


両国駅から徒歩数分、国技館の隣に立つ「江戸東京博物館」。大きな柱で建物を浮かせた独特な形は、高床式の倉をイメージしているのだとか。江戸から東京に至る歴史を原寸大の模型などで体験でき、年間約90万人が訪れる人気施設だ。
5・6Fの常設展示室は約9,000㎡と広大で、原寸大模型とジオラマを合わせて約50点が並ぶ。スタートは6Fから。吹き抜けに日本橋(復元)がかかり、渡った先に大名屋敷、町人地、江戸城大広間・松の廊下・白書院の3つの模型が同じ縮尺1/30であり、規模の違いが一目瞭然。隣の幕末の江戸城全景模型では、表側と大奥側を繋ぐ御鈴廊下、大名たちが将軍と謁見する際に通った松の廊下などが確認できて“何となく大きい江戸城”のイメージがグッと具現化できる。
5Fへ降りると、実寸の棟割長屋が現れる。出産風景、指物職人、大工、洗い張り、寺子屋の5戸が再現されているが、どれも狭さが半端ない。まさに「壁に耳あり…」といった様相だ。実寸の火消の纏(複製)は実際に持ち上げられるが、約15kgもあって当時の重労働が身に染みる。年間収支、季節行事、食べ物、流行した疫病など個人単位から、商業や治水などの行政単位まで統計やパネル展示を読み込むほど、リアルな江戸生活が見えて面白い。急ぎ足なら、三井越後屋江戸本店(模型)の店頭で現金販売する様子を眺め、棒手振や千両箱の体験だけでもお試しを。高さ約8mある神田明神山車(模型)に気を取られて見落としがちだが、実物が展示されている上水道の木樋(水道管)や井戸なども見応えがある。歌舞伎のコーナーでは『助六由縁江戸櫻』の舞台をそっくり再現。舞台裏の仕掛けが見える模型もあり、『東海道四谷怪談』が披露されている間の大道具係の動きを再現。マジックの種明かしを見ているようで面白い。
日本橋の下をくぐると明治へ。平成までを一気に駆け抜ける。朝野新聞やガス灯の実寸模型で当時の雰囲気たっぷり。だるま自転車、輪タク(自転車タクシー)は、乗車体験も可能。銀座煉瓦街の模型は夜になると一つずつガス灯に明かりをともした様子が分かり、床に展示されている鹿鳴館の模型は上から全体を眺められる。浅草の高層展望塔「凌雲閣」や活動写真館「電気館」、円タクに使用した自動車、和洋折衷住宅といった大掛かりな模型から、懐中時計や丸眼鏡といったサラリーマンの小物類も展示。第二次世界大戦中の窓に目張りをした住宅や風船爆弾、戦後の団地などもあり具体的な生活が想像しやすい。
体験中心の鑑賞も、当時の行政や生活を確かめるじっくりとした鑑賞も思いのまま。映画のセットのような実寸模型で時代の雰囲気をリアルに感じられる、ユニークかつ楽しい学びスポットだ。