港区界隈の個性派 博物館

最新鋭のプラネタリウムも完備!都会の真ん中で見つける科学港区立みなと科学館

港区立みなと科学館1階多目的ロビーから見た施設の様子。9時〜20時と比較的長く開館しているため気軽に訪れることができる。

再開発が進む虎ノ門エリアの中心地、そして2020年6月に開業した虎ノ門ヒルズ駅から徒歩5分以内という活気ある場所に、同じく6月に全館オープンした「港区立みなと科学館」。“まちに息づく科学”の発見と探究をキーワードとした常設展示を中心に、科学の視点を楽しみながら養えるコンテンツを揃えた、都心での学習・体験拠点だ。
 みなと科学館は、地上14階、地下2階建ての新設ビルの1・2階に位置し、中央の真っ白なドーム型の展示室が印象的。その1階部分が常設展示コーナー、2階部分がプラネタリウムホールになっている。その他にも、企画展示やテーブルサイエンスのエリア、実験室、気象庁が運営する気象科学館が展開する。同じ建物内に教育センターや気象庁(2020年11月より)が入居することもあり、港区の教育と科学のプラットホームとして今後注目されそうだ。ちなみに建物は、鞆絵小学校という日本最初の公立小学校の跡地に建てられており、入口には石碑も設置されている。
 また、子どもから大人まで気軽に足を運んでほしいという想いから、施設内は入場無料、唯一有料のプラネタリウムにも、かなりお得になる年間利用券が用意されている。

常設展示コーナーでは、4つのテーマに沿ってまちに息づく科学を紹介する。

今回は、館長の布施直人氏に館内を案内してもらった。まずは、常設展示コーナーへ。こちらは、身の周りにある科学を探究できる参加体験型のエリアで、「こんなところにも科学!?」という驚きと気づきを重視した展示構成になっている。
 円形の室内の中央に配されるのは常設の目玉「みなと・クエストMap」。「こちらは、みなと科学館のオリジナルコンテンツで、港区の地形を模した大型スクリーンに、港区の自然や地形、交通やインフラ、歴史や人などについての情報が映し出され、大まかに港区全体のことを知ることができます。例えば、港区は非常に外国の大使館が多いことで有名ですが、外国人の方がどのエリアにどのぐらい居住しているかなども見ることができますよ。港区に長くお住まい・お勤めの方でも、意外と知らない情報が多いので、見ているだけでも結構楽しめると思います。さらに、擬似ドローンをご自身で操作して、港区内にちりばめられた科学情報を探すリサーチモードもあります。今後は、例えば桜の開花状況など、地域のリアルな情報もどんどん追加していく予定です」と、布施館長が詳しく説明してくれた。

みなと・クエストMap。タッチパネルの操作で自由に港区の情報を閲覧できる。

みなと・クエストMapで港区の概要を把握したら、そこから放射状に広がる「しぜん」「まち」「うみ」「わたし」の4つのテーマ展示へ。生物多様性、まちの中で使われているさまざまな科学技術、海や川にまつわる科学、体にまつわる科学と、港区ならではの身近な題材からまちに息づく科学に目を向けていく。その中でも、実際に体を動かしたり触ったり覗き込んだりと、リアルな体験を通して科学への興味を深めていけるハンズオンの展示物が非常に多いのが特徴だ。さらに、テーマ毎に設置された端末で展示の説明やQ&Aが受けられるので、自身がどれだけ理解できたかをテストすることも可能。

体にまつわる科学を探究する「わたし」の展示コーナーで、からだスキャナーを体験する子ども。

取材当日も小さな子どもたちには体を動かす体験展示が大人気。ハンドルを回して電気をためビルのゴンドラを動かす発電チャレンジ、港区の海をまるで潜水艦に乗っているような気分で水深別に観察できるみなとエレベーターなど、科学を勉強しているというよりは、アトラクションで遊びながら体感的に仕組みを理解し、自然と気づきを得るような、子どもたちに馴染みやすい展示として工夫されている。

40席を備えた実験室。ものづくり、実験、体験教室など利用法は多岐に渡る。

同じ1階にある実験室では、大人のための科学講座やサイエンスカフェ、キッズサイエンス、ワークショップやクラブ活動など、さまざまなイベントが開催される。また、電子顕微鏡をはじめとした、一般の学校ではなかなか揃えられない本格的な実験器具も備えているため、ここでしかできない理科の授業を学校のクラス単位で開催することも可能。港区内の小中高校にとっては、この贅沢な場所を活用しない手はない。「みなと科学館の設立には、教育委員会が一番最初から深く関わっていることが我々の強みでもありますので、このような学校との連携は今後も積極的に行っていきたいと考えております」と、布施館長は教育現場との連携に意欲をみせる。

「みなと昆虫展2020」に合わせて展示された世界最大のカブトムシ・ヘラクレスオオカブト。
テーブルサイエンスでは子どもたちも興味津々。

多目的ロビーでも展示や体験コーナーが開催されている。取材時は、季節毎に開催される企画展として「みなと昆虫展2020」と題し、昆虫界でいま人気を集めるじゅえき太郎氏とのコラボレーション展示が開催中だった。世界の昆虫標本から、ヘラクレスオオカブト、ギラファノコギリクワガタなど貴重なカブトムシとクワガタムシの生体展示、じゅえき太郎氏の絵画展示やワークショップなど、楽しみながら生物の多様性を学べる企画展として来場者を楽しませていた。
 また、企画展の開催期間中に実施されるテーブルサイエンスは、所要時間約10分と手軽なので、鑑賞の合間に立ち寄って息抜きがてら体験することもできる。もちろん、これらも全て無料だ。

気象庁が手がける気象科学館も自由に入場可能。
こちらだけでもたっぷり1時間は滞在できそうなほど展示が充実している。

次は2階へ移動してみよう。気象科学館は、気象庁の同ビルへの移転に先駆けて、みなと科学館の誕生と同時に移転オープン。以前より広くなった展示室には計15個の展示物があり、気象庁の新人予報官になりきってクイズに答えるウェザーミッションや、普通の波と津波を模擬的に発生させる津波シミュレーター、気象庁の仕事や防災情報、日本の四季などを映像で楽しむうずまきシアターなどが見どころだ。どれも本物の気象庁の映像や写真、機器を使い、リアルな気象現象を体験できるため人気が高い。
 また、5億年前のものと推定される南極の石や、髪の毛で湿度を測る毛髪自記湿度計など、マニアックな資料を展示する気象庁コレクションも面白い。
 このように同じエリア内に気象庁の施設が並存し、鑑賞者が体系的に科学の世界を学べるのも、区と各機関の強い連携協定のおかげといえるだろう。

投影時間は、毎日10:00、13:00、16:00、18:30の4回。投影10分前から入場可能。(2020年9月現在)

そして、みなと科学館の目玉の一つともいえるのがプラネタリウムだ。最新鋭の光学式投影機「オルフェウス/ORPHEUS」と、4Kの細密なデジタル映像からなるハイブリッドプラネタリウムとして、800万個を超える美しい星空と臨場感あふれる映像を映し出す。この投影機を撮影するために訪れるプラネタリウムファンも結構多いのだとか。
 投影される番組は、時間帯によって入れ替わり、小惑星探査機「はやぶさ2」を題材にした「HAYABUSA2〜REBORN」など大人がワクワクできる迫力の番組から、「まくまくんの星空大冒険」など未就学児向けのもの、そしてドローンやタイムラプス撮影で港区の空の移り変わりを映したオリジナル番組「港区の時刻(とき)と星空散歩」など4番組が楽しめる。今後も季節毎に新しい番組が追加される予定だ。
 「色々な番組が楽しめるのはもちろんですが、このプラネタリウムの一番のウリは生解説だと思います」とは、プラネタリウム担当の高木氏。「解説員が常駐しておりますので、毎回投影の際に今日の港区の星空など、タイムリーな情報をお伝えすることができます。例えば、夏だとトピックスとして『夏の大三角はどうやって見つけますか?』とか、『明るい星はなんでしょうか?』どを皆さんに問いかけたり、今の時期(8月の取材時)だとちょうどペルセウス座流星群が観察できますので、その解説を入れてみたり。せっかくみなと科学館に来ていただいているので、自動演出の番組だけではない、季節に即した天体現象や今日だけの星空を紹介し、楽しんでいってもらいたいです」

降り注ぐような800万個の星空に現れる季節の星座はもちろん、
港区ならではの東京タワーや六本木ヒルズの見える夜景も美しい。

また、121席からなるドームの前方にはステージがあるため、満点の星空を眺めながらの星空ヨガや、天体の専門家を招いた講演会などの開催も今後視野に入れているそう。
 さらに、虎ノ門というビジネス街の立地も考慮し、お昼休みの時間帯に無料でプラネタリウムを解放し、近隣のワーカーがしばしの休息と癒しを得られるような企画も進行中だとか。「特にプラネタリウムは18時半からの投影もありますので、今日は仕事帰りに飲みに行く代わりに、プラネタリウムで少しリフレッシュしようか、なんて日があっても良いですよね。座席はリクライニングですから、寝ちゃってもいいですね(笑)。プラネタリウムなんて何年も行っていないなという方もたくさんいらっしゃると思うんですよ。そういう方達に、みなと科学館をキッカケにまた科学に興味を持ってもらえたら良いなと思います」と、布施館長は大人にこそぜひ利用してほしいと熱く語る。

館長の布施直人氏。トヨタ自動車の社員として約40年勤めあげ、
トヨタ産業技術記念館の館長も務めるなど、区の施設の館長としては異色の経歴の持ち主だ。

最後に、今後の展望についても話を聞いた。「港区における科学に関する新たな情報の発信拠点として、常に何らかの発見、探究のキッカケをご提供できる場でありたいと思います。そのためにも、今後は港区内の大学、研究機関、医療機関、企業などとも連携を広げていき、多くの人が科学を通して交流できる場となっていきたい。特に港区が連携協定を締結している気象庁や自然科学研究機構のご協力を得て、研究者、科学者の方々と子どもたちが直接触れ合う機会を提供し、自分も将来科学者になりたい!との夢を持ってくれたら、本当に嬉しいですね」

虎ノ門という都市機能が集積する大都会にあえて施設をつくり、自分たちの住む・働く身近な場所にこんなにも科学の種が転がっているんだと気づかせてくれる、みなと科学館。大人は子どもの頃のワクワク感を思い出すような、そして子どもは科学への夢を育むような、そんな体験拠点としてのみなと科学館の役割に今後も期待したい。

港区立みなと科学館(虎ノ門)
※新型コロナウイルス感染症対策として、当面の間、電話による先着事前予約制を導入(入館は1回120分・1日4回の入替制)
外観
港区虎ノ門3-6-9 1・2階
03-6381-5041
料金 入場無料
プラネタリウム観覧料
一般投影 大人600円、小中高校生100円
年間利用券 大人2,000円、小中高校生300円
※未就学児、港区内在住65歳以上の方、
港区内在住障害者およびその介護者1名は無料(要証明書提示)
9:00〜20:00
(プラネタリウムの最終投影は18:30/入館は閉館の30分前まで)
休館日
毎月第2月曜(祝日の場合は翌日休館)、年末年始 ※臨時休館あり
東京メトロ日比谷線「虎ノ門ヒルズ」駅A1、A2出口 徒歩4分、
「神谷町」駅4b出口 徒歩5分
webサイト
2020年8月取材/2020年9月更新