舞台よりすてきな生活 試写会日記 毎週、熱田美希から映画ファンの皆さんへ熱いメッセージ!傑作でも愚作でも、映画ってやっぱり素敵!!
舞台よりすてきな生活

気難しい有名劇作家と快活な妻、その実生活とは?
老若男女さまざまな人々との交流に笑って共感
L.A.を舞台にした軽妙洒脱な人間ドラマ



 L.A.在住の有名劇作家である夫とダンスの先生である妻。傍から見れば、華やかで落ち着いた夫婦でも、実生活となればいろいろあり……。『How to Kill Your Neighbor's Dog(隣人の犬を殺す方法)』というハウツー本的な原題をもつ本作では、大人ならではの悩みやステップにとまどう夫婦の日常を描いた物語。クスクスと笑わせて、最後にはちょっとホロリ。やや地味ながら、軽妙洒脱なウディ・アレンのスタイルを彷彿とさせる、なかなかの良作である。 期の殺伐とした混乱の時代、むきだしになった人々の生き抜く様をときにシリアスに、ときにコミカルに描き出した物語である。


 若くして成功を収めた劇作家のピーターは、ここ数年の間スランプに陥っていた。今回も最新戯曲の上演前でありながら、台本がうまくまとまらない。子供を登場させようとしても、子供嫌いのため、描き方が的外れになってしまうのだ。家では子供好きの妻メラニーから「赤ちゃんがほしい」と迫られ、隣家の犬が夜に吠え続けるためロクに眠ることもできない。そんな中、ピーターが子供に慣れるよう、メラニーはお向かいに越してきた少女エイミーを頻繁に招きいれるように。そうはいくか、と最初は書斎に篭城したピーターだったが、戯曲のヒントになるかも、とエイミーに近づいてみることにする。

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 ことごとくダメだしをされるエイミーとのおままごと、同居している痴呆気味の義母との会話になってない会話、業界人が集う上品と下品まぜこぜの乱痴気パーティ……思わず「あるあるある」と頷いてしまう、ピーターと周囲の人々との交流がとても可笑しい。仕事のスランプ、倦怠気味な夫婦の関係、出産や子育てなどの人生設計、ご近所づきあい、果てはストーカー被害まで、年を重ねるたびに増していくやっかいごとや考えねばならないこと。こうしたことは誰であろうと平等で、自分にだけ降りかかってくるわけじゃない、マイペースに乗り越えていけばいい、という日常的なテーマに親近感を覚えた。そしてピーターとエイミー、年齢や性別を超えた深い友情と相互理解にジンとくる。
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 製作総指揮はロバート・レッドフォード、監督はこれが初の長編となるマイケル・カレスニコ。監督はレッドフォードをはじめとする有名どころの目にとまって出資を受け、主役に大物ケネス・ブラナーを据えることができたことに、心から喜んでいるという。また監督はブラナーに初めて会ったとき、こういわれたのだそう。「君は気づいていないだろうけど、このピーターは、まさに僕そのものだよ(笑)」。


 劇中のピーターはイギリス出身でL.A.在住、禁煙大国のアメリカにいながら愛煙家、車はMG(たしか)、英国人気質に誇りをもつ皮肉屋の男……という設定。アイルランド出身にしてイギリス演劇界で活躍したキャリアをもつブラナーは、かなりのハマリ役だ。またピーターとは対照的に、パーティも子供も大好きな明るい妻のメラニーは、ロビン・ライト・ペンがかわいらしく演じている。


 公開は2004年12月、とちょっと先。これから大作のインフォメーションが続々と届くだろうクリスマス〜正月映画より、ひと足先にご紹介してみた。年末年始の大作に食傷してきたとき、ちょっとひと息つきたいときにでもおすすめしたい、味な作品である。
データ
2004年9月更新

舞台よりすてきな生活

2004年12月上旬公開
銀座テアトルシネマほか
全国順次ロードショー

■2000年 アメリカ映画
■上映時間1:38
■キネティック配給
■監督・脚本/マイケル・カレスニコ
■製作総指揮/ロバート・レッドフォード
■出演/ケネス・ブラナー
ロビン・ライト・ペン
スージー・ホフリヒター
リン・レッドグレーヴ




プロフィール
 
あつた美希 あつた美希
CSホロス株式会社代表取締役。フリーライター、アロマコーディネーター、クレイセラピスト インストラクター/インタビュー記事、映画コメント、カルチャー全般のレビューなどを執筆。これまでに取材した人数は600人以上、2015〜2018年に『25ans』にてカルチャーページを、2015〜2019年にフレグランスジャーナル社『アロマトピア』でコラム“シネマ・アロマ”を担当。2018年よりハースト婦人画報社の季刊誌『リシェス』の“LIFESTYLE - NEWS”にてカルチャーを連載中。
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