ボン・ヴォヤージュ 試写会日記 毎週、熱田美希から映画ファンの皆さんへ熱いメッセージ!傑作でも愚作でも、映画ってやっぱり素敵!!
ボン・ヴォヤージュ

巨匠ラプノーのもと、フランスの才能が結集!
第二次世界大戦の混迷を生き抜く人々が織り成す
体当たりの愛や夢、希望や欲望をアップテンポに描く



 フランス映画というと、アンニュイ、甘ったるい、わかりにくい、通好み……などのイメージだろうか。ましてや、フランスが誇る往年の巨匠に作家、人気の俳優たちが結集した作品、という売り文句となると、なおのこと? しかし本作は、ありがちなステレオタイプとはひと味ちがう。スピーディな展開で退屈させない、エネルギッシュな人間ドラマ。第二次世界大戦初期の殺伐とした混乱の時代、むきだしになった人々の生き抜く様をときにシリアスに、ときにコミカルに描き出した物語である。


 第二次世界大戦の開戦間もない、1940年6月14日のフランス。ナチスドイツ侵攻によりパリが陥落したその日、人気女優ヴィヴィアンヌはトラブルの渦中にいた。しつこくつきまとう男をはずみで殺してしまい、彼女の身代わりに幼馴染の青年オジェが逮捕されてしまっていたのだ。が、政府がパリからボルドーへ緊急に移ると知ると、ヴィヴィアンヌは大臣の愛人となって疎開。一方、刑務所が囚人を移送する際に脱獄したオジェもまた、彼女を追ってボルドーへと向かう。

ボン・ヴォヤージュ
 
 他国へ亡命、混乱に乗じて窃盗、政治活動への参加など、混迷の時勢による社会不安。さまざまな男と女の思惑がからまって、男女関係も奇々怪々、事態は二転三転して思わぬ方向へ。最後に笑うのは誰? “パリ陥落”という大きな時局を迎えたフランスで巻き起こった実話を軸に、エピソードの数々がアップテンポで展開する。


 監督は『シラノ・ド・ベルジュラック』で1950年のアカデミー賞5部門にノミネートされたフランスの巨匠ジャン=ポール・ラプノー。脚本は『イヴォンヌの香り』の作家パトリック・モディアーノ。そしてキャストにイザベル・アジャーニ、ジェラール・ドパルデュー、ヴィルジニー・ルドワイヤン……と、フランスの才能が集結している。
ボン・ヴォヤージュ
 何よりも本作で新鮮だったのは、“万華鏡のような”めくるめく展開。次から次へとよどみなく進みつつ、それが決してうるさくなく、品も悪くならない。CGやVFXなどの最新技術を使ったり早回しをしたりするわけではなく、あくまでも計算し尽くした緻密なカット割と、俳優たちの機敏な演技で軽快に見せる……という人力重視の手法に心を掴まれた。監督は今回、当時の約36時間を描くのに1400カットもの絵コンテを用意。ほぼコンテ通りに撮影を進めたという。ハイテクに頼らずとも、作品を面白くすることはいくらでもできる、ということを72歳のラプノー監督は熟練の腕とセンスで証明したのだ。なんとも心憎い。


 また、エルメスやランバンやランセル、ヴァンクリーフ&アーペルなど、一流メゾンが提供した衣裳やジュエリーも美しい。2004年秋冬の流行であるクラシカルな装いが存分に楽しめるのも、嬉しい限り。


 パリ陥落の時、7歳だったというラプノー監督。「あの時代を、ただ暗く、深刻に描いてしまうと、真実からちょっとずれてしまう。人は暗い時代にも、ユーモアを持ちうることを言っておきたかった」と、力強く語っている。時代を見上げた小さな少年が65年を経て、遂に完成させた作品。そこには史実と、どんな局面でも懲りない、だからこそいとおしい人々の姿が生き生きと映し出されている。
『ボン・ヴォヤージュ』 2003年フランス映画
データ
2004年10月更新

ボン・ヴォヤージュ

2004年12月公開
シャンテシネ、新宿武蔵野館ほか全国ロードショー

■2003年 フランス映画
■上映時間1:55
■アスミック・エース配給
■監督/ジャン=ポール・ラプノー
■脚本/パトリック・モディアーノ
■出演/イザベル・アジャーニ 
ジェラール・ドパルデュー
ヴィルジニー・ルドワイヤン
イヴァン・アタル 
グレゴリ・デランジェール



プロフィール
 
あつた美希 あつた美希
CSホロス株式会社代表取締役。フリーライター、アロマコーディネーター、クレイセラピスト インストラクター/インタビュー記事、映画コメント、カルチャー全般のレビューなどを執筆。これまでに取材した人数は600人以上、2015〜2018年に『25ans』にてカルチャーページを、2015〜2019年にフレグランスジャーナル社『アロマトピア』でコラム“シネマ・アロマ”を担当。2018年よりハースト婦人画報社の季刊誌『リシェス』の“LIFESTYLE - NEWS”にてカルチャーを連載中。
あつた美希