「磁力」を可視化した意欲作 畠依子「MARS」

シュウゴアーツ(六本木6-5-24 complex665 2F)

  • 2020/10/27(火)
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「磁力」を可視化した意欲作 畠依子「MARS」

 ものの構造に対して常に意識的な制作を行うアーティスト・畠依子(たかばたけよりこ)の個展が開催中。

 大学院在学時から、「何を描くか」ではなく「どう描くか」にこだわってきた畠は、絵具とキャンバスの関係性に注目し、細く絞り出した油絵具の線を網状に重ね、キャンバスの織り構造を再生成するような絵画を制作してきた。また、その後は、「風」で絵具を吹き飛ばしたり、「火」で絵具を炙ったりと、科学的・工学的アプローチに基づく実験や検証の末に、偶然つくり出された絵画表現を通して、自身のアーティストとしての幅を拡張してきた。
 そして、本展で畠が挑んだのが「磁力」。「火」の制作を行った際に、焼け焦げて炭化した絵具をみて触発されたという本シリーズは、酸化鉄から成る黒色顔料・マルスブラックと強力な磁力で成立する、意欲的な作品群だ。キャンバス下に磁石を設置し、キャンバス上にマルスブラックで直線を引き重ねることで、まだ乾いていない絵具は磁力の影響を受け、引き寄せられ、弧を描き、逆立つ。遠目に見ると、ある種の規則性を読み取れるが、作品に近づくと、目には見えない力がつくり出した千差万別の造形の美しさに惹きこまれる。

 地球に存在する人知を超えた現象を、キャンバスに落とし込む壮大さと、目に見えないだけで実は毎日身近に起きている小さな変化への気づき―その1枚で鑑賞者をあらゆるフェーズに誘うような、絵画の無限の可能性を感じさせるシリーズだ。

【会期】10月24日(土)〜11月28日(土)
【休廊日】日月祝
【時間】12:00〜18:00

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