オール・ザ・キングスメン 試写会日記 毎週、熱田美希から映画ファンの皆さんへ熱いメッセージ!傑作でも愚作でも、映画ってやっぱり素敵!!
オール・ザ・キングスメン

1946年のピュリッツアー賞受賞作を映画化
堕ちてゆく政治家をシビアに映し出す
フィルム・ノワール風のダークな人間ドラマ



 ショーン・ペン、ジュード・ロウ、アンソニー・ホプキンス、ケイト・ウィンスレットら名優たちが共演。『シンドラーのリスト』でアカデミー脚本賞を獲得したスティーヴン・ゼイリアンが監督・脚本・製作、アメリカ一有名という政治コンサルタント、ジェームズ・ガーヴィルの製作総指揮。アメリカ南部を舞台に、下級役人から知事へとのし上がった男の盛衰をドラマティックに描く。原作は1946年にピュリッツアー賞を受賞したロバート・ペン・ウォーレンの同名小説。混沌に囚われて心を見失っていく人々を映す、ダークなヒューマンドラマである。


 善良な下級役人だったウィリーは汚職政治を追及して辞職に追い込まれるが、その後、バックアップを受けて州知事選に立候補する。後ろ盾がウィリーに立候補させた本意は、対立候補の票を割るためであることを上流階級出身の新聞記者ジャックの助言で知り、ウィリーは失意に打ちのめされるも、ジャックの進言に従って自らの言葉で演説するうちに民衆の心を掴み、遂に州知事に当選。大きな権力を手にしたウィリーは、時がたつにつれてスキャンダルにまみれていく。
オール・ザ・キングスメン
 1920〜30年代に実在したルイジアナ州知事ヒューイ・P・ロングやその他の煽動政治家をモデルに執筆されたという原作小説。本作ではノスタルジックになりすぎないように時代設定を1930年代から1950年代に変更し、現代に通じる普遍的な物語として描かれている。理想と腐敗、信頼と裏切り、富裕と貧困、愛と憎しみ…相反する感情や状況の混沌が大きくうねり、人々を押し流していく深刻な趣はフィルム・ノワールを思わせる。


 理想を胸に立ち上がり、権力を得て腐敗していくウィリーを演じたペンは、共演者やスタッフから絶賛。善と悪、紙一重の二面性をもつ人物の危うさを鋭利に演じている。ウィリーの側近として支えつつ疑心と苦悩に苛まれるジャック役を演じたロウは、自身が敬愛するペンと対等に渡り合っている。人情味に満ちた正義の人である判事役のホプキンスは3シーンのみの登場だが、大きな存在感で色濃い印象を焼き付ける。
オール・ザ・キングスメン
 2008年のアメリカ大統領選挙を前に候補者たちの選挙活動が白熱し、支持率の高低が日本でも日々報道されているこのごろ。本作の宣伝で2006年のトロント映画祭を訪れたペンは、「ブッシュはベルゼブブ(魔王)」と発言するなどブッシュ政権を痛烈に批判。ペンが演じた民衆に熱く支持される若き日のウィリーをみて、タイプはまったく異なるが、ヒスパニック系などから強力な支持を受けている歴代3人目のアフリカ系上院議員バラック・オバマを思い出した。2007年2月に正式に立候補したばかりの民主党のオバマは、どこまで善戦できるのだろう。期待の若手政治家が腐敗せずに健全な思想を政治に発展させていくことができたら……などと今の政治を意識させることも、本作の狙いのひとつなのかもしれない。
『オール・ザ・キングスメン』2006年 アメリカ映画
データ
2007年4月更新

オール・ザ・キングスメン
2007年4月7日公開
日比谷みゆき座ほか
全国ロードショー

■2006年 アメリカ映画
■上映時2:08
■ソニー・ピクチャーズエンタテインメント配給
■監督・脚本・製作/スティーヴン・ゼイリアン
■原作/ロバート・ペン・ウォーレン
■出演/ショーン・ペン
ジュード・ロウ
ケイト・ウィンスレット
ジェームズ・ガンドルフィーニ
マーク・ラファロ
アンソニー・ホプキンス



プロフィール
 
あつた美希 あつた美希
CSホロス株式会社代表取締役。フリーライター、アロマコーディネーター、クレイセラピスト インストラクター/インタビュー記事、映画コメント、カルチャー全般のレビューなどを執筆。これまでに取材した人数は600人以上、2015〜2018年に『25ans』にてカルチャーページを、2015〜2019年にフレグランスジャーナル社『アロマトピア』でコラム“シネマ・アロマ”を担当。2018年よりハースト婦人画報社の季刊誌『リシェス』の“LIFESTYLE - NEWS”にてカルチャーを連載中。
あつた美希