不朽のヒットナンバーに乗せて綴る
稀代の音楽家コール・ポーターの愛と人生
人気ミュージシャンたちの熱唱も見逃せない!
「夜も昼も」「ビギン・ザ・ビギン」をはじめ、生涯で約870曲を作詞・作曲した稀代の音楽家コール・ポーター。1920年代から40年にわたる彼の音楽家としてのキャリア、そして愛や人生を映画化したヒューマン・ストーリー。ポーターのヒットナンバー28曲を全編にちりばめた、ミュージカルファン必見の作品である。
NYのアパートで1人暮らす老齢のコール・ポーターのもと、演出家の友人ゲイブが訪れる。彼に誘われるままポーターが劇場へ行くと、舞台にはポーターの大勢の友人知人、そして亡き愛妻のリンダが現れる。それはまさに、ポーターの半生を顧みる舞台の始まりだった――。
導入は、死を迎えつつあるポーター本人に人生の再現を見せる、という白昼夢のような設定でスタート。1920年代のパリですでに社交界の名士であったポーターの、きらびやかで数奇な半生が事実をもとに綴られてゆく。
当時はタブー視されていた同性愛、彼のすべてを受け入れた聡明で美しく裕福な妻、粋を凝らした贅沢な暮らしぶり……まるで舞台や映画そのもののような人生は、そのままでも充分ドラマティック。とはいえ、そうして実際にあったエピソードを大切にしたためか、ドラマの部分には中だるみを感じさせる部分がしばしばあったように思えた。
本作の見どころは、ポーターのヒットナンバーを人気ミュージシャンたちが歌い上げるシーンの数々。エルヴィス・コステロ、シェリル・クロウ、ナタリー・コールほか、ロックやジャズなど音楽シーンの第一線で活躍する総勢13名が次々と登場。なかでもアラニス・モリセットのように、デカダンでパンチの効いたいつものスタイルとはまったく違う、“ジュディ・ガーランド的な(本人談)”正統派イメージを味わえるのも新鮮で楽しい。
また、ポーター役のケヴィン・クラインも大いに熱演。もともとしっかりとした役作りで知られ、「学生の頃はピアニストや作曲家になる野心を抱いていた」というクライン。撮影前に歌とピアノのレッスンを熱心に重ね、本作では歌もピアノ演奏も吹き替えなしで鮮やかに披露。特に歌に関してはライヴにこだわり、撮影後のスタジオ録音で歌を別録りするのではなく、撮影中に生歌を歌うことを自ら望んで実践したのだそう。そのため全身から音楽が満ちあふれているポーターの姿が、とても自然に豊かに表現されていた。
そして、ファッションにも注目を。1920〜'30年代の社交界でファッションリーダーだった、というポーター夫妻の衣裳の一部は、ジョルジオ・アルマーニ本人が自ら担当。ウェディングドレスや燕尾服、イブニングドレスやジュエリーなどからは、優雅なエレガンスが香り立つ。
個人的には、大好きな曲「Night and Day(夜も昼も)」のエピソードを楽しんだ。セルジオ・メンデス&ブラジル'66のカヴァーで知って以来、10数年間よく聴いている曲のひとつだ。
時代を超えて愛される不朽のナンバーに乗せて展開する、ポーターの愛と人生。天才ならではのエゴイスティックで破滅的なダークサイドは、明るく軽やかなメロディをうけて強いコントラストを焼き付ける。そのくっきりとしたトーンに彩られた彼の物語は、観る者の心に深い余韻を残すだろう。
公開 | 2004年12月公開 シャンテシネほかにてロードショー |
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制作年/制作国 | 2004年 アメリカ・イギリス合作 |
上映時間 | 2:06 |
配給 | 20世紀フォックス映画 |
監督・製作 | アーウィン・ウィンクラー |
脚本 | ジェイ・コックス |
出演 | ケヴィン・クライン アシュレイ・ジャッド ジョナサン・プライス ケヴィン・マクナリー アラン・コーデュナー |
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