イングロリアス・バスターズ

タランティーノ×ブラッド・ピットが初タッグ!
古典映画のような仇討ちに、冗談のような残虐さ。
“ナチス・キラー”が大暴れする痛快な一大活劇

  • 2009/11/20
  • イベント
  • シネマ
イングロリアス・バスターズ© 2009 Universal Studios. ALL RIGHTS RESERVED.

『キル・ビル』『パルプ・フィクション』などこれまでのクエンティン・タランティーノ監督作品の記録を塗り替え、世界各国で過去最大のヒットとなっている話題作が遂に日本上陸。出演は初タランティーノ作品のブラッド・ピット、短編映画の監督も手がけるフランス人女優メラニー・ロラン、『トロイ』でもブラピと競演したドイツ人女優ダイアン・クルーガー、本作で’09年の第62回カンヌ国際映画祭にて最優秀男優賞を獲得したオーストリア人俳優のクリストフ・ヴァルツ、ホラー映画『ホステル』で大ヒットした気鋭の監督イーライ・ロス、脚本や監督、プロデュースも手がけるドイツ人俳優ティル・シュヴァイガーなどなど、国際色も個性も豊かなメンバーが集結。脚本を繰り返し書き直し、完成まで10年かけて練り上げて、“自己最高”というセリフが劇中に登場するほど監督自身もベストと自負している作品。彼らしい極端なバイオレンスにして様式美あふれる復讐劇、そしてブラック・ユーモアたっぷりで絶妙なテンポの群像劇。タランティーノ作品の集大成がいざここに見参!

第二次世界大戦下、ナチスに占領されている’44年のフランスでは、ユダヤ系アメリカ人のアドル将軍を中心に組織された連合軍の極秘部隊“イングロリアス・バスターズ(名誉なき野郎ども)”が暗躍し、ナチスの軍人たちを容赦なく殺戮。ヒトラーとナチス全軍の撲滅を目指す彼らは、ナチのプロパガンダ映画のプレミア上映にヒトラーを筆頭にナチ関係者が集結する夜、映画館の爆破を画策する。映画館の若き女性オーナーのショシャナもまた、家族を虐殺された復讐を果たすべくナチスへの反逆の機を虎視眈々と狙っていた。一方、ショシャナの仇であるナチのランダ大佐は、抜け目なく不穏分子の動きに迫っていた。

ブラッド・ピット

バスターズ、ショシャナ、ナチスらが繰り広げる、殺るか殺られるかの激しいせめぎ合い、ギリギリの駆け引きや残虐なバイオレンスがたたみかけるようにこれでもかと展開。脚本を書き直す際に監督は「ショシャナを非情なワルからリアルな人間に塗りかえていった」そうで、いつものアメコミ的な男性ウケするバイオレンスというだけでなく、凄惨な過去に決着をつけようと一徹に向かっていく女のドラマという面もあり、いつものタランティーノ作品よりも女性が入りやすい仕上がりだ。当然ながら本作は本当にあった話ではなく、実際の歴史背景や人物像にフィクションを融合した寓話とのこと。

ギデオン・ブルクハルト、ブラッド・ピット

キャストのアンサンブルは強烈。アルド役の俳優として、「一番に浮かんだのはブラッド・ピットだったけど、彼は地球最大の映画スターだから断られたらどうしようかと思ったよ」とタランティーノに言わしめたビットは、脚本を読んで出演を即決したそうで、「このシナリオの存在は8年前からハリウッドで神話化していたんだ。その話が僕に振られるとは思ってもみなかったよ」と嬉しそうにコメント。おっさん顔でファニーな声に作りこんだアルド=ピットはかなりイケていて、タランティーノ×ピットの意外な相性の良さを感じさせる。なんちゃって二重スパイの女優ブリジット役はクルーガーが、仇討ちを誓うショシャナ役はロランが好演し、知的で冷酷な“ユダヤ・ハンター”ランダ大佐役はヴァルツが怪演。冒頭のシーンから、真綿で首を絞め上げていくかのような緻密な陰険さがたまらない。ユニークなのはバスターズ10人のうち、自身の製作会社プランBの活躍でも知られるブラピを含む8人が脚本家や監督、ミュージシャンなどの活動をしているクリエイターであること。常に面白いプランを一緒にできる仲間を探していそうなタランティーノの親心(?)かもしれない。劇中劇のナチのプロパガンダ映画『国民の誇り』はユダヤ人であるイーライ・ロスが実際に監督して撮影した約6分の作品であるなど、トリビアな裏ネタが満載だ。俳優、脚本家、コメディアンでありバスターズのひとりを演じたB・J・ノヴァックはとても巧いコメントをしている。「この作品は、“映画が世界を救うかもしれない”というテーマを描いている。ロマンティックな着想だし、抜き身のようによく切れる映画だ」。

メラニー・ロラン

CM映像の「Nein, nein, nein!(ないないない)」「Yes,yes,yes!(ありありあり)」というヒトラーのドイツ語の雄たけびと、アルド将軍が不敵に吼える対比だけでいきなりググッと引きつける本作。「君ならナチ殺しのプロになれる」というスカウトのシーンでは、観客に「え? 自分ですか?」と錯覚を感じさせるかのようなカメラアングルも面白い。「こんな奴らがいたら痛快だな」と思わせる“ナチ殺し”が大暴れして、クライマックスで高笑いが響き渡るこの物語。まさに最後に笑うのは誰なのか !?  映画そのものが正義の大鉈を振るう、ある意味ロマンな一大活劇である。

作品データ

イングロリアス・バスターズ
公開 2009年11月20日公開
TOHOシネマズ 日劇ほかにて全国ロードショー
制作年/制作国 2009年 アメリカ
上映時間 2:32
配給 東宝東和
監督・脚本 クエンティン・タランティーノ
出演 ブラッド・ピット
メラニー・ロラン
クリストフ・ヴァルツ
イーライ・ロス
ティル・シュヴァイガー
ダイアン・クルーガー
ダニエル・ブリュール
ジュリー・ドレフュス
マイク・マイヤーズ
サミュエル・L・ジャクソン(ナレーター出演)
:あつた美希
ライター:あつた美希/Miki Atsuta フリーライター、アロマコーディネーター、クレイセラピスト インストラクター/インタビュー記事、映画コメント、カルチャー全般のレビューなどを執筆。1996年から女性誌を中心に活動し、これまでに取材した人数は600人以上。近年は2015〜2018年に『25ans』にてカルチャーページを、2015〜2019年にフレグランスジャーナル社『アロマトピア』にて“シネマ・アロマ”を、2016〜2018年にプレジデント社『プレジデントウーマン』にてカルチャーページ「大人のスキマ時間」を連載。2018年よりハースト婦人画報社の季刊誌『リシェス』の“LIFESTYLE - NEWS”にてカルチャーを連載中。
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