ティム・バートンのコープスブライド 試写会日記 毎週、熱田美希から映画ファンの皆さんへ熱いメッセージ!傑作でも愚作でも、映画ってやっぱり素敵!!
ティム・バートンのコープスブライド

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バートン・アニメがさらに切なく、魅力的に進化
2人の花嫁の間でひとりの気弱な男が立ち上がる
生と死の世界をめぐるポップなゴシック・ファンタジー



 ティム・バートンの真骨頂再び!『ナイトメアー・ビフォア・クリスマス』から12年、オリジナルのストップモーション・アニメが完成した。声の出演にはジョニー・デップ、ヘレナ・ボナム=カーター、エミリー・ワトソンと、バートン作品の常連を中心に実力派の俳優たちが参加。温かみのあるブラックユーモアと繊細な心理描写という、バートンお得意のストーリーで惹きつける上質な作品だ。ちょっと不気味で不思議と愛らしいキャラクターたちが立ち回る、大人にも楽しいゴシック・ファンタジー・アニメーションである。


 19世紀ヨーロッパのとある村。成金バン・ドート家の息子ビクターと、落ちぶれた貴族エバーグロット家の娘ビクトリアは親同士の決めた許婚。2人は式の前日に初めて会ったものの惹かれ合い、結婚式はスムーズに行われるかのように思えた。が、ビクターは気づかぬうちにコープスブライド(死体の花嫁)に求婚してしまい、死者の世界へと連れ去られてしまう。

ティム・バートンのコープスブライド
 パペット(操り人形)の域を超えたリアルな表情や動き、一風変わった生者と死者の世界観、ビクターをめぐる奇妙な三角関係の行方……1時間17分とは思えないほど、十二分に楽しませてくれる仕上がりだ。ミリ単位のコマ撮りをつなげていく昔ながらの手法のため、1、2秒の映像を作るために12時間を要することもあるというストップモーション・アニメ。本作の成功はバートン監督のセンスもさることながら、現場スタッフの並々ならぬ努力の結晶といえるだろう。
ティム・バートンのコープスブライド
  豊かな表情をつくるために頭部にギアを仕込み、30cmと大きくなったパペットにあわせて通常のストップモーション・アニメの2〜3倍の規模で撮影。パペットに女優さながらの丁寧なライティングを施し、風にふわふわとひらめくウェディングドレスのヴェールを表現することに10ヶ月を費やした、とのこと。ボロボロのドレスからすらりとのぞくコープスブライドの脚が、しっかりセクシーに見えるあたりなどはさすがだ。また、生者の世界は堅苦しく憂鬱なグレートーンで、死者の世界は混沌としてエネルギッシュ、カラフルに描かれているのがユニーク。古きよきビッグバンドジャズ調のナンバーにのせて、パブで死者たちが歌い踊るミュージカルシーンは構図やトリックがたまらなく楽しく、気分をポジティブに盛り上げてくれる。


 『ナイトメアー〜』では原案・製作だったため、ストップモーション・アニメの監督は初となるバートンと、アニメ声優は本作が初挑戦のデップ。「ほぼ無意識に意志の疎通ができる(バートン)」「ティムとの映画作りは自分の家に帰ってきたようで居心地がいい(デップ)」と語っている通り、万全の信頼を互いに寄せている様子がほほえましい。映画にアニメに、彼らは今後もさまざまなアプローチで良質な作品づくりに取り組んでいくことだろう。


 コミカルなホラーに始まり、スリラーを経て、スウィートな人間ドラマに終わる。画面の隅々まで凝った映像と飽きさせない展開でみせる本作。寒さが染みてくるこの時期、手作りならではの温かみのあるこの作品をおすすめしたい。
『ティム・バートンのコープスブライド』 2005年アメリカ映画
データ
2005年9月更新

ティム・バートンのコープスブライド

2005年10月22日公開
丸の内ピカデリー2ほか
全国松竹・東急系にてロードショー

■2005年 アメリカ映画
■上映時間1:17
■ワーナー・ブラザース映画配給
■監督・製作/ティム・バートン
■監督/マイケル・ジョンソン
■脚本/ジョン・オーガスト
キャロライン・トンプソン
パメラ・ペトラー
■原作/ダニー・エルフマン
■出演/ジョニー・デップ
ヘレナ・ボナム=カーター
エミリー・ワトソン
クリストファー・リー



プロフィール
 
あつた美希 あつた美希
あつた美希
フリーライター、アロマコーディネーター、クレイセラピスト インストラクター/インタビュー記事、映画コメント、カルチャー全般のレビューなどを執筆。1996年から女性誌を中心に活動し、これまでに取材した人数は600人以上。近年は2015〜2018年に『25ans』にてカルチャーページを、2015〜2019年にフレグランスジャーナル社『アロマトピア』にて“シネマ・アロマ”を、2016〜2018年にプレジデント社『プレジデントウーマン』にてカルチャーページ「大人のスキマ時間」を連載。2018年よりハースト婦人画報社の季刊誌『リシェス』の“LIFESTYLE - NEWS”にてカルチャーを連載中。