演技派俳優V.S.名子役のガチンコ対決!?
世代を超えた演技合戦が静かに火花を散らす
不気味さ漂うトリッキーな恐怖映画
父は娘を守れるのか? 少女の空想の友だちチャーリーとは? 演技派ロバート・デ・ニーロと11歳の名女優ダコタ・ファニング共演による恐怖映画。良い俳優の顔合わせを撮る幸運な機会を得た監督は、2002年にアメリカで意外なヒットとなった低予算のサイコ・サスペンス『プール』を手がけた気鋭のジョン・ポルソン。思わせぶりな謎が観る者を惑わせる、中級スリラーである。
妻アリソンの自殺により、大きなショックを受けた夫のデビッドと9歳の娘エミリー。心理学者であるデビッドはエミリーの傷ついた心を癒すべく、郊外の一軒家に移り住むことに。しかしエミリーは転居先でも周囲と打ち解けることなく、チャーリーという空想の友だちのことを話すばかり。そのうちに2人の暮らす家では、不穏なことが次々と起こり始める。
ストーリーは“衝撃”“戦慄”というような激しいものではなく、「そうきたか」と、ひとひねりさせた感じ。プチ“シックス・センス”的な展開だ。内容的には意欲満々で見るほどではないかもしれない。しかし、それでもいいのだ。これはデ・ニーロとファニングの共演ぶりを観るための作品なのだから。間違いのない存在感でストーリーを安定させているデ・ニーロはもちろん期待通り。そしてファニングはというと、熟練の彼の対極にありながら、しっかりとバランスをとっているのである。
名子役から少女へと成長中のダコタ・ファニングは11歳。2001年に映画『トム・キャッツ』でスクリーンデビューし、ショーン・ペンと共演した同年公開の『I am Sam アイ・アム・サム』にて女優としては最年少受賞となったシカゴ映画批評家協会賞をはじめ、数々の新人賞をさらった。その後も有名俳優との共演作が続き、女優業を始めて4年とは思えないほど順風満帆にキャリアを積んでいる。それにしても彼女は本当に演技が上手い。『I am Sam アイ・アム・サム』で彼女を初めて観たとき、愛らしさや無邪気さだけでなく、けだるさや母性などの多彩な表情を絶妙のタイミングで見せる、デビューしたての6歳らしからぬ大人顔負けの演技力に強く感じ入ったことを思い出す。本作は恐怖映画なので、彼女の十八番である涙や共感を呼ぶ微妙な感情表現の見せ場はあまりないものの、上手いだけにホラーシーンなどがちゃんと怖い。本作でデ・ニーロから学んだのか、抑制を効かせた演技は不気味さ満点。隈どった目でじぃぃ〜っと見つめる目線もなかなか迫力だったりして。
スリラー初挑戦で新境地を開拓した後、すでに次回作『Dreamer』を撮り終えたというファニング。この作品は感動的な家族ドラマとのことなので、彼女の泣かせる演技を満喫できそうだ。そして現在は、映画化が企画進行中であるルイス・キャロルの名作『不思議の国のアリス』でも主演が予定されているとのこと。これはせっかくなのでファニング主演できっちり成功させて、彼女が少女のうちにシリーズ作『鏡の国のアリス』まで撮ってもらいたい。『ハリー・ポッター』で続編の製作がダニエル・ラドクリフの成長に追いつかない……みたいなことにならないよう祈っている。
公開 | 2005年4月23日公開 スカラ座ほか全国ロードショー |
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制作年/制作国 | 2005年 アメリカ |
上映時間 | 1:42 |
配給 | 20世紀フォックス映画 |
監督 | ジョン・ポルソン |
脚本 | アリ・シュロスバーグ |
出演 | ロバート・デ・ニーロ ダコタ・ファニング ファムケ・ヤンセン |
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