バベル 試写会日記 毎週、熱田美希から映画ファンの皆さんへ熱いメッセージ!傑作でも愚作でも、映画ってやっぱり素敵!!
バベル

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人種、民族、国、言葉…神が分けた世界の
ひずみや痛み、混沌の先にあるものとは?
愛や信頼のときを伝えるヒューマン・ドラマ



 混沌とした世界で行き違い、赦し合う。アメリカ、メキシコ、モロッコ、日本。一発の銃弾でつながっていく人々のエピソードを紡ぐ物語。菊地凛子のアカデミー賞助演女優賞ノミネートで、日本でも公開前から話題となっている作品である。監督・製作・原案はメキシコの鬼才アレハンドロ・ゴンザレス・イニャリトゥ、出演はブラッド・ピット、ケイト・ブランシェット、ガエル・ガルシア・ベルナル、役所広司、菊地凛子、二階堂智。国や民族による常識の相違、分かり合っているはずの家族のこと。現代の抱える痛みと、人々の歩み寄りを描くヒューマン・ドラマである。


 アメリカ人夫妻(ブランシェットとピット)が観光バスでモロッコを旅行中、何者かに妻が肩を銃で撃たれる。まともな治療ができない辺境で、妻は失血により衰弱。夫は大使館に懇願するが、政治的な問題で救助のメドがたたない。銃弾からライフルの持ち主は日本人男性ヤスジロー(役所)と判明。東京に暮らすヤスジローは聴覚障害の娘チエコ(菊地)との心の隔たりに悩み、チエコは誰かに求められることで自分の存在を確かめたがっていた。一方、アメリカ人夫妻の幼い兄妹を預かっていたスペイン人の乳母は息子の結婚式に出席するため、甥(ペルナル)の運転で兄妹を連れてメキシコへと出発する。
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 池に投げた小石で大きく広がる波紋のように、一発の銃弾が命の重さから人権や政治、人々のコミュニケーションなど現代の問題を貫いていく。脚本・原案はイニャリトゥ監督の『アモーレス・ペロス』(1999)、『21グラム』(2003)で脚本、共同プロデューサーを務め、『メルキアデス・エストラーダの3度の埋葬』で2005年のカンヌ国際映画祭脚本賞を獲得したメキシコ出身のギジェルモ・アリアガ。本作でもその手腕を揮っている。


 1年以上、3大陸に渡って撮影した「破格のプロジェクト」といわれる本作では、製作中にさまざまな困難があったとのこと。撮影中、モロッコの村ではアラブ語、ベルベル語、フランス語、英語、イタリア語、スペイン語が飛び交い、メキシコの砂漠ではスタッフ5人が入院。東京では取締りの厳しい警察の目を逃れ、ゲリラ的に撮影していったとのこと。物語と同様に“コミュニケーションの難しさ”という問題を抱えて撮影を進めるうちに、「本当の境界線は言葉ではなく、私たち自身の中にあると気付いた」とイニャリトゥ監督は語る。「人にとって大きな悲劇は、愛し愛される能力に欠けていること。愛こそが、すべての人間の生と死に意味を与えるものなのに」。
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 2006年の第59回カンヌ国際映画祭にて、最優秀監督賞を受賞した本作。監督曰く、「一番よかったのは、人を隔てる壁についての映画を撮り始めたのに、人と人を結びつけるものについての映画に変わったこと。つまり、愛と痛みについての映画だ」。ラストには言葉にならない心を伝えるコミュニケーション、響き合う「愛」の瞬間が私たちの胸をそっと打つ。
『バベル』2006年 メキシコ合作
データ
2007年4月更新

バベル
2007年4月28日公開
スカラ座ほか
全国東宝洋画系にてロードショー

■2006年 メキシコ合作
■上映時2:23
■ギャガ・コミュニケーションズ配給
■監督・製作・原案/アレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥ
■脚本・原案/ギジェルモ・アリアガ
■出演/ブラッド・ピット
ケイト・ブランシェット
ガエル・ガルシア・ベルナル
アドリアナ・バレッザ
役所広司
菊地凛子
二階堂智



プロフィール
 
あつた美希 あつた美希
CSホロス株式会社代表取締役。フリーライター、アロマコーディネーター、クレイセラピスト インストラクター/インタビュー記事、映画コメント、カルチャー全般のレビューなどを執筆。これまでに取材した人数は600人以上、2015〜2018年に『25ans』にてカルチャーページを、2015〜2019年にフレグランスジャーナル社『アロマトピア』でコラム“シネマ・アロマ”を担当。2018年よりハースト婦人画報社の季刊誌『リシェス』の“LIFESTYLE - NEWS”にてカルチャーを連載中。
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