隠し剣 鬼の爪 試写会日記 毎週、熱田美希から映画ファンの皆さんへ熱いメッセージ!傑作でも愚作でも、映画ってやっぱり素敵!!
隠し剣 鬼の爪

『たそがれ清兵衛』の山田洋次監督が再び
藤沢周平の世界を映画化した本格時代劇第2弾
純愛と人情がしみじみと胸を打つ、心温まる感動作!



 第76回アカデミー賞で外国語映画賞にノミネートされた『たそがれ清兵衛』から2年、山田洋次監督が再び藤沢周平の原作にて、本格時代劇第2弾を製作。永瀬正敏や松たか子、吉岡秀隆をはじめ豪華キャストを迎え、移りゆく幕末の時代をひたむきに生きる若者たちの姿を描く。「しぇばぁ」といった山形県の庄内弁がのんびりと響く、秋冬の寒い季節にぴったりのあったかい物語。心温まる人情や純愛をしみじみと描いた、本格的な時代劇である。


 幕末のとき。東北の小藩の平侍である片桐宗蔵(永瀬正敏)は、父母を亡くし、貧しくはあったがそれなりに地道に暮らしていた。宗蔵はある日、以前片桐家に奉公にきていたときに、家族同然にかわいがっていた百姓の娘きえ(松たか子)と3年ぶりに再会。裕福な商家に嫁いで幸せになったと思っていた彼女が、痩せ細ってやつれた姿を見て驚く宗蔵。嫁ぎ先の商家がきえをひどく扱っていることを知ると、宗蔵は外聞など無視して、彼女を強引に片桐家へと連れ帰る。それから少し後、宗蔵のもとへ昔の仲間が謀反を起こした、という知らせが届き……。

隠し剣 鬼の爪
 かすかな目線、さもない仕草や言葉に込められた繊細で抑えた表現。何気ないシーンのひとつひとつから、豊かな情感や互いを思いやる気持ちがひしひしと伝わってきて、心を打たれた。こうした抑えた表現で深い心情を訴えかけることができるのは、日本人スタッフによる日本人キャストの作品だからこそではないだろうか。観ていて、とても誇らしい気持ちになった。
隠し剣 鬼の爪
 なにしろ、松たか子がいじらしくていじらしくて、たまらない。前半などは、彼女がスクリーンに映るたびに泣けてきた。これまで特に気にかけたことのない女優さんだったが、本作の彼女にはすっかり参ってしまった。山田作品は今回が初出演という彼女。初めてとは思えないほど、監督の意図や思いを表現しつくしていたように感じられた。今の彼女は、女優として大いに脂がのっている時期なのかもしれない。


 藤沢周平の小説から、『雪明かり』と“隠し剣”シリーズの『隠し剣 鬼の爪』、2つの短編を山田監督が大胆に脚本化した、という本作。そのため『たそがれ〜』同様、舞台は動乱の幕末、主人公は山形県庄内藩の下級武士である。物語の展開や人物像は『たそがれ〜』と似た部分も多いが、それは「同じ世界を描くことにこそ意味がある」と、山田監督があえて意図したことのようだ。また監督は、「『たそがれ清兵衛』よりも剣がクローズアップされる映画」と語り、劇中でも秘伝の剣技“隠し剣 鬼の爪”を描いている。しかし個人的には、殺陣や時代劇のプロである真田広之が主演を務めた『たそがれ〜』の方が剣のインパクトが強く、時代劇初挑戦の永瀬と現代劇が中心の松、2人の共演による本作では、せつない純愛のやりとりの方が強く印象に残った。


 「愛だろっ 愛っ」。むかし話題になったカッコいいCMで、この決めゼリフを言っていたのは永瀬正敏だった……などと、懐かしいことを思い出したりもして。


 “冬ソナ”“セカチュウ”などなど、純愛ブームといわれる昨今。純愛をブームといってしまうのはなんだか無粋な気もするが、出会い系やメル友などのお手軽なノリと背中合わせで、誰もが純粋で劇的な恋愛ドラマを欲している……ということだろうか。そんな今、この物語が感動を呼び、話題となるのはまちがいない! に違いない。
『隠し剣 鬼の爪』 2004年日本映画
データ
2004年8月更新

隠し剣 鬼の爪

2004年10月30日公開
全国松竹・東急系にてロードショー

■2004年 日本映画
■上映時間2:11
■松竹配給
■原作/藤沢周平
■監督/山田洋次
■脚本/山田洋次
朝間義隆
■出演/永瀬正敏
松たか子
吉岡秀隆
田畑智子
小澤征悦
緒形 拳
高島礼子




プロフィール
 
あつた美希 あつた美希
CSホロス株式会社代表取締役。フリーライター、アロマコーディネーター、クレイセラピスト インストラクター/インタビュー記事、映画コメント、カルチャー全般のレビューなどを執筆。これまでに取材した人数は600人以上、2015〜2018年に『25ans』にてカルチャーページを、2015〜2019年にフレグランスジャーナル社『アロマトピア』でコラム“シネマ・アロマ”を担当。2018年よりハースト婦人画報社の季刊誌『リシェス』の“LIFESTYLE - NEWS”にてカルチャーを連載中。
あつた美希