チャーリーとチョコレート工場 試写会日記 毎週、熱田美希から映画ファンの皆さんへ熱いメッセージ!傑作でも愚作でも、映画ってやっぱり素敵!!
チャーリーとチョコレート工場

40年のロングセラーを誇る名作を再映画化
バートン監督×J・デップのコンビが放つ
ポップでキッチュな摩訶不思議ワールドへようこそ



 ティム ・バートン監督×ジョニー・デップ、個性派の強力コンビが4度目のタッグを実現。原作は1964年に発表されて以来、世界で1300万部以上の売上を誇るロアルド・ダールのベストセラー『Charlie and the Chocolate Factory(邦題「チョコレート工場の秘密」)』。初版から40年たった今も、イギリスの“子供が好きな本”ランキングで「ハリー・ポッター」シリーズ、『指輪物語』に次いで第3位をマークしている英国では有名な児童文学である。この原作本を愛するバートン監督が、オリジナルの世界をそのまま映像化することにこだわって作り上げた本作。蜜も毒もたっぷり、キッチュな摩訶不思議ワールドのはじまりはじまり――。


 世界一大きなチョコレート工場の経営者ウィリー・ウォンカは、天才的なお菓子の製造・開発者であり、偏屈な変わり者。工場の扉を閉ざして15年間引きこもっていた彼はある日、板チョコに忍ばせた5枚のゴールデン・チケットを引き当てた子供たちを工場に招待する、と発表する。そして貧しいチャーリー少年をはじめ、5人のユニークな子供たちとその保護者たちの招待が決定。ウィリー本人の案内により、秘密のチョコレート工場の見学がスタートする。

チャーリーとチョコレート工場
 “ハリー〜”や『指輪物語』のような壮大なファンタジーではもちろんなく、ごく私的でエキセントリックな空間に起こるマジカルな展開を満喫できる作品。毒々しいほどの原色の洪水、レトロフューチャーな近未来空間など、楽しさと俗っぽさ、アナログとデジタルを臨界点ギリギリにブレンドしたポップなヴィジュアルセンスは、バートン監督ならではだ。 「セットを考えて、作り上げるのって楽しい」と語り、CGに頼りすぎることなく、美術はできる限り実際に作ったというバートン監督。チャーリーの傾いた家や広大なチョコレート工場、お菓子を開発する発明室、そしてさまざまな方角に奔放に動くガラス製エレベーターまで、どれも魅力的な仕上がりだ。なかでも特に素晴らしいのは、極彩色のお菓子の世界。砂糖菓子の船が浮かぶチョコレートの川は、76万リットルもの本物のチョコ素材によって作り上げられたというからすごい。そのほかキャンディの木などもすべて食べられる素材で作られ、キャストが実際に食べても安全であるよう衛生管理もきちんと行われていたのだそう。
チャーリーとチョコレート工場
  本作の見どころは、身長75cmのウンパ・ルンパ族が歌い踊るミュージカル・シーンの数々。皮肉や批判をおもしろおかしく練り込んだ、子供たちを揶揄するさまざまな歌が始まるやいなや、それに合わせて謎の種族が奇妙なダンスを披露。その奇天烈な光景をじーっと眺めていると、ふつふつと笑いがこみあげてくる。


 純粋で神経質、頑固でアーティスティックなアクの強いウィリーを演じたデップのハマり具合は、期待通り。海賊でも紳士でも変人でも、どんな役にも毎回ピタッとハマるのはさすがの表現力だ。バートン監督とは互いの感性や仕事を固く信頼し合っているそうで、のびのびとマニアックに役作りをしている様が感じられる。チャーリー役は『ネバーランド』でもデップと共演した子役フレディー・ハイモア。次世代の有望子役として注目されているハイモアは、本作でもプレーンな演技で共演者や監督から高く評価されている。


 児童書『おばけ桃の冒険』を映画化した1996年のアニメ作品『ジャイアント・ピーチ』に次いで、2度目のダール作品の映画化を果たしたバートン監督。監督同様、長年にわたってダールのファンというデップを迎え、充実のメンバーで映画化された本作。ラストでは家族との絆やファンタジーの真理など、真っ当な道徳と自由な感性の大切さがさらりと描かれる。厳しい現実を楽しく生きていくために必要なこと、子供にも大人にも共通する人生のシンプルなハウツーのようなものが込められているように感じた。


 さて、完成披露試写会ではチョコレートの香りつきの上映、という斬新な演出がなされた本作。アメリカでは上映中の50館でこの放香システムが採用され、話題となっているのだそう。ただ、チョコ好きにとって香りだけというのは少し切なくて、やっぱりチョコが食べたくなる。思わず「食べたい…」と、劇中の美味しそうなチョコレートの川や滝をうっとりと眺めてしまった。


ディズニーランドに皮肉と悲哀を加え、先鋭的に演出したかのようなネオ・ファンタジックな世界。まずは何も考えず、異世界へのトリップをかる〜く楽しんでみてはいかがだろう。
『チャーリーとチョコレート工場』 2005年 アメリカ映画
データ
2005年9月更新

チャーリーとチョコレート工場

2005年9月10日公開
丸の内ピカデリー2ほか、全国松竹・東急系にてロードショー

■2005年 アメリカ映画
■上映時間1:55
■ワーナー・ブラザース映画配給
■監督/ティム・バートン
■原作/ロアルド・ダール
■出演/ジョニー・デップ
フレディー・ハイモア
デイビッド・ケリー
ヘレナ・ボナム=カーター
ノア・テイラー



プロフィール
 
あつた美希 あつた美希
あつた美希
フリーライター、アロマコーディネーター、クレイセラピスト インストラクター/インタビュー記事、映画コメント、カルチャー全般のレビューなどを執筆。1996年から女性誌を中心に活動し、これまでに取材した人数は600人以上。近年は2015〜2018年に『25ans』にてカルチャーページを、2015〜2019年にフレグランスジャーナル社『アロマトピア』にて“シネマ・アロマ”を、2016〜2018年にプレジデント社『プレジデントウーマン』にてカルチャーページ「大人のスキマ時間」を連載。2018年よりハースト婦人画報社の季刊誌『リシェス』の“LIFESTYLE - NEWS”にてカルチャーを連載中。