当日チケット(窓口販売)】1,800円
※高大専門生無料(要ウェブ予約)、中学生以下無料(予約不要)
※日時指定予約制
※当日チケット:ウェブ予約チケットが完売していない場合のみ窓口で販売
※詳細は公式サイトのチケット情報をご覧ください
公式サイト https://www.artizon.museum/
問合せ 050-5541-8600(ハローダイヤル)

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