華麗なる恋の舞台で

恋愛を通じて見えてくる本性、成熟していく関係
人間模様の妙や心の機微を丁寧に描いた
大人の女性のための痛快な恋愛ドラマ

  • 2007/01/26
  • イベント
  • シネマ
華麗なる恋の舞台で© 2004 2024846 Ontario Inc.; Being Julia Productions Limited;
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1930年代、「最も執筆料の高い作家」と呼ばれたという人気作家サマセット・モームが、1937年に発表した小説『劇場』を映画化。監督は『太陽の雫』で知られるハンガリーの巨匠イシュトヴァン・サボー、脚本は『戦場のピアニスト』でアカデミー賞脚色賞を受賞したロナルド・ハーウッド。出演はアネット・ベニング、ジェレミー・アイアンズ。人間関係の妙や心の機微を丁寧に描き、ラストには爽快な気分にしてくれる。大人の女性のための不屈の恋愛ドラマである。

華麗なる恋の舞台で

1938年のロンドン。舞台女優として成功を収めているジュリアは、妻よりも女優としての彼女を尊重する有能なマネージャーである夫にも、仕事漬けの単調な日々にも辟易していた。そんな時、彼女のファンという親子ほど年齢の違うアメリカ人青年トムに言い寄られ、ジュリアは恋をする。楽しいときを過ごすも、時間がたつにつれトムは若い女優と付き合うようになり、ジュリアから離れ……。

恋をして、期待して、裏切られ、落ち込み、また立ち上がる。誰でも経験したことのあるこの一連の流れを、とてもウィットに富んだ展開で魅せてくれる作品だ。恋の熱に浮かれながらも女同士で辛口トークをしたり、心から嘆きながらも相手を冷静に観察したり。仕事で成功してはいても、若い世代からの突き上げに不安がよぎる。大人の女性なら「あるある!」と共感できるシーンが満載だ。

華麗なる恋の舞台で

そして登場人物たちの本気ぶりや矛盾ぶりが生々しくて好い。理屈じゃない心情が不思議な説得力とともに描かれているのは、かなりユニークな経歴をもつ原作者モームの人間観察の賜物だろうか。モームは20代で医師の免許をとるも作家となり、劇作家としてもブレイク。第一次世界大戦中には自ら志願して英国情報部(007でおなじみのMI6!)のスパイとなり、ロシアでの諜報活動を経て、戦後は世界中を旅しながら『月と六ペンス』などの良作を発表していった…というから驚きだ。また、目前で一大騒動が起こっているかのような本作の臨場感は、サボー監督と脚本家ハーウッドの力量によるところだろう。今年49歳になるベニングは、どこかくたびれて乾いた雰囲気に始まり、浮き足立って目も肌も生き生きと輝くようになり、最後には地に足をつけてさらにパワーアップするジュリアを好演。男らしくストイックなイメージのアイアンズは、ワーカホリックでセックスレスで身体はマッチョ、という現代的なイメージの男性を少々調子よく演じていて面白い。

華麗なる恋の舞台で

2004年に製作され、ベニングが2005年のアカデミー主演女優賞にノミネートされた本作。ようやくの日本公開、と侮ることなかれ。スカッ! と胸がすく、痛快で普遍的なドラマである。

作品データ

華麗なる恋の舞台で
公開 2007年2月10日公開
Bunkamuraル・シネマほかにてロードショー
制作年/制作国 2004年 カナダ・アメリカ・ハンガリー・イギリス
上映時間 1:44
配給 アルシネテラン
監督 イシュトヴァン・サボー
脚色 ロナルド・ハーウッド
原作 サマセット・モーム
出演 アネット・ベニング
ジェレミー・アイアンズ
マイケル・ガンボン
ショーン・エヴァンス
ジュリエット・スティーヴンソン
ブルース・グリーンウッド
:あつた美希
ライター:あつた美希/Miki Atsuta フリーライター、アロマコーディネーター、クレイセラピスト インストラクター/インタビュー記事、映画コメント、カルチャー全般のレビューなどを執筆。1996年から女性誌を中心に活動し、これまでに取材した人数は600人以上。近年は2015〜2018年に『25ans』にてカルチャーページを、2015〜2019年にフレグランスジャーナル社『アロマトピア』にて“シネマ・アロマ”を、2016〜2018年にプレジデント社『プレジデントウーマン』にてカルチャーページ「大人のスキマ時間」を連載。2018年よりハースト婦人画報社の季刊誌『リシェス』の“LIFESTYLE - NEWS”にてカルチャーを連載中。
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