エリザベス:ゴールデン・エイジ

強い信念で近世イギリスを黄金時代へと導く
エリザベス一世が辿った険しい道のり。
恋や人情による葛藤、無敵艦隊との対決を描く

  • 2008/02/08
  • イベント
  • シネマ
エリザベス:ゴールデン・エイジ

9年を経て、ケイト・ブランシェットの“エリザベス”がスクリーンに再登場。共演に演技派のイギリス人俳優クライヴ・オーウェン、新鋭のアビー・コーニッシュ、ベテランのジェフリー・ラッシュ。監督は前作の終了直後から構想を練っていたというインド出身(イギリス領インドで現パキスタン)のシェカール・カプール。陰謀渦巻くイギリスの宮廷を舞台に孤高の女王の生き様を描く、重厚な物語である。

1585年。イングランド女王となったエリザベス1世は、国内外でくすぶる陰謀に常にさらされていた。プロテスタントに反するカトリック信奉者、亡き姉の元夫であるスペイン国王の脅威、スコットランドから逃亡してイングランドの王位継承権を主張するメアリー女王。そうした圧力を持ち前の英知と鋭い判断力で制しながら国を治めていくなか、エリザベスの前に新世界をめぐる冒険から帰還した航海士ウォルター・ローリーが現れる。

ケイト・ブランシェット

暗殺の標的になり、国家が脅かされかけても女王として英断を下し続け、黄金時代を迎えるまでの険しい道のり。切実な不安とともにありながらも毅然とし、女性としての平凡な幸せを長く律してきたはずのエリザベスが、自由な男ローリーと惹かれ合い、心をゆさぶられる姿はせつない。

エリザベスを演じたのは前作で高い評価を得たブランシェット。内面に葛藤を抱えながらも強い信念に生きる女王を繊細に演じている。オーウェンは野性味あるローリーを、コーニッシュは女王とローリーの間で揺れる侍女ベス役を、ラッシュは前作に続いて女王の忠臣ウォルシンガムを好演。演技派を中心に若手の新鮮味が加わり、はなやかな共演となっている。

ケイト・ブランシェット

撮影はイギリスの観光名所の数々で敢行。典型的なビサンチン様式であるロンドンのウェストミンスター大聖堂、エリザベスが実際に幼少期を過ごしたというハートフォードシャー州の館、ハンプシャー州のウィンチェスター大聖堂をはじめ、さまざまな歴史的建造物で撮影されたとのこと。スクリーン全体から、本物だからこその確かな趣が感じられる。

衣裳デザインを担当したのは、3度のアカデミー賞ノミネートを誇るアレクサンドラ・バーン。さまざまな資料をもとに、ドレス2000着、靴300足を所有していたともいわれる着道楽のエリザベス一世のファッションを構築。刺繍やレースをふんだんにあしらい、上質なファブリックを用いて贅を尽くし、豪奢で威厳のあるスタイルを作り上げている。

ケイト・ブランシェット

恋も家庭も友人も親類もすべてを投げうち、女王という全能の職業に身を捧げたストイックな偉人の物語。全世界的にファミリー志向が高まっている今、このテーマでくるとはなかなか挑戦的だ。多くの共感が得られるかどうかは微妙だが、最近の風潮に迎合することより、史実に基づいた物語に真理を見出したいと考えたカプール監督の度胸に一票。しっかりと作りこんだ衣裳や美術セット、歴史的建築物などの美しいビジュアルにもう一票。16世紀のイギリスのクラシックな叙事詩に浸りたい方におすすめの作品である。

作品データ

エリザベス:ゴールデン・エイジ
公開 2008年2月16日公開
日比谷スカラ座ほかにて全国ロードショー
制作年/制作国 2007年 イギリス
上映時間 1:54
配給 東宝東和
監督 シェカール・カプール
脚本 ウィリアム・ニコルソン
マイケル・ハースト
衣装デザイン アレクサンドラ・バーン
出演 ケイト・ブランシェット
ジェフリー・ラッシュ
クライヴ・オーウェン
アビー・コーニッシュ
サマンサ・モートン
:あつた美希
ライター:あつた美希/Miki Atsuta フリーライター、アロマコーディネーター、クレイセラピスト インストラクター/インタビュー記事、映画コメント、カルチャー全般のレビューなどを執筆。1996年から女性誌を中心に活動し、これまでに取材した人数は600人以上。近年は2015〜2018年に『25ans』にてカルチャーページを、2015〜2019年にフレグランスジャーナル社『アロマトピア』にて“シネマ・アロマ”を、2016〜2018年にプレジデント社『プレジデントウーマン』にてカルチャーページ「大人のスキマ時間」を連載。2018年よりハースト婦人画報社の季刊誌『リシェス』の“LIFESTYLE - NEWS”にてカルチャーを連載中。
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