さくらん

女性クリエイターを中心に各分野の才能が集結
江戸の吉原、自分らしく生きる花魁を描く
鮮やかなヴィジュアルで魅せる青春時代劇

  • 2007/02/09
  • イベント
  • シネマ
さくらん© 2007 蜷川組「さくらん」フィルム・コミッティ

フォトグラファー蜷川実花が初監督、新進の若手女性監督タナダユキが初の脚本参加、ミュージシャン椎名林檎が初の映画音楽監督、安野モヨコの原作コミックが初の映画化。初づくしの女性クリエイターたちを中心にヴィヴィッドな作品が完成した。主演にモデル・女優・シンガーとして活躍する土屋アンナ、共演に菅野美穂、木村佳乃、椎名桔平、成宮寛貴、安藤政信。江戸時代の吉原で、自分らしく生きようとする花魁(おいらん)の物語。鮮やかでどこかノスタルジック、映像美で酔わせるオリジナルの青春ストーリーである。

遊郭の高級店・玉菊屋に8歳で買われた少女はきよ葉と名付けられ、トップの花魁・粧ひのもとで育つ。気の強いきよ葉は遊女の生活に最初は反発するも、成長するにつれ、持ち前の器量や気風のよさが人気を呼び、遂には18歳で遊女の最高峰である花魁に。日暮と名を改めた彼女のもと、身分も度量も申し分ない立派な武士・倉之助が通うようになる。

さくらん

ゼブラ柄をまとった艶やかな花魁が練り歩き、遊郭の高い門の上、空中で金魚がひらひらと泳ぐ。鮮やかな発色、思いがけないデザインによるショック。観た瞬間の美しさや楽しさが半端なく追求されているため、時代考証など野暮な感覚がひっかかることもなく、現代劇風のヴィジュアル系時代劇として堪能できる作品だ。監督はそもそも衣裳を決める際、「時代劇とはいっても現代の私たちが創るんだから現代劇だと思うの。思いっきり派手にやっちゃって良い」と語ったそう。本作には一流のエキスパートたちが集結。着物、舞台美術、花…そしてそれらを確かに捉える、フォトグラファーとして世界的に高く評価されている蜷川実花監督独特の鮮烈なヴィジュアル。作品全体にあらゆる才能が満ち満ちて、それら全部が余すことなく見事に生かされているところに、蜷川氏の監督としてのセンスを感じさせる。

さくらん

登場する男たち女たち、すべてが色っぽい。男を知り、恋して、傷つき、愛され、自らの人生を選びとるきよ葉/日暮を演じた土屋アンナ、花魁として王道をゆく粧ひに菅野美穂、1人の男を愛しすぎて苦しむ花魁・高尾に木村佳乃。自分らしさを貫く女たちの生き様が三様に伝わってくる。3人とも濃厚な濡れ場に体当たりで挑み、情念と業の深さがよく表されていた。きよ葉の間夫(情人)に成宮寛貴、理解も愛もある武士・倉之助に椎名桔平、幼い頃からきよ葉を淡々と見守る店番の清次に安藤政信。それぞれが役柄にハマっていて、妙に説得力がある。

蜷川実花監督の次回作にも期待が高まる。もしかしたら鮮やかな“赤”が定番のキーカラーになるのだろうか。北野武監督の“キタノブルー”のように。……実は観る前はそこまで期待していなかったため、正直、観てびっくりした。非日常の映像に浸り、恋と青春に共感する。気分スッキリの爽快な作品である。

作品データ

さくらん
公開 2007年2月24日公開
シネクイントほか全国ロードショー
制作年/制作国 2007年 日本
上映時間 1:51
配給 アスミック・エース
監督 蜷川実花
脚本 タナダユキ
音楽 椎名林檎
原作 安野モヨコ
出演 土屋アンナ
菅野美穂
木村佳乃
椎名桔平
成宮寛貴
安藤政信
石橋蓮司
夏木マリ
市川左團次
永瀬正敏
:あつた美希
ライター:あつた美希/Miki Atsuta フリーライター、アロマコーディネーター、クレイセラピスト インストラクター/インタビュー記事、映画コメント、カルチャー全般のレビューなどを執筆。1996年から女性誌を中心に活動し、これまでに取材した人数は600人以上。近年は2015〜2018年に『25ans』にてカルチャーページを、2015〜2019年にフレグランスジャーナル社『アロマトピア』にて“シネマ・アロマ”を、2016〜2018年にプレジデント社『プレジデントウーマン』にてカルチャーページ「大人のスキマ時間」を連載。2018年よりハースト婦人画報社の季刊誌『リシェス』の“LIFESTYLE - NEWS”にてカルチャーを連載中。
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