トラボルタ×サーマンのコンビ再び!
気鋭のグレイ監督がレナード小説の続編を映画化
周囲をクールに出し抜き、最後に笑うのは誰?
1994年の『パルプ・フィクション』で復活を遂げたジョン・トラボルタの主演により、'95年にヒットした『ゲット・ショーティ』の続編。共演に『パルプ〜』以来の名コンビ再びとなるユマ・サーマン、コメディアンにして俳優のセドリック・ジ・エンターテイナーや個性派のハーベイ・カイテル、音楽界からはクリスティーナ・ミリアン、アウトキャストのアンドレ・ベンジャミン、そしてエアロスミスのスティーブン・タイラーと錚々たる顔ぶれが参加。新旧のサウンドに彩られ、ブラックな笑い満載の大人仕様。B級感をモダンに料理した、コメディ系ギャング・ムービーである。
しがない借金取り立て屋から映画プロデューサーとして成功を収めたものの、チリは映画界に辟易していた。そんなとき、インディーズ・レーベルを主宰する旧友トミーから、無名の新人リンダを売り出す話をもちかけられる。リンダのステージを観てビッグなスター性を確信すると、チリは彼女をプロデュースすることを決意。持ち前の度胸とぬかりない計略で、音楽界へと打って出る。
前作から10年。勢いはそれにおよばないものの、小気味よさはなかなか。マイホームパパとギャング系プロデューサーという2つの顔をもつ男、アフリカ系の真似ごとをする白人マネージャー、俳優志望のゲイのボディガード……一癖も二癖もある連中のツボを見抜き、急所や信条にアメとムチを使い分け、最悪の状況を逆転させるチリの手腕は健在。周囲はいつのまにか誘導され、状況はすべて彼の思うがまま。そして自分だけでなく、周辺にも利が行き渡るよう計らうところが粋だ。このスマートさはやはり、エルモア・レナードの小説ならでは。近年のレナード作品は都会的な犯罪小説が中心とのことで、前作『ゲット〜』はもちろん、『ジャッキー・ブラウン』『アウト・オブ・サイト』も彼の原作によるもの。1950年代から数々の小説が映画化され続けている、現役の人気作家のひとりである。
さまざまな利権や有象無象のギャングが横行する、危険に満ちた現代アメリカのミュージックシーン。その表と裏をやや誇張し、おもしろおかしく映し出したのは35歳のF・ゲイリー・グレイ。彼はミュージック・ビデオでグラミーほか16回の受賞を果たし、映画作品は『交渉人』『ミニミニ大作戦』などを手がけた気鋭の監督だ。クライム・ムービーとして作り込みつつ、音楽やミュージシャンそのものを活かす演出は、グレイ監督のセンスの賜物だろう。
サウンドはアース・ウインド&ファイヤーの名曲「ファンタジー」に始まり、'70年代のソウルから最新のヒップホップやR&Bまでさまざまな音楽をコーディネイト。クリスティーナ・ミリアンはショーガールとして歌って踊り、ピアノの弾き語りをし、本人役で出演のスティーブン・タイラーとデュエット、という活躍ぶり。ミリアンの人気は知っていたが、本作で改めてごまかしのない歌の実力を再確認した。
ちなみに舞台はショービズのメッカであるLA。人気ナイトクラブ「ヴァイパー・ルーム」、地元のNBAレイカーズの本拠地、ハリウッド大通りのチャイニーズ・シアターなど、ロスの名所に注目するのも楽しい。
『パルプ〜』の名シーンを彷彿とさせるトラボルタとサーマンのダンスも見物。独自の色気と存在感をもつ2人が、クレイジーなキャラクターたちと立ち回る本作。個人的に好きな俳優のひとりであるトラボルタが、復活して中堅として活躍し続けているのは嬉しい限り。ただ、悪環境のロケをイヤがったり高額の出演料を請求したり、冴えない噂があるのは少し気になる。せっかく返り咲いたのだから天狗になったりせず、感謝の念を大切に末永く一線で活躍してほしい……とスクリーンの彼を眺めながらしみじみと思った。
公開 | 2005年9月公開予定 スバル座ほか全国ロードショー |
---|---|
制作年/制作国 | 2004年 アメリカ |
上映時間 | 2:00 |
配給 | 20世紀FOX映画 |
監督 | F・ゲイリー・グレイ |
原作・製作 | エルモア・レナード |
出演 | ジョン・トラボルタ ユマ・サーマン クリスティーナ・ミリアン ハーべイ・カイテル セドリック・ジ・エンターテイナー アンドレ・ベンジャミン ザ・ロック スティーブン・タイラー |
記載内容は取材もしくは更新時の情報によるものです。商品の価格や取扱い・営業時間の変更等がございます。