ザ・インタープリター 試写会日記 毎週、熱田美希から映画ファンの皆さんへ熱いメッセージ!傑作でも愚作でも、映画ってやっぱり素敵!!
ザ・インタープリター

世界的に成功した傑作戯曲を巨匠ニコルズが映画化
生々しい会話や成り行きなどが心を揺さぶる
痛みを知る大人のための恋愛ドラマ



 100都市以上で上演された新進劇作家パトリック・マーバーの戯曲を巨匠マイク・ニコルズが映画化。ジュリア・ロバーツ、ジュード・ロウ、ナタリー・ポートマン、クライブ・オーウェンという豪華な顔合わせで製作された大人の恋愛ドラマ。男女のあけすけな会話や矛盾や妥協だらけの状況など、恋愛の表と裏を生々しく見せるビターな作品である。


 ロンドンで暮らすダンは、小説家志望のジャーナリスト。ある日彼はNYから渡英したばかりのストリッパー、アリス(ナタリー・ポートマン)と出会い、恋に落ちる。その1年半後、ダンはフォトグラファーのアンナ(ジュリア・ロバーツ)と惹かれ合うものの、ダンに恋人がいると知ったアンナが身を引く。その半年後、ダンのいたずらが思いがけず、アンナと医師ラリー(クライブ・オーウェン)を引き合わせる。

クローサー
 妙に入り込めるような、図星を突かれて不快なような、複雑な気分になる本作。物語は起承転結やメッセージが明確なわかりやすいドラマではまったくない。ロンドンで出会った4人が4角関係に陥り、修羅場を迎え、それぞれがどのような選択をしていくかを定点観測で眺めているような作品だ。上品なクラシックをBGMに卑猥なチャットをする、別の恋人と通じながらパートナーと暮らす……感動的でも美しくもない灰色の現実。しかし出会いや諍いなど、人と人が本気で対面する瞬間には真理に近い感覚がほとばしる。そんな互いの心を動かしたり傷つけたり、感覚がむきだしになって日常が非日常にスイッチするシーンが、とてもしっかりと描き出されている。
クローサー
 当初はアンナ役にケイト・ブランシェットが決まっていたが妊娠のため降板し、ロバーツにかわったとのこと。どうしようもなく“オンナ”であるアンナ役は、ブランシェットならもう少しピュアに、観客の多くが感情移入できるよう演じられかも、と思った。本作では主演のロバーツとロウより、ポートマンとオーウェンが断然光っている。驚いたのはポートマンの大胆なストリッパー姿。撮影済みのヌードシーンはカットされたとはいえ、腹を据えたポートマンの覚悟と異邦人であるアリス役の緊張感とがいい具合にリンクしたのかもしれない。舞台でダンを演じていたオーウェンは、映画ではラリー役に。巧い俳優は何を演じても様になる。


 原作の戯曲は1997年に英国国立劇場で初演され、イギリス演劇界にて久々の大ヒットを記録したとのこと。数々の演劇賞を受賞し、30ヶ国語に翻訳され、ブロードウェイや東京など世界中で上演されているヒット作だ。映画でも原作者のマーバーが脚本を手がけているため、鮮やかな台詞が印象に残る。そして監督のニコルズは、エンタテインメント界では伝説的な存在。舞台の演出家として 7回のトニー賞に輝き、監督としては1967年の名作『卒業』でアカデミー賞監督賞を、2004年には TVドラマ『エンジェルス・イン・アメリカ』でエミー賞11部門を受賞した名匠。本作の奥深さは、ニコルズ×マーバーの強力タッグが俳優たちから魅力を引き出した結果ともいえるだろう。


 性質や結末などは完全に異なるのだが、アンナの選択を見ていたら不思議と映画『東京タワー』を思い出した。黒木瞳が演じていた詩史の台詞が妙にくっきりと浮かんだのだ。「私は自分の人生を気に入ってるの。幸せかどうかはわからないけど、幸せかどうかは重要じゃない」。


  しみじみと聴かせるダミアン・ライスの「ザ・ブロウワーズ・ドーター」にのせて交錯する4人の思い。傍から見たら理想のカップルでも冴えない現実があり、灰色の日常にもロマンティックな瞬間や信じられるときがある。そして、別れがあるからこそ始まりがある。戯曲とは結末が変えられている本作。この作品にあなたは何を見るのだろう。
『クローサー』 2004年アメリカ映画
データ
2005年5月更新

クローサー

2005年5月21日公開
丸の内プラゼールほか
全国松竹・東急系にてロードショー

■2004年 アメリカ映画
■上映時間1:43
■ソニー・ピクチャーズエンタテインメント配給
■製作・監督/マイク・ニコルズ
■原作・脚本/パトリック・マーバー
■出演/ジュリア・ロバーツ
ジュード・ロウ
ナタリー・ポートマン
クライブ・オーウェン



プロフィール
 
あつた美希 あつた美希
あつた美希
フリーライター、アロマコーディネーター、クレイセラピスト インストラクター/インタビュー記事、映画コメント、カルチャー全般のレビューなどを執筆。1996年から女性誌を中心に活動し、これまでに取材した人数は600人以上。近年は2015〜2018年に『25ans』にてカルチャーページを、2015〜2019年にフレグランスジャーナル社『アロマトピア』にて“シネマ・アロマ”を、2016〜2018年にプレジデント社『プレジデントウーマン』にてカルチャーページ「大人のスキマ時間」を連載。2018年よりハースト婦人画報社の季刊誌『リシェス』の“LIFESTYLE - NEWS”にてカルチャーを連載中。